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無限大の愛
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「ねえ、私のことどれくらい好き?」
それはお決まりのセリフだ。
沈みかけた夕日が、幸せそうなオレンジ色に街全体を染め上げる。私達二人以外、誰もいない公園のなかで、缶コーヒーを片手にずっと話している。髪を切ったこと、野良猫を見つけたこと、きれいな花を見つけたこと、料理がうまく作れたこと。なんてことない話をずっと続けていると、やっぱりこの話になるのだ。
少し冷たい夕暮れの風が、切ったばかりの前髪を揺らす。まだ慣れないその長さを、指先でいじってごまかす。
ゆっくりと一呼吸置いてから、彼はいつもと同じように返事をした。
「世界で一番好きだよ」
何度聞いてもその言葉ににやけてしまう。何度聞いても同じように答えてくれる彼が好きだ。
「ねえ、俺のことどれくらい好き?」
「世界が滅んだとしても好きでいるくらい好き」
「不思議な例え方だね」
いつも細い目を更に細くして、彼は笑う。落ち着いた大人の雰囲気がある彼なのに、笑うと頬に笑窪が出来る。ふとした瞬間に男性から少年へと変化する、そんな彼が好きだ。
「でも、ほんとだよ」
真面目そうな顔を取り繕って、私は言う。
「きっとそうかも知れないけれど、世界が滅んだら生きていないんじゃないのか?」
「愛の力は無限大なのよ」
「世界が滅んでも復活するくらい?」
「そう。復活なんて余裕よ」
ふふん、と、少し胸を張る。
「愛の力って他に何が出来るの?」
「美味しい料理を作れるわ」
私はあまり料理が得意ではないけれど、愛の力があれば美味しく作れると思うからだ。
「急に身近になったね」
「すぐ側にある大きな力、それが愛なのよ」
それっぽいことを言ってみるが、なんだかそんな哲学っぽいことを言うのは私らしくないような気もしてきて、缶コーヒーを一口飲む。
「それってどれくらい大きいの?」
「とっても大きいの」
急に愛について哲学っぽくなってしまったのがまだ恥ずかしくて、投げやりに返してしまう。
「じゃあさ、俺に対する愛の大きさってどれくらい?」
そっぽむこうとする私の瞳の中に、無理やり彼は入ってくる。
「そんなの宇宙の端から端まで使っても足りないわよ」
「宇宙って常に膨張しているの、知ってる?」
「知ってる。知っててそう言ってるの」
缶コーヒーを手元に置き、彼の顔をそっと私の顔に近づける。
「私の愛は無限大なの」
彼の少し濡れている唇に、優しく私の唇を重ね、言葉以上の愛を伝えた。
それはお決まりのセリフだ。
沈みかけた夕日が、幸せそうなオレンジ色に街全体を染め上げる。私達二人以外、誰もいない公園のなかで、缶コーヒーを片手にずっと話している。髪を切ったこと、野良猫を見つけたこと、きれいな花を見つけたこと、料理がうまく作れたこと。なんてことない話をずっと続けていると、やっぱりこの話になるのだ。
少し冷たい夕暮れの風が、切ったばかりの前髪を揺らす。まだ慣れないその長さを、指先でいじってごまかす。
ゆっくりと一呼吸置いてから、彼はいつもと同じように返事をした。
「世界で一番好きだよ」
何度聞いてもその言葉ににやけてしまう。何度聞いても同じように答えてくれる彼が好きだ。
「ねえ、俺のことどれくらい好き?」
「世界が滅んだとしても好きでいるくらい好き」
「不思議な例え方だね」
いつも細い目を更に細くして、彼は笑う。落ち着いた大人の雰囲気がある彼なのに、笑うと頬に笑窪が出来る。ふとした瞬間に男性から少年へと変化する、そんな彼が好きだ。
「でも、ほんとだよ」
真面目そうな顔を取り繕って、私は言う。
「きっとそうかも知れないけれど、世界が滅んだら生きていないんじゃないのか?」
「愛の力は無限大なのよ」
「世界が滅んでも復活するくらい?」
「そう。復活なんて余裕よ」
ふふん、と、少し胸を張る。
「愛の力って他に何が出来るの?」
「美味しい料理を作れるわ」
私はあまり料理が得意ではないけれど、愛の力があれば美味しく作れると思うからだ。
「急に身近になったね」
「すぐ側にある大きな力、それが愛なのよ」
それっぽいことを言ってみるが、なんだかそんな哲学っぽいことを言うのは私らしくないような気もしてきて、缶コーヒーを一口飲む。
「それってどれくらい大きいの?」
「とっても大きいの」
急に愛について哲学っぽくなってしまったのがまだ恥ずかしくて、投げやりに返してしまう。
「じゃあさ、俺に対する愛の大きさってどれくらい?」
そっぽむこうとする私の瞳の中に、無理やり彼は入ってくる。
「そんなの宇宙の端から端まで使っても足りないわよ」
「宇宙って常に膨張しているの、知ってる?」
「知ってる。知っててそう言ってるの」
缶コーヒーを手元に置き、彼の顔をそっと私の顔に近づける。
「私の愛は無限大なの」
彼の少し濡れている唇に、優しく私の唇を重ね、言葉以上の愛を伝えた。
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