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〜ギルド編〜

14 (グラウ)

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 謁見室から連れ出された後、「お前達の見つけた子供達が大事なら、このまま大人しく着いてこい。」と前騎士団長に言われた。前騎士団長達に連れて行かれた先は、騎士団所有の拷問小屋だった。

「こんな所に連れてきて何のつもりだ。」
「王様は俺たちの事を摘み出せって言ってた筈だけど」
「あぁ追い出すとも。だがその前に生意気なお前達を躾けてやっても問題は無かろう。」

 上機嫌に笑いながらこちらを見ている前騎士団長に、ほとほと嫌気がさす。

 (王様といいコイツといい…とことん腐った小根をしてやがる。)

 3代前の王様は奴隷制度を廃止したり、食料問題を改善し貧しい地域も生活がしっかりと出来るよう国を整備したりととても国民思いの賢王であったと言われている。前国王も先代には及ばないが、国民に寄り添った政治を収め、国民から愛される国王であった。しかし、今代の王は先代達の残した地盤を元に、そのままの事を臣下達にやらせているだけだった。国民の意見に耳を傾けるでも無く、ただ「今までと同じ様にやれ」とだけ告げる、形だけの国王だった。そのくせ「この国は世のおかげで飢えずに生活出来るのだ。感謝の気持ちを示せ」と税率を上げたり献上品と称して欲しいものがあれば力ずくで奪う。国の1番上がそんな状態なのだ。家臣達はそれでも国民の為にと頑張る者、私腹を肥やそうと王に取り入る者、様々だった。
 目の前のこの男、前騎士団長も後者の内の1人だ。先代の頃は不正や賄賂は通じなかったが今代の王は違う。ある程度の実力さえ有れば媚びの売り方次第で騎士団長の座も手に入れられた。

 バルサスが騎士団長になれたのは、無視できないほどの実力があったからだ。どこの誰がどう見ても、バルサス程の実力も統率力もある者が一団員で、目の前にいる実力も部下からの信頼も劣るこの男が団長では不審すぎる。王はバルサスを団長に任命せざるを得なかったのだ。

「先程はよくもこの俺に《威圧》など使ってくれたな。」
「ハッあの程度の威力の《威圧》でよくあんなに騒げたね。俺たちなら軽くいなせるのに。」

 馬鹿にされたのが余程悔しいのか、ブルブルと震えながら両腕両肩を拘束されている俺の頬を殴ってきた。

 (殴られても所詮はこんなものか。)

 普段から肉体も鍛えているバルサスと鍛錬をしている俺には然程ダメージは無かった。

「くそっ!繋げ!」

 前騎士団長は俺たちを拘束している団員に告げると、天井から鎖で吊るされている手枷へと俺とバルサスの両腕を繋いだ。

「フンっいい気味だな。私から団長の座を盗むからこうなるのだ。毎日私がどんな思いでこの軍服に身を包んでいたか分かるまい!お前の胸の階級章を見るたびどんな屈辱感に包まれていたか分かるまい!」

 前騎士団長は得意の氷魔法で鋭い氷の刃を作り出すと、俺とバルサスの軍服を切り裂いた。上半身裸になった俺たちを見てニヤリと笑い、部下達に命令を下す。

「殺さない程度に痛めつけてやれ。」

 俺たちを取り押さえていた部下達はその手に鞭を持ち、俺たちの背中目掛けて振り下ろし続けた。

 俺たちへの拷問は日が暮れるまで続けられた。

 騎士団員の食事は決まった時間に食堂にて一斉に支給される。王城に仕える者達なだけあって、団員達の身の回りの世話をする給仕達が居るのだ。彼らが作った食事を決まった時間に食べ損ねた者は自分で作るか外に食べに行くしかない。

 おそらく今頃あいつらは晩飯でも食べに行っているのだろう。

「すまんなグラウ。子供の安全が掛かってる。耐えてくれ。」

 痛みに耐えながら、バルサスが言ってきた。

「当たり前だよ。お互い痛みは同じだし。あいつらの気が済むまで付き合うよ。」

 お互い鞭に打たれ続け、背中は空気が触れるだけで焼ける様に痛む。きっと皮は裂け、肉が露出し血は乾く間も無く流れ続けている事だろう。

「全く卑怯な連中だよね。実力じゃ敵わないからって子供を人質にするなんて。」
「全くだ。」
「俺さ、ここ出たらもう騎士団も辞めようと思う。王様やあいつらの元で働きづつけるとかもう無理そう。」
「お前は養子だろう。家の方は良いのか?」
「どうせ沢山の養子の中の1人だし、こんな問題起こした俺はどっちにしろ縁切りだよ。」
「フッ、では俺もこんな所とはおさらばだ。」
「そっちこそ良いの?バルサスはれっきとした貴族の次男なのに。」
「家は兄貴が継ぐし、貴族としても優秀だ。問題を起こした俺が家にいる方が迷惑だろう。それに、ここを出た後やらねばならん事が出来た。」
「あの拘束具の?」
「あぁ。」

 バルサスもあの王様に渡した拘束具の子供、妖精とやらの事を気にしていたらしい。良い機会なのかもしれない。こんな腐った連中の為に働くよりも、余程気分がいい。

「そうと決まればまずは無事にここを出ないとね。」
「当たり前だ。奴らが飽きて俺たちを捨てるまで、耐えるぞ。」

 ここを出た後の事を考えると心が軽くなり、不思議と背中の痛みも少し和らいだ気がした。

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