8 / 42
階層ゲーム前
8 謎、怪しき女
しおりを挟むさっきから一つ気になっていることがある。この喫茶店は自分が入った時から客の変化がない。誰一人として来店しなければ誰一人として退店しない。唯一外へ出たのは店を出て行ったきり返ってこない女店員だけだ。
さらに、公園に向かう時から感じていた喫茶店の窓際から感じる気配。自分の第六感が疼いている。身体中に神経を巡らせ振り返った。
その瞬間 ゴゴォーーーン パチン
鼓膜を突き刺さすような大きな雷が落ち喫茶店内が一瞬にして暗闇へと変わった。
暗くて前が良く見えないが、藤森の焦る声が聞こえる。
「店長!」「店長!」
「しっかりしろ」
どうやら、店長が倒れたらしい。藤森が必死で叫んでいる。
「救急車を頼む」
スマホを出そうと探していると、手から滑りカウンターの下に入り込んでしまった。体勢を低くしてスマホを掴むと、停電していた電気が戻った。強い光で視界がぼやける。視力が次第に戻っていき、はっきりと店内を見渡せるようになった。
「あれ、客がいない、」
停電前まで満員近くいた客が誰一人として姿が見えなくなっていた。超常現象を信じたことはないが、その時だけは信じざるをえなかった。まさか、近くにいた藤森と倒れた店長までいなくなるとは。その時またしても妙な視線を窓のあたりから感じた。恐る恐る振り返るが誰もいない。
時計を見ると、午後七時四十分。とにかくこの店から出よう。
誰もいない静まり返った店から外に出ようと試みたその時。女の高い笑い声が聞こえた。声のする方に視線を向けると、土砂降りの雨でずぶ濡れになった女店員と、宮木友恵が口を大きく開け白い歯を見せながら目を見開き、窓の外から笑っている。
「え、」
「宮木さん、?」
いや、そんなはずはない。確か宮木友恵はこの時間バイト先にいるはず。しかし、何度見ても宮木友恵にしか見えない。それにしてもおかしい、なぜずっと笑ってるんだ。それに、隣の女店員の形相が明らかに狂っており、頬を大きく擦りむき、制服は泥まみれになっていた。何かの間違いかと思い、一度下を見た。もう一度慎重に顔を上げるとそこには誰の姿も見えなかった。
「なんだったんだ、今のは、」
静寂に包まれた喫茶店に数分間突っ立っていたが、ようやく我に帰り店を出た。
傘を持ってきていなかったので喫茶店に置いてあった他人の傘を使って雨を凌ぎ駅へと向かった。階層ゲームの会場へ行く前に、集合場所でスマホや財布などの私物は回収されるらしい。ただ、本とサバイバルナイフだけは会場で返される。
もうすぐ始まろうとしている階層ゲームとさっきまでの怪奇な事象に緊張と興奮が入り乱れ呼吸と心拍数が早くなるのを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる