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愛を買う
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「今月、厳しいや」
そう彼が言うのは決まって毎月5日、私の給料日だ。
「今月も?もう、何してたのよ」
「いやー、いるものが色々あってさ。また出費だよ。赤字になりそう」
「要る物か、それなら仕方ないね」
口先だけでもそう言うしかない。彼が本格なものにこだわるのは昔からで、特にオーディオ機器には特にこだわっていた。
そんな彼は今、作曲の学校に通っている学生だ。授業料や通学の交通費などの出費がある一方、学校が忙しい日にはあまりバイトにも行けないのは私も知っている。
「ごめん、頼みがあるんだけどさ」
ほら、今月もだ。
「なあに?」
「お金、少しだけ貸してくれないかな?」
「わかった」
彼の大変さを知っているから強く断れないのだ。
「ありがとう!本当に助かるよ」
先行投資だと思うしかない。彼と私の関係は決して短いものではなく、将来を約束したような仲だ。だからこのお金は今私が立て替えなくても、いつか財布が同じになった時に払うものなのだ。払う時が今か未来かに変わるだけなのだ。
「困った時はお互い様よ。それにそんなに浅い仲じゃないんだから」
そう言って財布の中からお札を取り出す。
決して私の稼ぎも良い方ではない。私も学生であるし、アルバイトをしていても時給は彼よりも低い。ただ、彼よりも自分に使う金額が少ないので余裕があるだけだ。
ただ、その余裕も彼にこうやってお金を渡すことでなくなってしまうのだが。
「本当にありがとう。いつもごめんね」
彼のその言葉は何度も聞いているうちに本心か分からなくなってしまった。
口座の中、いくら残っていたっけ。貯金をするには洋服を買うのを来月に回そう。今月発売のアイシャドウはパスしよう。最近は課題が多いから、学校の友達に誘われる回数は減るかな。
「ううん、いいのよ」
頭の中は余裕がなくなってきても、口と表情にそれは出さないようにする。
もしも、私が彼にお金を渡さなくなったら、彼は誰を頼るのだろうか。私以外の女を探すのだろうか。そんなことされるならお金を渡すことなんて、痛くないと思える。
「ありがとう。こんなことしてくれるの君だけだよ。愛してるよ」
きっと私はこの言葉のためだけに、彼にお金を渡すのだ。
これは愛を買うという行為なのだ。
そう彼が言うのは決まって毎月5日、私の給料日だ。
「今月も?もう、何してたのよ」
「いやー、いるものが色々あってさ。また出費だよ。赤字になりそう」
「要る物か、それなら仕方ないね」
口先だけでもそう言うしかない。彼が本格なものにこだわるのは昔からで、特にオーディオ機器には特にこだわっていた。
そんな彼は今、作曲の学校に通っている学生だ。授業料や通学の交通費などの出費がある一方、学校が忙しい日にはあまりバイトにも行けないのは私も知っている。
「ごめん、頼みがあるんだけどさ」
ほら、今月もだ。
「なあに?」
「お金、少しだけ貸してくれないかな?」
「わかった」
彼の大変さを知っているから強く断れないのだ。
「ありがとう!本当に助かるよ」
先行投資だと思うしかない。彼と私の関係は決して短いものではなく、将来を約束したような仲だ。だからこのお金は今私が立て替えなくても、いつか財布が同じになった時に払うものなのだ。払う時が今か未来かに変わるだけなのだ。
「困った時はお互い様よ。それにそんなに浅い仲じゃないんだから」
そう言って財布の中からお札を取り出す。
決して私の稼ぎも良い方ではない。私も学生であるし、アルバイトをしていても時給は彼よりも低い。ただ、彼よりも自分に使う金額が少ないので余裕があるだけだ。
ただ、その余裕も彼にこうやってお金を渡すことでなくなってしまうのだが。
「本当にありがとう。いつもごめんね」
彼のその言葉は何度も聞いているうちに本心か分からなくなってしまった。
口座の中、いくら残っていたっけ。貯金をするには洋服を買うのを来月に回そう。今月発売のアイシャドウはパスしよう。最近は課題が多いから、学校の友達に誘われる回数は減るかな。
「ううん、いいのよ」
頭の中は余裕がなくなってきても、口と表情にそれは出さないようにする。
もしも、私が彼にお金を渡さなくなったら、彼は誰を頼るのだろうか。私以外の女を探すのだろうか。そんなことされるならお金を渡すことなんて、痛くないと思える。
「ありがとう。こんなことしてくれるの君だけだよ。愛してるよ」
きっと私はこの言葉のためだけに、彼にお金を渡すのだ。
これは愛を買うという行為なのだ。
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こちらにも失礼します。
こういうお金を男に貢ぐタイプの女性はいそうだなと思いました。
いつもコメントありがとうございます。
こういう女性というのは体質みたいなものなんでしょうかね……
本日、拝読しました。
愛を買う。
確かに。なるほど。
その意味が、よく分かる。そして同時に、色々なことも、自然と考える。
そんな、作品でした。
感想ありがとうございます。
まさに「愛を買う」なんですよね