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第6章
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しおりを挟む盗み聞きするつもりはなかったが、結果的にしっかりと盗み聞きをしてしまっていた。藤本は貴臣を愛し、そんな藤本を司は愛していたのだろう。互いに一方通行だった矢印は二人をおかしな関係に変えてしまったのだろうか。
「藤本さん、俺は貴女を救いたかった。けれど、俺のしてきた行動は間違っていた。きっと俺が貴女に抱いていた感情は・・・」
「___もう、いい。あの女が来たからいけないのよね」
「・・・」
「そう、貴方を責めるべきじゃなかったわ。だから、同情だなんて言わないで」
「・・・ごめ(バシーン)
大きな音が部屋中に響いた。見なくてもわかる、平手打ちの音だった。
「司くん!」
「さっ、沙也加さん!?」
思わずパーテーションの向こう側に飛び出していた。静まり返った部屋でソファに座り肩で息をしている藤本さんと、頬を赤らめている司くんがいた。二人の視線を一身に浴びて、何を言えばいいかわからなかった。
「何時からそこに?」
沸々とお湯が沸騰する直前の様な声だった。藤本さんの怒りが沸点に達して吹きこぼれるのは時間の問題である。美しい顔が般若のように恐ろしく見えた。
「まあ、いいわ。貴女に良い事を教えてあげる」
「藤本さん・・・頼むから変なことは言わないでくれ」
「変な事って? 私と貴方の事? それとも・・・、貴方たちの計画のこと?」
優勢なのは藤本さんに見えた。司くんは青い顔をして状況を変えるための策を考えあぐねている。
「計画って何ですか?」
「沙也加さん、聞かなくていい」
静かに制す言い方だった。それでも知りたい、知るべきだと感じていた。
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「以前、手紙を見ました。”貴女は利用されている””逃げて”というものを」
「そうよ。まあ、今更だけ「やめるんだ」
司が藤本の腕を掴んだ。司の瞳には焦りと憤りが交じり合った不安定な色をしている。心臓の音がドクドクと大きく聞こえた。
「貴女は、大谷兄弟の父親である会長と、貴女のお母様の結婚を阻止する為にここに連れて来られたのよ」
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