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第6章
交わす言葉、絡まる糸。
しおりを挟む身体が揺れている気がする。動かそうにも身体が重くて動かせない。軋む音はベッドのスプリングの様だった。重い瞼をゆっくりと開くと、黒い影がこちらを見下ろしていた。
最後に覚えているのは確か・・・、匠くんと車で移動中だった。大事な話をしていた気がする。そして・・・大好きって聞こえた。そう、意識が遠のく中で匠くんが苦しそうにそう言っていた気がする。
ぼけっと影を見上げていた。相手が誰かではなく、最後の記憶を辿っていた。すると突然お腹をゆるりと撫でられた。
「うひゃああぁっ」
冷たい指先に撫でられて思わず声を上げてしまう。暗くて誰だかわからない恐怖が、今頃になって込み上げてくる。
「えっと、匠くん? く、くすぐったいよ?」
匠くんでありますようにと祈りながら問うが、答えは返ってこない。影に手を伸ばすと強い力でベッドに縫い止められた。ピクリとも動かない両手に、相手が匠くんではない事を悟った。ここが何処なのかもわからないが、匠くんが変な場所に自分を置き去りにするはずもなかった。手を動かすと触れるサラリとしたシーツの感触には覚えがあった。
「このシーツ・・・、ここは実家だよね? えっと・・・」
一週間程泊まっていたからこそわかる上質な手触りに少し安心した。相変わらず覆いかぶさる影は声を出さずにこちらを見下ろしている。人物当てクイズか何かなのだろうか。今日は貴臣さんは帰らないし、ここにいるはずもないから残る人物はただ一人だった。さっき、また後でって言ってたし・・・
「司くん? んんっ、__んっちょっとやめっっ」
名前を呼んだ瞬間に唇を塞がれて、噛みつくようなキスが息をつく暇もないくらいに降ってくる。自分からか相手からなのか、アルコールの臭いが漂ってくる。瞬間的にともにお酒を飲んだ司が頭に浮かんだ。以前は受け入れてしまった口付けも、貴臣を信じようと決めた今では受け入れる事は出来ない。
「んんん、はっはっぅんん」
押さえつけられた手首は動かない。言葉を発する隙も与えて貰えない。酔った身体はまともに動いてくれない。どうしたら・・・。過去の状況を思い出した。こんな時どうしたんだったか。
考える間もなく足で急所を蹴り上げていた。
開放された身体を無理矢理動かして相手と距離を取った。司くんでも無理矢理は許せない。
「ちょ「おい」・・・へ?」
「お前、ご主人様のキスもわからないのか?」
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