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3 年上筋肉攻めのダイくんはヤキモチ焼き

2 指舐めたい

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「ねぇ……、いつもどこで寝てるの?」
「ああ? 毛布にくるまって床にごろ寝だ」
「そうなんだ……ふーん」

 ボクは意味深にうなずきながら、本を持つ彼の手に手のひらを重ねる。

「ダイちゃんの手、おっきいね」

 それでいて肉厚。皮まで厚い。親指の付け根あたりがパンと張っているのがボクのお気に入り。焼き立てのお菓子みたいでかぶりつきたくなる。
 ところどころに傷や豆が潰れた痕があるのは、昔やってた武術のせいなんだって。

「ねー、なんの本読んでるの?」
「別になんでもいいだろ」
「脳筋バカキャラっぽいのに本なんて似合わないよ。どーせエロい本なんでしょ?」
「余計なお世話だ。エロかろうがなんだろうが、本ってやつは自分の知らないことがたくさん書いてあってなかなか面白いぞ」
「ふぅん……」

 ボクは本よりダイくんの指のカタチを眺めてるほうがずっとずっと楽しい。
 カマボコ型で、どれも深爪。それでもツヤツヤとよく光っていて、溶けかけたドロップみたいに見える。今日は舐めたらどんな味がするだろう。
 ドキドキしながら口を開き、舌を這わせようとしたとき、


「――ひゃっ、ははははっ!」


 くすぐったくて飛び上がってしまった。
 彼の手がボクのお腹をわしゃわしゃとくすぐっている。

「あはっ、やっ、ホントにっ……お腹っ、やめてっ! くすぐったひひひぃっ!」
「人の指でなにしてんだ」
「ひゃ、あ、ごめんんっ!」
「ったく。お前、筋肉なさすぎ。ぺたぺたじゃん」
「だってあんまり鍛えるの良くないでしょ」
「は?」
「抱き心地が悪くなっちゃうもん。筋肉と脂肪バランス良くしようって頑張ってるんですぅ」
「変な努力してんじゃねぇよ」
「んっ……」 

 言葉はぶっきらぼうだけど、お腹の方は優しくなでなでしてくれる。
 まるで心を開き切った犬みたいにボクはその感触に酔いしれていた。
 触られてるのは一箇所だけなのに、背中も、それから脚も、彼の体を感じている部分全部が性感帯になったみたいで、とろとろ熱くなってしまう。

 でも、それをときどき冷ます邪魔者がいる。
 ぴゅう、という甲高い音と共に窓ガラスが激しく揺れた。誰かが叩いてるみたいにガタガタと。

 間も無くして部屋に入り込むのは隙間風。ぴっちりと閉まっているはずのカーテンも揺れてる。

「……やっぱり、寒い」
「そうか?」
「うん。ボロ部屋だからしょうがないけど、寒い」
「さりげなくバカにすんなよ」
「ごめんね。だってね、もっと……あっためてほしいんだもん」

 おねだりするように首筋にキスをする。でもマークはつけない。軽く唇を当てるだけ。
 ダイくんは勉強の他にも、市場に果物を運ぶ仕事をしてる。たくさんのお客さんに首を見られるのはきっと嫌だろうから――。

「あのさ、俺、本読みてぇんだけど」

 それをウザったそうに手ではらい、ダイくんは溜息をつく。

「やだ……」

 彼の頬に額を押し当てぐりぐりする。

「……もっと、いろんなトコ……触ってほしい」
「腹、ちゃんと撫でてんだろうが」
「違う。もっと……上のほう……」
「こうか?」

 と、胸をまさぐられる。

「んっ……。きも、ちぃ……」

 ボクはだんだん前のめりになってテーブルにほっぺたをくっつけていた。

「ん、あ……、ぅう、ん……」

 敏感なところに触れられる度、ぴくん、ぴくん、と反応してしまう。

「……あんま声出すなよ。壁、薄いんだからな」
「ンンッ!」

 そんなことをささやきながら突起をピン、と弾くのがダイくんの憎たらしさ。

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