特技は有効利用しよう。

庭にハニワ

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よーやく出発?

くまがり?

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「ゑ」

フェル嬢──雇い主のフェリシア・ゴルディアス侯爵令嬢──に、近況を報告する~っと言って、嬉しそうに通信の魔道具を操作し始めたはずのナル嬢──ナルシッサ──が、妙な声で鳴いた。


じきに合流するであろうフェル嬢。

身を守る為でもなく我らを欲したのは、目眩ましの意味合いが強かったようで。
需要と供給ががっちり合致した我ら──商業ギルド所属の戦闘メイドのナルシッサ嬢と、自分こと冒険者ギルド所属のハイドの二人。
正直なところ、我ら二人を同時に雇うなど……正気か? と思った。

我ながら、報酬は高額になると思っていた。

が。

自分の欲するモノを、幾つも何度も差し出されたら……。
しかも、自分が望んだモノよりも良きモノを、『はい3割増し!』 と目の前に積み上げられたら、もう……ね?

しかも、世界中の美酒を望むだけ出してやろうか? などとさらりと言われてしまったら……!




冒険者ギルドが囲いこみたい冒険者、と聞いていた。
『収納』と『転移』の能力持ちだと。

「……まさか、桁外れな収納と広範囲な転移持ちとは、な……」

しかも、どうやっているのかまったくわからないんだが、飛竜をあっさりと狩るだけの力もあるときた。

そりゃ、国から狙われるだろうよ。

「神との誓約を破棄する訳にはいかないだろうが、ちょっとしたお使い気分で欲しいモノを持ってきてもらえるとか。オレが欲しいのは酒なんだが、他国の、それも限られた者しか手にする事が出来ないモノも、フェル嬢は入手出来る。……国なんかほっといていいから、オレらと仲良くしてくれよ」

その為なら、鬱陶しい騎士どもをあやしてやろう。

騎士のくせに、女を口説き落として国に縛りつけようとするヤカラどもを良いように転がしてやろう。

多分だが、ナル嬢も、オレと似たような事を考えてるだろう。
彼女が欲しいモノは、世界各国の甘味だが。

そう言えば、先ほどの妙な鳴き声は何だったんだ?



ナル嬢の様子を伺うと、ナル嬢の気を引きたい近衛の一部がナル嬢にたかっていた。

砂糖に群がる蟻んこか。
ってゆーか、仕事しろや近衛ども。


ナル嬢は、群がる近衛を適当にあやして、オレの方にやってくると言った。

「フェルちゃん、バトルの真っ最中に声掛けちゃったみたい」
「ほう?」
「今から熊狩りって言ってたわ」
「くま?」
「ええ、くま」
「……熊の手は、珍味だなぁ」
「……どっちかって言ったら、ハチミツが……」
「……最近蜂蜜酒飲んで無いなあ」
「……」






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