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・松嶋先生はせんちゃんのことが…!?(ほのぼの)
壁のナナフシ
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翌日のお昼休み、例の視線を感じた気がして前後左右をきょろりと見たら、黒い影がサッと動いた。たしかに壁の裏へ消えた。
「松嶋先生、話したいことがあるんです。出てきてくれません?」
数秒待ってみたが、なんの返事もない。壁の向こうで動く気配もない。
「……昨日、先生のことを兄に言ったんです。そしたら『いつもどうもありがとうございます。これからもメッセージお待ちしてますね』って伝えてくれと言われました」
壁の向こうから細い指が、まるで芋虫のようにじわじわと這って出てくる。
「……あ、あ、あ、ありがとう……せんりくん……」
突き出した中指が、くの字にひょこっと曲がった。お辞儀代わりのつもりらしい。
「あのー……、それで、兄のラジオをいつも聴いてくださっているお礼じゃないですけど、オレからも先生に一言伝えたくて」
「へ?」
ナナフシの青白い顔が壁からヌッと出てきた。壁と顔がほとんど同じ色をしている。
壁に擬態している虫みたいで、オレはちょっと噴き出し笑いそうになる。
「オレ、先生の授業嫌いじゃないですよ」
──昨夜、優兄と過ごしているうちに、相手に自分の気持ちを伝えるのって大切なんだなって思ったのだ。
だから、悩んでいるナナフシ先生にも生徒であるオレから一言伝えられたら、少しは心が晴れてくれるかなと思った。
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