新人神様のまったり天界生活

源 玄輝

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子供達との交流

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先にミラが教室に入って子供達に話をしている。

俺とサチは廊下で紹介されるまで待っているが、こういうのは緊張する。

「今日は主神補佐官のサチナリア様がいらっしゃってます」

ミラがそういうと教室内が急にざわつき始める。

「サチナリア様どうぞ」

「ではソウ、先に行きます」

「うん」

そういってサチは中に入っていった。

サチが入ると雑談がピタリと止まり空気に緊張が走る。

「みなさんこんにちは」

「こんにちはー!」

サチの挨拶に一斉に返事をする子供達。元気があっていいね。

「そして今日はもう一人お客様がいらっしゃってますよ」

ミラがこっちを向く。あ、入っていいのね。

教室に入ると円形に置かれた背もたれのない椅子に座った子供達がこっちに興味の視線を送ってくる。

子供達から後ろに離れた場所には先生らしき大人もいる。こっちは畏怖かな、緊張した視線だ。

「あ!」

お?おぉ、アンがいる。

ミラに促されながら空いている椅子に座り子供達の方を向く。

「みんな、こんにちは」

「こんにちはー」

サチに倣って同じように挨拶するが、さすがに警戒してかサチの時ほど元気な挨拶はもらえなかった。

「さて、早速だがみんなに問題です。俺は誰でしょう」

子供達はもちろん、紹介しようと思ってたミラも驚いた表情でこっちをみている。

唯一例外だったのはアンぐらいか。サチまでこっちを見たしな。

「分かった人は手挙げて」

そういうとポツポツと手が挙がる。

アンは察して挙げずに笑いを堪えてる。いい子だ。

「じゃあ君」

「新しい先生!」

「先生かー。残念ながら違うんだ。そっちの君は?」

「学校長先生の子供?」

「それも違うな。ヒントはこっちのお姉ちゃんと関係があるぞ」

隣にいるサチを指差してヒントを出す。

そうすると手を挙げる子が増える。

「サチナリア様のしもべ!」

「し、しもべ!?」

俺とミラが驚き、サチとアンは噴出した。

「しもべに見える?」

「うん、サチナリア様よりあたまわるそうに見える」

むぅ、やっぱそう見えるのか。日々の精進がまだまだ足りてない証拠だな。

後ろの大人達が戦々恐々とした表情をしている。大丈夫、俺はそんな事じゃ怒らないから。

「そうかー。でも違うんだなぁ。そっちの子は?」

「えっと、サチナリア様の旦那様」

「旦那様!?」

今度はサチが驚いたな。

「あー、大体あってるけどちょっと違うかなー」

「ちょ」

サチが何か言いたげだが気にしない。

その後も色々回答が出たが正解には至ってない。

お兄さんはいいが、お父さんとかお爺ちゃんってのはどうなのさ。

「はい」

手を挙げる子が減ったところでアンが手を挙げた。ホント察しのいい子だね君。

「じゃあ、はい」

「神様」

その答えにアンと俺それぞれに視線が集中する。

「・・・正解!!」

そういうと一瞬空気が止まり。

「えーーーーーー!!」

教室中は大騒ぎになった。



「そんなわけで神をやってる。神様って呼ばれるよりこのお姉ちゃんと同じように名前で呼ばれる方が好きだから、みんなそうしてくれると嬉しい」

しばらく大騒ぎだった教室も教員達が必死に落ち着かせ、その後ミラに紹介してもらった。

うんうんと頷く子供達の視線は先ほどの警戒から興味という視線に変わった。

「今日は神様のお仕事について勉強しようと思います。お二人もよろしいですか?」

「うん、よろしく」

後はミラが上手く仕切ってやってくれそうだ。

ミラは情報館の天機人のようにパネルを上手く使い、神の仕事について紹介する。

と言っても具体的な例は挙げず、悪い事する子にお仕置きしたり、みんなが困った時に助けると言った漠然とした内容だ。

俺は否定も肯定もせず、子供達と一緒にミラの説明を聞いてた。

なるほどね、こういう教育をしていたからみんな最初俺に会った時にあんな反応をするんだな。

ただそれは最初のうちだけで、俺という人物を知った後は神と認識しつつもソウとして扱ってくれる。嬉しい事だ。

神の仕事についての説明が終わると鐘が再び鳴る。

「あら、もうこんな時間ですか。では今日の特別授業はここまでにしましょう」

「ありがとうございましたー」

子供達が頭を下げてくるのでついつい俺も下げてしまう。

「ソウ様とサチナリア様はこれでお帰りになられます」

「えー!」

お、嬉しい反応。

「と、子供達も言ってますのでもう少しお付き合い頂けますか?」

「うん、わかった」

「いつもこうなりますね、わざとですか?」

「うふふ、気のせいですよ」

ん?もしかして乗せられた?



「はぁ・・・はぁ・・・子供の体力尋常じゃない・・・」

座学の後は外に出て運動になったのだが、サチの提案で何故か俺は子供達に追われる目に。

相手は子供だし走る速度なら負けないと思っていたが、数という力に次第に追い詰められた。

捕まったのでそれで終わりかと思ったら服まで脱がされそうになって再び逃げる事に。

最終的にミラがギリギリのところで止めてくれて終了になった。

「おつかれさまです。相変わらず子供達は元気ですね」

参加しなかったサチは同じく参加しなかった子達と話してたようだ。

おのれ、元はと言えばサチが仕向けた事なのに。あ、水あんがと。

はー・・・しみわたる・・・。

「ソウ様、いかがでしたか?」

「あーうん、楽しかったよ」

息を整えながらミラに答える。

しんどかったが楽しかったのは確かだ。

子供達から元気を貰ったような感じは心地いいものだ。

「それはなによりです。またこうして子供達と遊んでいただけると助かります」

「うん。今度はもう少しルールを作ってからやろう」

「あら、結構やる気ですね」

「うむ、負けっぱなしはよくないからな。今度はサチや他の先生達にも参加してもらおう」

「え!?」

俺の発言にギョッとした顔で振り向かれたが知らん。次回は一緒に餌食になってもらおう。

「では、ソウ様とサチナリア様はこれで本当にお帰りになられます」

「えーーー!!」

おぉ、さっきより声が強い。嬉しい事だ。

「ソウ様、サチナリア様、本日はありがとうございました。またお会いできる時を楽しみにしております」

「はい、また近いうちに」

「今日はありがとな」

ミラに礼を言った後、サチと二人で少し離れてから子供達に振り向く。

「今度は負けないから頑張って勉強しとくんだぞ!」

「あはは、ソウ様も頑張ってねー!」

「またきてねー」

半分子供達に笑われながら俺とサチは転移で学校を後にした。



帰宅した俺達は風呂に入りながら今日の話をしている。

「へー、それじゃアンはあれから母親と上手くやれてるのか」

「そうみたいです。なんでも念を猛特訓して母親に勝ったらしいです」

「やるなぁ。将来有望だな」

「そうですね」

母親の方も上手く娘と付き合えるようになったようだな。一安心だ。

「そういえば一つ気になった事があるんだが」

「なんですか?」

「何でミラは風呂の事知ってたんだ?」

「あぁ、ヨルハネキシさんですよ。夫婦ですから話題に出ていたのでしょうね」

「え?あの二人夫婦なの?」

「えぇ。二人とも忙しい立場ですが仲は良いみたいです」

「へー・・・」

そういえばヨルハネキシと会った時も同じように握手されたっけ。

うーむ、夫婦して人の心を捉えるのが上手いのか。似たもの夫婦だな。

・・・夫婦か。

俺達は子供達にどうみえたんだろうな。

しもべだの親子だの頭悪そうだの散々な言われ方されたが。

「・・・?どうしました?」

「いや、もっと神らしい威厳を持った方がいいのかなって」

「うーん、確かにソウは無さ過ぎるので多少は必要だとは思いますが、威厳があるだけで事が上手く行くとは限らないのではないでしょうか」

「ほぅ。そう思う理由は?」

「神様の会合を思い出すとそういう人の方が少ないように感じます」

「・・・そういえばそうだな」

会合で出会った神達を思い浮かべる。

確かに威厳を感じる人は少なかった気がする。癖は強い連中ばかりだが。

「それにソウはソウですから」

「なんだそりゃ」

それ以上の回答は貰えず、サチは背中を預けてきた。

今のままでいいって事なのかな?よくわからん。

とりあえず今は目の前の事に集中しますかね。
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