新人神様のまったり天界生活

源 玄輝

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-サチナリア-

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私の勤勉さと人の選定力を買われて神様の補佐に就いたのはいつだったでしょうか。

指名された時は大いに喜んだ気がします。

勿論表には出しませんでしたけど。

でもいざ神様と対面した時、喜んだことを後悔しました。

「よろしくの。サチナリア」

好々爺と呼べそうなお爺様が私が補佐する神様でした。

ご老体な風体のは別にいいです。

そういう神様も多くいると聞いてはいました。

逆に子供の姿の神様も並行次元の世界には居るというのも風の噂で聞いたこともありました。

でもがっかりしたのはそこではありませんでした。

私の人相判断がこの人では上手く行かないという警報を出していたということです。

まさか神様にそんな事はないと最初は自分を疑ったりもしました。

しかし正しかったのは人相判断の方でした。

「ぬおああああ、なんでじゃああああ」

何度目でしょうか、椅子から転げ落ちて頭を抱えてごろごろ転がる神様を見たのは。

神様の性格自体は悪くありませんでした。

補佐に就いた後に知りましたが、次元によっては神様からの扱いが酷いところもあるそうです。

場合によっては罵詈雑言を言われたり性的な嫌がらせを受けたりするとか。

運よく私が補佐する方はそのような事はしませんでした。

ただ、根本的に神としての運営力が欠落していました。

後に私が敬愛する神様の言葉を借りれば、思慮が足りない、でしょうか。

確かに最初のうちは飛躍的に信仰勢力を広げていました。

しかし広がりが進むにつれ各地で反抗勢力が台頭してきました。

それが魔族。

欲に弱い人々は彼らの誘惑に乗り、次々と信仰の手を離して行きました。

そこで神様が考えたのが魔族を倒す存在の確立。

勇者誕生です。

私も当時この処置に不満を持ちませんでした。

しかし今考えればこの場当たり的な対処がよくなかったのかもしれません。

最初の勇者の予期せぬ死。

魔族を淘汰したものの人同士での争い。

一強国と魔族の復活。

そして新生魔族による神の排除。

気付けば我々の勢力はわずかになっていました。

信仰の消滅は神の死を意味します。

つまり神様の消滅と同時に私達が生活する場所全てが消滅することになります。

一応並行次元への引越しをすれば私達自体の消滅は免れますが、出来ればそれはしたくありません。

神様もあの手この手を考えました。

並行次元、異世界からの魂を呼び寄せたり、私も色々過去の情報を調べたりもしました。

しかし決定的打開策は無く、ただ神様がころがるだけでした。

そしてなけなしの力で呼び出した最後の魂はというと。

「嫌ですよ勇者とか」

転生すら拒否されました。

もうここまで来ると清々しい気持ちになりました。

そういう気持ちで彼を見たからでしょうか。

人相判断が好感触を示したような気がしました。

以前私はこの直感を否定して失敗した経験があります。

今度は信じてみようと思いました。

「神様。一つ私から提案がございます」



ナガタ ソウイチロウ。

私が新しく仕え補佐する神様。

ソウと呼ばせてもらっています。

一見頼りない感じもしますが、常に考えを巡らし、何事にも全力で取り組もうとする姿はとても好感が持てます。

何より今度の神様は私と同じぐらいの若い外見です。

私の事をサチと略して呼ぶ事には最初抵抗感を覚えましたが、今は心地よく思えて来ました。

関係も対等となりました。

元は人なので人らしい生活を望まれたので私の家に招きました。

気付いたら女の喜びを教えてもらっていました。

色々と調べていた頃に男女の営みについて目にする事もありましたが、機会に恵まれてなかったので気に留めていませんでした。

今再びあれを読んだら別の考えや理解が出来たかもしれません。

彼と共に行動するようになって物事の考え方も変わって来たと思います。

ただ、ひとつ不満があるとするなら頑張りすぎてしまう事でしょうか。

神様となってから数日、私は彼を無理やり寝かして休ませる事にしました。

今は私の脚を枕に規則正しい寝息を立てています。

どういうわけか両手でお尻を掴まれている状態なのですが、不思議と彼なら嫌な気がしません。

今後も神様として前途多難だと思うので私がしっかり補佐したいと思います。

出来れば女性としてももっと求めてもらいたいとも思います。

そういえば神と天使で子を授かることはできるのでしょうか。

今度こっそり調べてみようと思います。
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