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〜前世編〜
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しおりを挟むいつの間に眠ってしまっていたのか、目が覚めると朝になっていた。
「学校…起きなきゃ…」
今日も学校がある。いつも起きる時間より少し早かったが、殴られた痣や縛られた跡などを確認してしっかりと見えない様に隠さなければいけないと思い、起きる事にした。
昨日は沢山泣いていたので瞼が腫れぼったく重い。鏡を見ようと起き上がったが、眩暈がしてベッドを落ちてしまった。
(頭いたい…さむいし、目がまわる。)
やたらと寒さを感じ、厚手のパーカーを羽織って洗面所へと向かった。
「うわっ」
鏡に映った自分を見てギョッとした。昨日は赤く腫れていただけの頬が、赤紫色に変色していたからだ。恐る恐る噛み跡と手首も確認すると、少し薄っすらとはしてきていたが、やはり赤紫色になっていた。
その時ふと、母親がつくっている最中なのだろう朝食の匂いがした。
「っ、おぇっっ」
込み上げる吐き気が我慢できず、洗面台の流しへと吐いてしまった。幸い昨日のお昼から食べていないので、出てくるのは胃液だけだった。
(気持ち悪い…、さむいよ…)
口の中をゆすぎ、ガタガタ震える体を抱きしめながら部屋へと戻った。眩暈が酷くてもう立っていられず、布団に再び潜り込む。布団に包まっている筈なのに、悪寒が収まらない。しばらく布団に包まって耐えていると、母親の声が部屋の外から聞こえてきた。
「朝よ!いつまで寝てるの?朝食出来てるわよ、早く起きなさい!」
返事をしなきゃと思うのに、上手く声が出ない。
母親はそのままリビングの方へ戻って行ったらしく、足音が遠ざかって行く。その音に何故か少しホッとして、再び寒さに耐える。しかし、30分ほどすると今度は荒々しい足音が近づいてきた。
「ちょっと!本当に遅刻するわよ!起きなさい!」
今度は部屋のドアを開けて怒鳴られてしまった。
「頭いたいから怒鳴らないで。」
何とか掠れた声で答えると、「あら?具合でも悪いの?」と聞かれたので眩暈がして気持ち悪く寒い事を伝えると、「ちょっと待ってなさい。」と言われ、母親は部屋を出て行った。少しして戻ってくると、「熱測ってみなさい。」と体温計を渡されたので、顔の痣がバレない様に布団の隙間から顔と手を少しだけ出し、体温計を受け取る。
「ありがと。」
再び布団に包まって受け取った体温計を脇に挟む。しばらくしてピピッという電子音がした後、また少しだけ顔と手を出し体温計を返した。
「あら!38.7度もあるじゃないの!昨日川に落ちたとか言ってたけどそのせいかしら?学校には連絡しといてあげるから寝てなさい。」
そう言うと母親は部屋を出ていった。
(熱、あったんだ…。)
1つ息をはき、学校に行かなくても良いと分かって安堵した。
(こんな顔誰にも見せられないから、休めてよかったかな。)
安心したせいか少し眠気が襲ってきた。その眠気に抗わずに目を閉じると、すぐに意識を飛ばしてしまった。
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