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02-侵略戦争
膠着状態
しおりを挟む夢見心地。
入眠してるんだけど、目も瞑って視界は夢の中なんだけど、意識はあるときってない?
しゅんの低反発の(笑)膝枕の上、力尽きて全力で甘えていたら、なんだか頭上にそっと温もりがかかる。
優しい手つき。こぶ?ちょっと硬い。手の甲かな?これは。きっと。きっときっと撫でてくれてる。
ふふふふ!
駿に撫でられんの大好き!今最っ高に幸せだぁ♡
なでなでされたのは紛れもなく駿がはじめてで。
だって俺、186cmぐらいあるんだよ。誰が撫でんの。背が高い女の子ほど頭ポンポンとか弱いとか聞くじゃん?あれボクもでした。まんまと、恥ずかち。いやほんとに、内心恥ずかしいんだよこれでもね…。
でもさ、駿ってばそういうとこある。俺の無意識のうちのコンプレックス刺激してくるとこ。
微睡みの真っ只中。ふわふわした意識の中で、やんわりとした記憶の片鱗が浮かび上がる。
自分の半生を振り返るならば、その自分のどうしようもない性分を形成したのは間違いなく母だと思う。
母は厳しい人で、母の教えをしっかりと刻み込まれた俺はどうしても女の人に頭が上がらない身体になってしまったらしい。母は男という生物に対してひどく厳しかった。男たるもの、女を守るもの。女の子は喋よ花よ優しく扱いなさい。男ごときが、女の子を泣かせるのであったらうちの子ではない。出てお行きなさい。何たる騎士道。域を超えたレディファースト。ここまでの刷り込みが第1フェーズ。
物心ついた時からこんな調子だったところに、ついに妹が生まれた。ここからはじまる第2フェーズ開始。7つ下の妹は、それまた可愛かったし、両親にも、誰より母に愛情深く可愛がられ、まさに喋で花のお姫さまよと愛でられてすくすく成長した。幼少期からデ●ズニープリンセスで英才教育されていた妹は、言葉が話せるようになってまず最初に、俺のことを指さしておーじしゃまと言った。
いいえ、妹よ、お兄ちゃんです。王子様ではなく、お兄ちゃんです。
8歳のボクはそこそこ喜んだが、今なら分かる、ここから更に母の教えが厳しくなり、茨城の道に放り込まれた瞬間だったことが。
そうそう、妹の1番好きな作品は、糸車で眠りについてしまったお姫様の呪いを王子様が解きにゆく話だし、母は風貌がアンジェリーナ・ジョリーに似ている。…ひそかに俺の、勇敢なフ●リップ王子化計画が企てられてたのかもしれないねーなんて、物語っぽく仕立てあげてみる。
小学生ながら、女の子のエスコートの仕方、女の子への態度、触り方、あとなにより口調とか言葉遣いでよく叱られた。一人称「僕」の強制期間のえらくなっがいこと長いこと。
男たるもの、から長男たるもの、お兄ちゃんたるものまで付け加えられてしまって、結構知らぬ間に雁字搦めだったらしい。これが普通だと思って育てられてしまったので、女の子に強く出られないらしい。
よく同性からは女に弱みでも握られてんのか?奴隷かよキモイって言われるし、異性からは、お姫様扱いしてくれて気分いい!みんなの王子♡1回は通るわがままロード♡とか言われたりした。
女の子との交際経験の中で、また王子たるものが付け足されてたのかもしれない。もしや第3フェーズ始まってた?笑
とはいえ、この自分のコンプレックスに気づいたのは、ほんとここ最近になってからだね。実家を出てようやく気づくこともあるんだなぁなんて。
あ。今はそこそこ実家とは良好ですので安心してくださいな。距離があるくらいがちょうど良いもんなんだね。妹は兄と離れて暮らすことに不満たらたらしく、よく電話が掛かってくるんだけどね。かわいいけど、そろそろお兄ちゃんは王子様ではないと気づいてほしいなぁって21歳成人男性としては思ってます。笑
そんな人に共感してもらえないコンプレックスを抱える俺に、駿の存在は革命だった。はちゃめちゃに。俺の中のフィリップもナポレオンだって降参してるよほんと。
駿といると、自分からなにかと甘えちゃう。甘えるっていうか、素直な欲求が体現して出てきちゃうというか。女の子から撓垂れ掛かられることあっても、自分の方から抱き寄ろうと身体が傾くことなんてなかった。
男の子だからかな?真綿を抱えるみたいに細心の注意に気ぃ取られる女の子と違って、思いっきり体重かけて力いっぱいぎゅうぎゅうしちゃう。容赦なく首元に頭グリグリしてぐわんぐわんに揺らして甘えちゃう。線細いクセして体幹強いしゅんちゃんえぐい。
でもね、駿はホントにカッコイイのが、それしてダルがられるんじゃなくて、。俺のことなでなでして、あーもう依澄サン仕方ねェなァって笑うんだよ。
衝撃。ずっきゅーーーーん♡♡
これまで生きてきて、そんな風に受け止めてくれた人いない。年下の男の子がだよ?自分より体格も大きい、それも男相手に、ヨシヨシして、ぽんぽんって。
はぁ~~?!男前すぎない?まじで。そんな美人顔歪ませて仕方ないなァとか言わないでメロっちゃうから!!!したら今度はこーらッ。って優しい声で諌めてくるのもダメだって!?ずるいほんとーに沼。そりゃ惚れちゃうって。
駿の前でなら、男らしく、お兄ちゃんらしく、王子らしく、どれである必要もないんだなって、そのまんまの俺でいられる気がする。求められる理想像に応えなくていいことが、どれだけ嬉しいか。
君には全く伝わっていないんだろうなって思うけど、このまんま一切知られずにいたいとも思うよ。知らず知らずで受け入れてくれる君に甘えていたいから。
そんな君がとてつもなく好きだから。
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