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第2章
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しおりを挟む「・・・くだらん」
くだらん? こっちは訳もわからず閉じ込められているのに、そんな無責任な事を___。
興味を無くした様に貴臣はソファにどかりと座り直している。普段から温厚な沙也加だが、貴臣の態度に頭の中でプチリと何かがキレる音がした。
「くだらないですか? こんな所に住んでいてどこの誰かも知りませんが、貴方の身勝手な行動で私はクビ寸前です。路頭に迷ってしまうかもしれません。それを「だから、くだらんと言っている」
文句を言い終わる前に話の腰を折られて、更に怒りが膨れ上がり唇が震えてくる。
「何不自由無く育ってきた貴方にはわからない! こんな嘘みたいな場所に住んで、生まれた時から綺麗で、私みたいな底辺の気持ちなんてわからない!」
「ああ、わからない。話はそれだけか?」
この人には何を言っても伝わらないのかもしれない。
「・・・ふぅ。わ、私はご存知の通り母子家庭です。仕事を無くすわけにはいかないです。なので「わかった」___え?」
「だから、わかったと言っている」
「何を、ですか?」
「お前は親に迷惑を掛けたくないから、働きたいという事であろう?」
「え? あ、はい」
「では、私の秘書としてここでの勤務に励め」
「なに勝手な事を・・・」
「勝手などではない。店舗事務から本社の社長秘書に昇級だ」
話の流れに全くついていけず、完全に置いてけぼりである。
「社長秘書?」
「そうだ。ここが新しいお前の配属先だ」
「あの、貴方は一体?」
「大谷家具は我が社の事業の一つだ。私が三年前からお前の最上級上司だ」
・・・しゃっ、社長!?
とんでもない人と話をしていた。
うちの会社は全国に160店舗ある大手家具メーカーである。そして、家具だけではなく工務店や不動産など多数の事業を展開する大企業だ。そこの田舎の店舗のはたまた事務員なんて、そんな末端の沙也加と貴臣は本来ならば出会う事は到底あり得ないのである。
「いいや、あ、ああ、あの」
「お前の相手で時間を無駄にした。仕事に行ってくる。大人しく、ここで待てでもしていろ」
「こんな時間から、デスカ?」
「たかがエレベーターを降りるだけだ」
「エレベーター?」
「本当にお前は馬鹿だな。通勤時間程、無駄なものはない。ここは自宅であり、本社ビルの最上階だ」
そう言って貴臣がスーツをスマートに羽織り出くのを、沙也加はアホ面で見送った。
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