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85話 次の試合に向けて

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 カエデとシェミィに癒されている間にも試合は進み、やはり騎士団の3名が勝ち上がって俺達の対戦相手は騎士団に決まった。
 メイランの鬱憤晴らしも終了して戻って来ていた。

「やっぱり勝ち上がってきたっすね」
「だな……来て欲しくなかったが、仕方ない」

 もふもふっ。

「パパ、あの3人の対策考えないと」
「そうだな……」

 もみもみ、もふもふっ。

「コウガ様」
「……ん?何だ?」

 もみもみ、もみもみ……

「……カエデが茹で上がりそうなくらいに顔を真っ赤にしながら、声が出そうなのを我慢してるわよ?」
「……あ、やり過ぎたか」

 パッと尻尾から手を離して解放する。

「……ふぁっ、はぁ……はぁ……」

 椅子の背もたれに身体を預けて、肩から息をするくらいに出来上がったカエデ、身体が軽くピクンピクンとしている気がする。
 さすがDEXがAだ、尻尾を撫でたり揉んだりするだけでカエデが蕩けてしまった。
 本来の姿状態のDEXのA+でないのでまだマシだとは思うが……Aでも充分な火力?をしている。
 メイランがカエデに近付いて耳打ちする。

「お疲れ様カエデ……ちょっとコウガ様連れていくから、暫く休んでなさい……」
「んんっ、ふぁい……」

 メイランの息がかかりピクンとさせたカエデだったが、内容は聞き取れたのか、手を小さくヒラヒラとさせていた。

「コウガ様とソルト、ちょっと外へ行くわよ」
「分かった。ミツキ、また連絡頼んでいいか?」
「分かりました、次の試合まで後3試合なので、案外早い可能性ありますよ?」
「了解、それまでに何とかするよ。セシル、少しカエデを頼む」
「了解した」

 カエデの事はセシルに頼み、俺とメイランとソルトで外に出て作戦を立てる。
 ちなみにシェミィは俺の影に潜んで周りを警戒してくれている、影からでも周囲の様子は見えているらしい。

「さて……あの3人をどうやって倒しにかかる?」
「そうね……ゴリスターはまず1体1にしてはダメね、タイマンでは勝ち目が無いわ」
「そうっすね、避け続けるだけならまだマシっすけど……まともに打ち合えば100%打ち負けるっすね」

 あのゴリスターは見た目から分かるように超重量級のパワー型だ。
 俺のアブソリュートフローズンでも少しの間は持ち堪えたが、奥義により打ち砕かれるくらいだ……あれはまともに打ち合う訳にはいかない。
 それに、魔力を圧縮させずに上級魔法を使うと、魔力消費量が凄くてすぐガス欠になるからな……
 多分、まだ上級を使うくらいのレベルや魔力量に至っていないのだろう、魔力圧縮という裏技で発動させているに過ぎないのだ。

「ご主人、ゴリスターの対処どうするっすか?ご主人の氷で数秒でも足止めするっすか?」
「んー……アイスウォールでは間違いなく足止めすら出来ない、アブソリュートフローズンなら暫くは持ち堪えるが……あれは魔力練り上げないと発動した瞬間にガス欠になるから使えないぞ」
「まぁ、そうっすね……だとしても、避け続ける余裕なんてないと思うっすよ……ノシュタールやオルガーからの妨害だってあると思うっすから」

 確かに、1対1ならともかく3対3だ……1人だけ相手にし続ける訳にはいかない、周りからの妨害もあると見た方がいい。

「いや、ガス欠なら回避方法はあるんじゃない?」
「え?」

 メイランがそう言いながら俺に近付いてくる、そして俺の背後に周り影の近くに座り込む。

「シェミィ、いるんでしょ?」
「ん、居るよ」

 シェミィが影からニュッと出てくる。

「確か、今コウガ様と魔力が繋がってるのよね?」
「んっ」
「なら、シェミィからの魔力を借りればガス欠問題は多少解決じゃない?」
「ん、確かに私の魔力を使えば1回使ったくらいではガス欠にはならないと思う、でも……相手は3人、ガス欠を免れたとして、少なくなった魔力の中であの3人に勝てるとでも?それに、魔力切れでパパの変身が解かれたらどうするつもり?」
「そ、それは……」

 ごもっともだ、普段使うスキルには魔力を使う物が多い。
 俺の変身スキル、実は魔力消費がほとんど無いんだよな、厳密には微弱にはあるのだが自己魔力回復で充分なのだ、シェミィの分も入れても問題ないレベルに。
 だから魔力切れで変身は解けてしまうが、変身が解かれるには完全に魔力をすっからかんにする必要がある。
 しかしながら、風刃や魔法には魔力を使う、そしてカエデの技達も魔力を消費させる技が多いのだ。
 なので、アブソリュートフローズンを使うと戦いに使う魔力が足りなくなってくる。

「そうだな、シェミィの言う通り魔力が足りなくなる、だからアブソリュートフローズンは魔力を練り上げる時間がない限り、暫く封印だ」
「なるほど……ならゴリスターの攻撃は避け続けるしか無いわね……」

 きついが、そうするしかないだろう。

「後はノシュタールとオルガーっすけど……オルガーは守護神で、試合を見る感じ積極的に来る感じではないっすね。ノシュタールは近距離遠距離、近接攻撃に魔法とバランスよく戦えて安定して強い部分があるっす、この2人をどう崩すか考えるっすよ」
「だな、多分ノシュタールなら俺のアイスウォールでも対処は可能かもしれない、何とか崩してみよう……」

 ノシュタールが本気を出したらどうなるかまでは分からないが、アイスウォールが有効範囲ならどうにか戦えるのでは?と考えた。
 試合では火魔法も使っていたので、氷の対処はされるだろうが……俺には土や水魔法がある、火を抑える為の有利属性を押し付けようと思う。

「なら、自分はタンクのオルガーに何とか喰らいついて、防御を崩してみるっす、タンクで移動スピードもあまり無いみたいっすから、邪魔を入れられないくらいにちょっかいかけつつ、2人をサポートに回るっす」
「……なら必然と私はゴリスター相手じゃない、まぁ……飛べるから避けるには最適かもしれないけど」

 どうやって戦っていくか、少しずつ決まってきた。
 しかし……結局1対1になっている事に気付いた。

「……ん?結局1対1で相手する流れになってないか?」
「でも、仕方ないと思うわよ……私達にはタンクという引き付け役がいないのだから、ティナさん達みたいな戦い方は出来ないわ」
「そうだな……仕方ないか」

 これ以上考えても仕方ないので、作戦タイムもこれで終了だ。
 この戦いの鍵は、俺とソルトがノシュタールとオルガーに喰らいついていけるかが鍵になる。
 ソルトと協力してどちらかでも打ち破る事が出来れば数の有利へと変わっていく。

「よし、頑張ろうか」
「そうね、若干不安だけどなるようにしかならないわね」
「うっす!頑張るっす!」

 根本的な解決は一切していないが、仕方ない。
 相手との実力差が違う、だからこそ自分達ができる事をやる……それだけだ。
 ミツキから連絡はないので、まだ試合まで時間があると思うので応援席へ戻ったのだった。 
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