クローバー

失踪

想い出

馴れ初め

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すらっとした足。肩までの黒い髪。くりっとした大きな目。しかし、その目はその人の存在感を感じさせ、どこまでも見透かせるよう。この人の中には、強く芯のある何かがある、と一彦は思った。
30代半ばの女の人に手を引かれ、一彦の前に立つ少女。この少女の名前は大橋 鈴というのだと、女の人が教えてくれた。
「鈴は一彦くんと同じ6歳なのよ。同じ小学校に通うから、よろしくね。」と嬉しさを隠しきれず、といった表情で女の人が言った。
どうやら、この女の人は大橋 鈴の母親らしい。
母親にしては随分活気があるな、と思った。
最後に、母親は一彦の方を見て満面の笑みを浮かべながらニコッと笑い、鈴と一緒に道路を一つ渡った先にある、彼女らの家に入っていった。
正直、風変わりな親子だと、一彦は思った。
母親は、新しく引っ越してきた土地に娘が早く慣れるように必死、という感じだったが、鈴はそんなことは微塵にも考えていないようだった。
いや、もしかすると考えていたのかもしれないが、少なくとも一彦には、そのような感じはしなかった。
鈴は、ずっと真顔で一彦の顔を見つめていた。
あの、自分の全てを見透すように挑戦的な目で。
しかし、そこには大橋 鈴という人間をひきたてているものがある。
一彦は、道路を渡った先の家を見ながら、そんなことを考えていた。