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18話
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ガシャンッ!!
豪華な調度品が飾られた執務室に、陶器が粉々に砕け散る不快な音が響き渡る。
「くそっ……! なぜだ、何故上手くいかない!!」
ポテトは血走った目で周囲を睨みつけながら、苛立ちのままにデスクを蹴り上げた。
新しい婚約者。彼女は名門貴族の出身で、魔力も高く「有能」だともてはやされていたはずだった。彼女と結ばれれば、自分の地位はさらに盤石なものになる――そう信じて疑わなかった。
だが、現実は違った。
『ポテト卿。最近の君の討伐成績はどうなっている? 以前提出していたような、高純度の魔力結晶も全く納品されていないではないか』
『あの素晴らしい功績は、君の実力ではなかったのかね?』
上層部からの冷ややかな視線と、容赦のない言葉。
それもそのはずだ。ポテトがこれまで立ててきた輝かしい手柄すべて、地下室に監禁していたルカから「搾り取った魔力」によるものだったのだから。
新しい婚約者の魔力など、あの底なしの泉のようなルカの魔力に比べれば、とるに足らない水たまりのようなものだった。枯渇していく手持ちの魔力結晶。どんどん落ちていく周囲からの評価と名声。
「あのゴミクズを捨ててから、何もかもが上手くいかない……! あいつのせいだ!」
ポテトはギリッと歯を食いしばり、醜く顔を歪めた。
「俺の役に立つことだけが唯一の存在意義だったくせに、あっけなく死にやがって! 最後まで俺の足を引っ張るクズ野郎だ!!」
ルカを限界まで搾取し、あまつさえ魔物の森へ捨てた。自分で殺したも同然だというのに、ポテトの中には微塵も罪悪感などなく、死してなお、自分の思い通りにならない現状のすべての責任を、ルカに押し付けて憎悪を募らせていた。
コンコン
最悪の空気が漂う執務室の扉が、恐る恐る叩かれた。
「旦那様……お耳に入れたい事がございます」
「なんだ! 鬱陶しい、今は取り込み中だぞ!」
怒鳴り散らすポテトの前に、一人の従者が青ざめた顔で進み出て、深く頭を下げた。
「そ、それが……。遠方の街へ買い付けに行っていた者が、街の職人通りでルカ様らしき人物を目撃したと、報告が上がりまして……」
「……………は?」
ポテトの動きが、ピタリと止まった。
「ルカだと……? 馬鹿なことを言うな! あいつは魔物の森の奥深くに捨てたんだぞ! 魔力も空っぽで、立ち上がることもできないボロ雑巾だったんだ。生きているはずがないだろ!!」
ポテトは焦ったように声を張り上げた。
もし生きていて、自分が彼に何をしたか公爵家や騎士団に告発でもされれば、これまでの偽装された功績もすべて剥がれ落ち、完全に破滅してしまう。嫌な汗が背中を伝った。
だが――。
(……いや、待てよ?)
ポテトの脳裏に、ある恐ろしい企みが過ぎる。
もし、本当にあいつが生きていて、誰かに拾われて魔力が回復しているのだとしたら?
「……ふっ、ふふふっ……」
ポテトの口角が、三日月型に吊り上がっていく。
「おい。目撃したという街の周辺を徹底的に調べろ。本当にあいつが生きているのか、誰に匿われているのか、全て突き止めるんだ」
「は、はいっ!」
従者が慌てて部屋を飛び出していくのを見送りながら、ポテトはニヤリと不気味に笑った。
(生きていたのなら、好都合だ。あいつは俺の所有物だ。もう一度連れ戻して、今度こそ二度と逃げられないように手足を鎖で繋いで、最後の一滴まで搾り取ってやる……!)
自分の破滅が足音を立てて近づいていることなど露知らず、ポテトは暗い執務室の中で再びルカを食い物にしようと舌なめずりをするのだった。
豪華な調度品が飾られた執務室に、陶器が粉々に砕け散る不快な音が響き渡る。
「くそっ……! なぜだ、何故上手くいかない!!」
ポテトは血走った目で周囲を睨みつけながら、苛立ちのままにデスクを蹴り上げた。
新しい婚約者。彼女は名門貴族の出身で、魔力も高く「有能」だともてはやされていたはずだった。彼女と結ばれれば、自分の地位はさらに盤石なものになる――そう信じて疑わなかった。
だが、現実は違った。
『ポテト卿。最近の君の討伐成績はどうなっている? 以前提出していたような、高純度の魔力結晶も全く納品されていないではないか』
『あの素晴らしい功績は、君の実力ではなかったのかね?』
上層部からの冷ややかな視線と、容赦のない言葉。
それもそのはずだ。ポテトがこれまで立ててきた輝かしい手柄すべて、地下室に監禁していたルカから「搾り取った魔力」によるものだったのだから。
新しい婚約者の魔力など、あの底なしの泉のようなルカの魔力に比べれば、とるに足らない水たまりのようなものだった。枯渇していく手持ちの魔力結晶。どんどん落ちていく周囲からの評価と名声。
「あのゴミクズを捨ててから、何もかもが上手くいかない……! あいつのせいだ!」
ポテトはギリッと歯を食いしばり、醜く顔を歪めた。
「俺の役に立つことだけが唯一の存在意義だったくせに、あっけなく死にやがって! 最後まで俺の足を引っ張るクズ野郎だ!!」
ルカを限界まで搾取し、あまつさえ魔物の森へ捨てた。自分で殺したも同然だというのに、ポテトの中には微塵も罪悪感などなく、死してなお、自分の思い通りにならない現状のすべての責任を、ルカに押し付けて憎悪を募らせていた。
コンコン
最悪の空気が漂う執務室の扉が、恐る恐る叩かれた。
「旦那様……お耳に入れたい事がございます」
「なんだ! 鬱陶しい、今は取り込み中だぞ!」
怒鳴り散らすポテトの前に、一人の従者が青ざめた顔で進み出て、深く頭を下げた。
「そ、それが……。遠方の街へ買い付けに行っていた者が、街の職人通りでルカ様らしき人物を目撃したと、報告が上がりまして……」
「……………は?」
ポテトの動きが、ピタリと止まった。
「ルカだと……? 馬鹿なことを言うな! あいつは魔物の森の奥深くに捨てたんだぞ! 魔力も空っぽで、立ち上がることもできないボロ雑巾だったんだ。生きているはずがないだろ!!」
ポテトは焦ったように声を張り上げた。
もし生きていて、自分が彼に何をしたか公爵家や騎士団に告発でもされれば、これまでの偽装された功績もすべて剥がれ落ち、完全に破滅してしまう。嫌な汗が背中を伝った。
だが――。
(……いや、待てよ?)
ポテトの脳裏に、ある恐ろしい企みが過ぎる。
もし、本当にあいつが生きていて、誰かに拾われて魔力が回復しているのだとしたら?
「……ふっ、ふふふっ……」
ポテトの口角が、三日月型に吊り上がっていく。
「おい。目撃したという街の周辺を徹底的に調べろ。本当にあいつが生きているのか、誰に匿われているのか、全て突き止めるんだ」
「は、はいっ!」
従者が慌てて部屋を飛び出していくのを見送りながら、ポテトはニヤリと不気味に笑った。
(生きていたのなら、好都合だ。あいつは俺の所有物だ。もう一度連れ戻して、今度こそ二度と逃げられないように手足を鎖で繋いで、最後の一滴まで搾り取ってやる……!)
自分の破滅が足音を立てて近づいていることなど露知らず、ポテトは暗い執務室の中で再びルカを食い物にしようと舌なめずりをするのだった。
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