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3話 ギルドへ

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 異世界召喚されて1時間半、空が赤くなりかけているくらいなので夕方5時くらいだろうか?トライデントの城門に到着した、門番とガルムさんが何やら話しているがここからでは聞こえない。
  門番さんが馬車内に居る俺の顔を見て頷き、仮入門証を貰う。

「城門を出入りする際は身分証明が必要なんです、今回コウガさんは迷い人として手続きしたので、2日間有効の仮入門証を持って役所に行って身分証明証を貰ってください。ギルドで冒険者登録して貰えるギルドカードも身分証になります」

 なるほど、身分証が必要なんだな、ギルドカードでも良いのなら冒険者登録してしまおう!獣人に出会う旅、いいね決めた!資金貯めて余裕出たら旅に出よう!でもそれだと魔術師一人じゃ大変だし仲間が欲しいな……
 冒険者やりつつ仲間を集めよう。

「分かりました、冒険者に興味があるのでギルドに向かおうと思います」

 ガルムさんが少し考えるような仕草をした、数秒考えた後手帳を確認して視線をこっちに向ける。

「そうですか、分かりました。ギルドはここから左に真っすぐ行った先にあります。それからカエデさん、今日から明後日までの3日間奴隷としてコウガさんに付き添い護衛をしなさい」
「えっ?あ、はい、わかりました」

 カエデさんがびっくりした顔でガルムさんを見た後こちらに視線を向ける、カエデさんの顔が若干赤い?耳を触って以来目が合うと少し顔を赤くなってるような気がする、何故か尻尾がブンブンと振られている。
 ってかいいの!?まだまだこの世界で知らないこと沢山ありそうだし獣人好きだから嬉しいけど、ほんとに!?もふもふしていいですか?

「え、いいんですか……?ここまでしてもらって……」
「えぇ、これも何かの縁です。冒険者になり初めは大変でしょうから、それにカエデは戦闘経験もあり薬草等にも詳しいのです、お役に立ててください」

 何か企んでそうな気がするが、メリットの方が多そうなので、お言葉に甘えてカエデさんを借りることにしよう。
  カエデさんが居る内にこの世界に慣れなければ……
 それに戦闘経験あって採集する際の素材知識があるのはありがたい、そしてなによりもふもふがしたい。

「今から3日間なので、明後日の日が沈む前にインカース奴隷商館までお越しください」
「分かりました、ありがとうございます!カエデさんよろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いしますご主人様!」

 カエデさんがペコリと頭を下げて挨拶してくれる。やはりカエデさんは可愛い、獣人っていいな……もふもふで、俺も獣人になれたらどれだけ良いか……

「では、わたくしたちはこれで。失礼いたします」
「本当にありがとうございました!」

 ガルムさん達が商館の方に向いて真っすぐ馬車を歩かせていく、あの先に見えるでかい建物が奴隷商館らしい、明後日にまた来ることになるので覚えておく。

「さて、俺たちはギルドに行きましょうか」
「あっ、その前にご主人様、私に対してさん付けと敬語は不要ですよ?私は16歳ですけど雰囲気的にコウガさんの方が年上ですよね?それに奴隷相手に敬語なのも変なので……」

 そういや歳を聞いていなかった、どちらかというと敬語の方が話しやすいんだよな……よし!

「それならこうしましょう、俺はカエデさんを奴隷として見ていないので、これからは友人及び仲間としてお互い敬語なしで行きましょう!」
「え……そ、それはだめですよ!ご主人様はそれで構いませんが、奴隷と見られていないとしても奴隷なのは変わりないので止めるわけには……」

 やはり食い下がってくるよな…それなら逆に奴隷の立場を利用してしまおう。

「それなら……!主人が命じる!カエデはこれより俺に対して敬語ではなくありのまま自然体で接する事を命じる!!!!」
「えっ……えええええええええええ!?ちょっ、ちょっと待ってください!そんなのありですか!?」
「ありのあり、大ありだ!!!!」
「めちゃくちゃですね……わかった。ただ奴隷って事を完全に取り払うことは出来ないからご主人様とだけ呼ばせて……お願い」
「んーまぁいいか……分かった、じゃよろしくなカエデ」
「よろしく、ご主人様」

 呆れてため息つくカエデ、しかし最後のよろしくの時に少し笑ってくれたのでよしとする、この3日で仲良くなって思い出を残そう、奴隷商館に戻って誰かに買われたらもう出会えなくなるかもしれないから……
 奴隷っていくらするんだろうか……?きっと高いんだろうなぁ……金貨1枚で買えたら嬉しいけど無理そうだよな……
 ん?今思えば前世でご近所さんだった梨沙さんの愛犬もかえでだな、同じ名前なのって何だか運命を感じるね。

「あー!もう変に考えるのやめた!!ご主人様がこう言ってくれてるんだし、それなら奴隷とか関係なくこの3日間楽しむわよ!ご主人様!早く行こっ!!」
「そうだな、行こうカエデ!」

 元気が戻ったみたいだ、こうして見てるとカエデは笑っている方が良いね!カエデに手を引っ張られながらギルドを目指す、不意に手を握られたのでちょっとドキッとしてしまう。
 ギルドに向かって一緒に走っていると機械音に近いような声が頭の中に聞こえてきた。

『条件の一部がクリアされたのでスキル??を取得しました』

「んん??なんだこれ?」
「えっ、どうしたのご主人様?」
「いや、名前の分からないスキルを取得したみたいでな……」
「名前の分からないスキル?なによそれ……そんなの聞いたことないわよ?」

 歩きながらステータスを確認してみる、何なんだろうこのスキル……?名前が?になってるし、発動条件もわからない……カエデも聞いたことないみたいだし不安だな……
 一部しかクリアしてないから名前不明なのだとしたら、条件クリアしていくと詳細が分かるんだろうな多分……まぁ発動条件が分からない以上発動する事もないだろうし、分かるようになるまで様子見しておこう。

「まぁ発動しなければ害はないだろうし、様子見するよ」
「そうね、触らぬ神に祟りなしって言葉もあるしそれでいいと思うわ」

 そのことわざこの世界にもあるんだな、時間ある時に本とか読んで向こうとこっちの違いとか調べてみるのもいいかもしれないな、可能ならカエデにも協力してもらおう。

「ご主人様!ギルドが見えてきたわよ!」
「お、これがギルドか……でかいな」

 様々な種族の人がギルドを出入りしている、夕方なのでほとんど依頼終了し帰るところなのだろう、外から中を覗くとマッチョの人族、コートに身を包んだエルフ、熊みたいな体系の熊人族、猫耳が付いてる猫人族と種族の隔たりなくわいわいしている。
 凄い……凄いぞ!!あの猫耳やばい、あの熊の体毛とかどんな感触なんだろう!?今通った小さい人ってドワーフか!?すげーーーー!すげーーーーー!

「………ご主人様の獣人のもふもふ好きなのを知ってるから興奮するのはわかるけど、そろそろやることやらないと宿取る時間なくなっちゃうわよ?」
「はっ!?ごめんつい……」
「はぁ……いいよ、あそこの窓口空いてるっぽいし行きましょ」

 受付まで歩いて行くとこちらに気づいたのか受付のお姉さんがにこっと笑みを浮かべて話しかけてきた。
 茶髪のロングで緑の制服を着ていて、眼鏡をかけているのも相まって知的そうで美しい容姿だ、胸付近に付けているネームプレートが目に入る、エリカと書かれていた。

「冒険者ギルドへようこそ!ご用件をお伺いします」
「ギルドカード発行をお願いします」
「かしこまりました、もう一方はよろしいのでしょうか?」
「私は持ってるけど無くなったから再発行で」
「かしこまりました、再発行なら1滴の血を貰って情報確認してからお渡しします、新規さんはこちらの用紙に必要事項を記入してもらって契約の血を1滴染み込ませてもらったら、その血を元にこちらで犯罪歴等を確認させてもらいます、問題なければスキルの鑑定をさせてもらってランク制定して登録完了となります。ギルドに関する資料をお渡しするので必ず確認してください、知らないで違反すれば登録抹消や犯罪奴隷落ちもあり得るので注意してください」

 書きながら聞いてたけど違反に対する処置がなかなか重そうだな、しっかり読んでおこう。
  聞いたところ犯罪を犯せば、犯罪履歴と血を結び付けて血を調べたらすぐ分かるようになってるそうだ。

「2人共問題ないのが確認取れましたので、コウガさんのスキルを確認させていただきます、これは誰にも漏らさないのでご安心ください。魔物と対峙可能なスキルを所持しているならFランク、持っていないならGランクスタートになります」
「わかりました」

 ギルド職員が水晶?的な鑑定道具を持ってきたので手をかざす、俺のスキルが表示される。

「良いスキルお持ちですね、空間魔法は珍しいです。商人が欲しがりそうですね」

 職員がこそっと周りに聞こえないように話してくれる。

「戦闘スキルをお持ちなのでFランクからは確定ですね、しかし……この??スキルな一体?」

 職員が首を傾げる。

「ついさっき覚えたんです、よくわからないので放置してますが」
「今までで見たことがありません、一応注意された方がよろしいかと。登録自体は大丈夫なのでご安心ください、登録まで数分掛かるのでお待ちを」
「分かりました」

 職員さんが窓口奥側の部屋行き、数分待っていると職員さんが戻ってきた。

「カード発行致しました。こちらがカードでこちらがギルド資料です」
「ありがとうございます」

 さて、カード発行も済んだので宿を探すとしよう。幸いお金はあるから暫くは大丈夫かな?けど余裕はないから明日からどんどん依頼やっていくか。

「明日から依頼やっていこうと思うんだが、カエデもそれでいいか?」
「うん!護衛だから何処にでも付いていくよー!」
「ありがとう、それじゃ宿探そうか」
「宿ならさっき通った道にあったから行ってみようよ!」

 あんな短時間で宿を見つけているとは……意識の違いなのか狼人族の目がいいのかわからないがカエデ出来る子だ!!

「あんな短時間で凄いな、見習わなきゃならんな」

 カエデが見つけた宿に着いて部屋が空いてるか確認してみる、空きが1部屋しか無い為仕方なく一部屋に5泊分銀貨20枚払って部屋に案内してもらう。

「ごめん、一部屋になってしまった」
「いや、私は実際には奴隷だから気にしないよ」
「それでも一応男女だし……俺は床で寝るよ」
「駄目よ!それなら私が床で寝るよ!ご主人様はちゃんとベッドで寝て!」
「いやしかし……」
「もう!それなら添い寝でいいじゃない!普通に寝るだけなら嫌じゃないよ……?まぁ奴隷だから完全拒否は出来ないけどね……」
「言い合っても仕方ないか……手は出さないから一緒に寝ようか……」
「分かればいいのよ」

 カエデの顔が赤いように感じる、仕方なくとはいえ嫌がってはないみたいだし……背を向けて寝たら大丈夫だよね。
 言い合いしているとお互いのお腹からぐぅぅと音が鳴る。

「……ははっ、言い合いしてたらお腹空いちゃったみたいだ、晩御飯食べに食堂行こうか」
「そ、そうね!お腹すいたー!」

 晩御飯に肉のソテーと野菜スープを頼んだ、日本と比べても劣らないくらい美味い!ただ米はないみたいだ……残念だな。
 この肉って何の肉だろう?異世界だし、ボアとかの肉なのかな?満足出来る食事にこれから行く所のご飯にも期待が膨らむ。

「さ、湯浴みして寝ましょうか、ご主人様の背中拭いてあげるからじっとしててね」
「そ、そこまでしなくても……」
「これが奴隷としての務めだから、気にしないで。あと私が体拭く時は向こう向いといてくれると嬉しいな……」

 背中拭いて貰ってるので見えないが、恐らく恥ずかしいんだろうな、声でわかってしまう。

「わ……わかった、終わったら声かけてくれ」
「了解、ほんとに見ないでね!?」

 お互いに湯浴みを終え、1つのベッドに二人で入り目を瞑る。
  俺は転生して間もないので疲れていたのかすぐに寝てしまった……


 対するカエデはどうやらすぐには寝れなかったようで……??
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