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「つまり、代償が必要。わかるか」
召喚術というものをやったことはないからわからないけど、本では読んだことがある。そこに書かれてあったのは、魔法陣とその周りに置く蝋燭、中央に置かれた生贄。
「なにが、ほしいの?」
生贄となれと言われているのかと思った。終わってしまうことに対しての恐怖で、押しつぶされそうになった。握った拳が小刻みに震える。
「魔法少女の魔力をよこせ」
杖を強く握りしめる。
「断ったら?」
「それはできない」
目の前に大きな影が現れた。重たい空気があたり一面に広がる。
魔法少女から魔力を奪ってしまったら、そこに残るのは何なのか。存在が元の世界に戻ってくるわけじゃない。戻ってきたところで、帰るところなんてない。私にはここしか居場所がないのに、それを奪われたら何もなくなる。
そんなのは、嫌だ。
手が迫ってくる。奪われてしまう。嫌だ、嫌だ。
考えるよりも先に体が動いていた。
長く伸びた杖がその手を振り払っていた。その軌跡に薄ピンクの光の花びらが舞う。
ごとり、と、なにか重いものが落ちる音がした。
地面をみると、黒くて禍々しいオーラを放つ物体が落ちていた。暗く濁った青いそれは、ところどころ赤い筋が入っている。節くれだった木の枝のような形をしていて、五本に割れた先端には尖った石のようなものがついている。
「お前は」
ルイズリーが怒りに満ちた声を上げた。
「クソがぁ」
地響きに近い声。
「お前は悪魔だな!」
ルイズリーは叫んだ。
「悪魔…‥」
魔法少女より上だなんて言うから、神なのかと思っていた。
「神と同等の力を持つ、人間より上位の存在。だけど、神とは真逆の存在。その腕、悪魔だろ」
「ああそうだよ、だったらなんだ。世界を俺が完全なものにしてやるんだよ」
「なにをするの」
「全て消えれば綺麗だよな。新世界ってやつだ。魔法少女の魔力をちまちま集めているだけじゃ終わりそうにないからな。このままおまえごと消えればいいんだよ」
世界を、消す。それは私が止めないといけないんだ。
「させないから」
私は魔法少女である。皆に奇跡を届ける存在だ。奇跡で皆を笑顔にする存在である。世界を、消させるものか。
「魔法少女が悪魔に勝てるとでもいうのか。笑わせるな」
「じゃあなんで、私の魔力で世界を消そうとしたの。あなたに何かをする魔力がないからじゃないの?」
はったりだった。精一杯の作り笑いで、悪魔を見下すように私は言った。膝は気を抜いたら崩れ落ちそうなほど震えている。
「うるさい。奇跡なんて、奇跡なんて」
呻くような声がした。そして目の前に大きな拳が飛んできた。バックステップでそれを避ける。
「黙っていてよ。奇跡を起こすのが私の役目なの」
それだけ、それだけが私の存在意義だから。
大きく杖を振る。
あたり一面が桜色のあたたかい光りに包まれた。柔らかいその光の中は少し懐かしかった。音は何も聞こえない。
誰かに呼ばれたような気がしたけれど、構わず光の先を目指した。
そこで意識は途切れた。
召喚術というものをやったことはないからわからないけど、本では読んだことがある。そこに書かれてあったのは、魔法陣とその周りに置く蝋燭、中央に置かれた生贄。
「なにが、ほしいの?」
生贄となれと言われているのかと思った。終わってしまうことに対しての恐怖で、押しつぶされそうになった。握った拳が小刻みに震える。
「魔法少女の魔力をよこせ」
杖を強く握りしめる。
「断ったら?」
「それはできない」
目の前に大きな影が現れた。重たい空気があたり一面に広がる。
魔法少女から魔力を奪ってしまったら、そこに残るのは何なのか。存在が元の世界に戻ってくるわけじゃない。戻ってきたところで、帰るところなんてない。私にはここしか居場所がないのに、それを奪われたら何もなくなる。
そんなのは、嫌だ。
手が迫ってくる。奪われてしまう。嫌だ、嫌だ。
考えるよりも先に体が動いていた。
長く伸びた杖がその手を振り払っていた。その軌跡に薄ピンクの光の花びらが舞う。
ごとり、と、なにか重いものが落ちる音がした。
地面をみると、黒くて禍々しいオーラを放つ物体が落ちていた。暗く濁った青いそれは、ところどころ赤い筋が入っている。節くれだった木の枝のような形をしていて、五本に割れた先端には尖った石のようなものがついている。
「お前は」
ルイズリーが怒りに満ちた声を上げた。
「クソがぁ」
地響きに近い声。
「お前は悪魔だな!」
ルイズリーは叫んだ。
「悪魔…‥」
魔法少女より上だなんて言うから、神なのかと思っていた。
「神と同等の力を持つ、人間より上位の存在。だけど、神とは真逆の存在。その腕、悪魔だろ」
「ああそうだよ、だったらなんだ。世界を俺が完全なものにしてやるんだよ」
「なにをするの」
「全て消えれば綺麗だよな。新世界ってやつだ。魔法少女の魔力をちまちま集めているだけじゃ終わりそうにないからな。このままおまえごと消えればいいんだよ」
世界を、消す。それは私が止めないといけないんだ。
「させないから」
私は魔法少女である。皆に奇跡を届ける存在だ。奇跡で皆を笑顔にする存在である。世界を、消させるものか。
「魔法少女が悪魔に勝てるとでもいうのか。笑わせるな」
「じゃあなんで、私の魔力で世界を消そうとしたの。あなたに何かをする魔力がないからじゃないの?」
はったりだった。精一杯の作り笑いで、悪魔を見下すように私は言った。膝は気を抜いたら崩れ落ちそうなほど震えている。
「うるさい。奇跡なんて、奇跡なんて」
呻くような声がした。そして目の前に大きな拳が飛んできた。バックステップでそれを避ける。
「黙っていてよ。奇跡を起こすのが私の役目なの」
それだけ、それだけが私の存在意義だから。
大きく杖を振る。
あたり一面が桜色のあたたかい光りに包まれた。柔らかいその光の中は少し懐かしかった。音は何も聞こえない。
誰かに呼ばれたような気がしたけれど、構わず光の先を目指した。
そこで意識は途切れた。
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