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第五話「“夢”の記憶と“嘘”の在処」
しおりを挟むリクとユメは、岩陰に身を潜めていた。ノインの気配はもう感じられないが、それでも胸の奥に残る緊張は拭えない。
「……助かったのかな」
リクがつぶやくと、ユメは静かに首を振った。
「時間を稼げただけ。あの人は、必ずまた来るよ。今度は、“嘘”を壊すためじゃなく、“お前”を壊すために」
その言葉に、リクはうつむいた。
自分の描いた“嘘”が、誰かの怒りを買い、誰かの運命を狂わせる。そんな現実に、向き合うにはまだ若すぎる心だった。
だが、同時に。
(……俺の“嘘”が、本当に誰かを救うなら)
リクはポケットから地図を取り出す。そこには、先ほど描いた鉄の壁がまだ残っていた。
この地図は、確かに“嘘”だ。けれどそれは、ただの妄想でも、無意味な幻想でもない。
それは、誰かの「こうあってほしい」という、切なる願いそのものだ。
「ねえ、リク」
ユメがそっと言った。
「私ね、記憶がないの。三年前より前のこと、まったく思い出せないの。でもね――」
彼女は言葉を切ると、リクをまっすぐに見つめた。
「この地図を見たとき、懐かしいって思ったの。“これを探してた”って、そう思ったんだ」
「探してた?」
「うん。まるで、誰かに“約束”されたみたいな気がして」
リクは黙って聞いていた。
するとユメは、リクに一枚の古い紙片を差し出す。それは、ぼろぼろに破れた地図の一部だった。リクの持っているものとは違う筆跡。けれど――
「これ……“同じ地図”だ」
紙を重ねると、破れ目がぴたりと一致した。確かにこれは、元は一枚だった。
「私はこれを、記憶を失ったときに握ってた。だからずっと、探してたの。“ウソの地図”のもう一つの欠片を」
リクは驚きと共に、静かな確信を覚えていた。
(俺がこの地図を拾ったのも、きっと偶然じゃない)
二人の手に渡った二枚の地図――それがひとつになったとき、地図の表面がゆらりと揺れた。
そして、赤く染まる一点が浮かび上がる。
「……“嘘の在処”だ」
リクが言った。
その印は、かつて存在しなかった場所にあった。地図上でさえ名前のない、空白の地。だがそこには確かに、何かが眠っている。
「行こう。今度こそ――真実に近づける気がする」
「うん。私も、記憶を取り戻すために」
ふたりは、かつて地図にはなかった“空白”へ向かって歩き出す。
その背後で、誰かが小さくつぶやいた。
「また……動き出したな、“ウソの地図”」
――仮面の奥で、ノインの赤い瞳が静かに光を帯びる。
そしてその陰で、もう一人の“観測者”が、静かに嗤った。
「さあ、“真実のカケラ”を集める旅の、本当の始まりだ」
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