敗北勇者

DAI999

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1章:目覚めの刻

ゆめか、まぼろしか、

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「めざ...な...」

優しい声が頭に響く
しかし、それは途切れ途切れだった

意識がはっきりしていくと同時に、優しい声も聞き取れるようになっていった

「目覚めなさい...」

はっ、と目を覚まし、起き上がる
ほんの少し体が悲鳴を上げた

「勇者よ...
あなたは負けました...」
負けた...?
どういうことなのだろうか?

キョトンとしていると、その声はこう続けた
「あら...?
あなた...何も覚えていない?」

何か忘れている...?
記憶を探ってみる

...が、思い出そうとすると頭が痛む

「まぁ...なんということでしょう...」
その声は僕を心配するように話した
「僕は一体何者なのですか...?」
僕は問いかけた
「...本当に何も思い出せないのですか?」
声は問い返す
それに対して僕は黙って頷いた

「...分かりました
混乱しないように、1つずつ、ゆっくり話していきましょう...」
一息ついて、声は続けた
「...まず、あなたは勇者
...?」
思わずオウム返しする
「魔王との決戦に赴き、あなたは奮闘しました
しかし、結果はあなたの敗北
この世界は魔王の手に堕ちてしまいました」
「...?」
どういうことなのだろうか?
全く分からない
「あなたの身体はボロボロになり、今にも消えてしまう所でした
しかし、なんとかしてこの空間へ連れ出して、100年間あなたが目覚めるのを待っていました」
「ひゃく...ねん?」
あまりにも壮大すぎる
そして、非現実的すぎる
人間である僕が100年以上も生きられるとは考えられない
「混乱しすぎるといけません、ここで一旦話を終わりましょう」
...話をまとめよう
僕は100年前の魔王との最終決戦に敗れている
この世界は魔王の支配下
だけれども、僕はまだ外の世界を見ていない
外はどうなっているのだろうか?
「あの...」
「外の世界を見てみたいのですか?」
「あっ...はい...」
「分かりました...」
そう言うと、声の主は何かを呟いた
「目を瞑っていてください
景色が歪んで酔ってしまいますよ?」
言われたままに目を瞑ることにした


何かがグルグル回る感触がした
が、その感触はすぐに消えていった
「...はい、目を開けてください」
ゆっくりと、まぶたを開いた
「...!」
僕は思わず絶句した

見渡す限り黒い雲
海は赤く染まり、草木はかろうじて生き残っているが、ほとんどが枯れてしまっている
そして、目の前には廃墟があった
集落だったのだろうか?
かつての繁栄の面影は一切見られなかった


「これが...今の世界です...」
「なんてことだ...」
僕は思わずその場に立ち尽くした
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