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97話 クロエからの修行提案

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 次の日の朝早く、俺とメイランが同時くらいに目が覚めたのだが、セシルとシェミィの姿がなかった。
 窓から裏庭が見えるので覗いてみると、セシルとシェミィとクロエが、裏庭で模擬戦風に身体を動かしていた。
 シェミィは人になったのは最近で、測定の時も何を欲しがったのか見てなかったのでどうやって戦うのか分からなかったが、俺やクロエと同じくナイフを使うようだ。

「頑張ってるな」
「そうね……私も、頑張らないとね」

 メイランがスマフォンで騎士団へと連絡をするらしいので、一度窓から離れてメイランの傍に移動した。
 番号は昨日にミツキから聞いているので、間違いないか確認してから電話を掛けた。

『おはよう』
「おはよう、メイランよ。昨日はごめんなさい」
『気にしないでいいよ、お礼なら君の仲間に言うといいさ。連絡をくれたって事は、どうするのかは決まったのかい?』
「……ええ、私はお母さんと一族を助けに行くわ、ただ1つだけ約束して欲しい事があるの」
『なんだい?』
「お母さんと一族は殺さないで、お願い」
『……なるほど、それに関しては善処するが……100%とは言えない、もしまた何処かに攻めてきて大きい被害になるのなら、騎士団としてはそれを食い止めなければならない、分かるね?』
「それは……はい」
『でも、我々としても無駄な殺生はしたくない、魔物のドラゴンではなく、ドラゴン族の人なのだと2人のお陰で分かったからね』
「大体はエリスタのお陰ね……なら、なるべくは殺生しない方面でお願いするわ……。それで、騎士団として動き出すのはいつになるのかしら?」
『まだガリスタ国に到着していないので分かりかねるが……報告入れてすぐは無いだろうね。報告入れてすぐに準備をしたとしても……長い遠征になるから、最低でも3~4日は掛かるだろう』
「3~4日、ね」
『そうだね、君達もこの件に関わっていくのであれば、連携は密にした方がいいと思うんだ、だから良ければだが……3日以内にガリスタ国に来て貰えないか?無理ならこれで連絡取り合うでも構わないよ』
「ガリスタ国に?……そうね、取り敢えずコウガ様と相談してから折り返すわ」
『分かった、頼むよ』

 プツッとの音と共に通話が終了した。

「……はぁ」

 やはり、親や一族の話になると精神的にきついのだろう、少し深い溜息を吐いた。

「お疲れ様メイラン」
「ありがとうコウガ様」

 メイランが騎士団に連絡する際やドラゴン達の話をする際は、俺がなるべく傍に居ることにしている。
 笑顔が少し戻ったといっても、解決した訳ではないので不安定なままなのは変わらない、なるべく俺が側にいて安心させる形にしたい。

「コウガ様、騎士団からガリスタ国に来ないか?と言っていたわ」
「ガリスタ国に?」
「ええ、この件に関わるのであれば連携は密に取れた方がいい、と」
「……なるほどな、確かにそれはそうだな」
「無理ならこのスマフォンで連絡を取り合うでも構わないらしいけれど……どうする?」
「んー……ミツキに武器と防具頼んでるからなぁ、素材集めがあるのなら手伝いたかったんだが……」

 専用武器を作ってもらうのに、何もしない訳にはいかないんだよな。
 騎士団が動き出すにしても、最低3日掛かるのであれば、ミツキの作る装備は2日で出来るのと移動を1日掛かっても充分間に合う。

「3日前後を目安にガリスタ国へ向かうって事にしようか、装備が出来上がり次第って事で」
「そうね、向こうも準備するのであればこちらだって準備がある、って言えるわね」
「そうだな、その連絡は俺からしよう」
「……ごめんなさい、お願いするわ」

 俺は自分のスマフォンから騎士団に渡してあるスマフォンに電話を掛けて話した内容を伝えた。

『なるほどね、分かった。こちらの動きが分かればまた連絡するようにしよう』
「ありがとうございます」
『きっと厳しい戦いになる、準備を怠らないように頼むよ。まぁミツキ君なら大丈夫だと思うけどね』
「ですね、自分もミツキの腕を信じてますから」
『こちらもだよ、ではまた』
「はい」

 ブツッ
 通話が切れる、やはり手軽な通話手段があるのは有難いな、ミツキに感謝せねば。

「さて、これからどうするか決めたし朝食の手伝いしに行くか、裏庭で頑張ってる3人の為にもな」
「そうね、それとミツキさんにも素材の件話さないとね」
「だな」

 朝食の準備しているであろうキッチンへと向かう。
 俺達がキッチンへ歩いてくるのに、いち早く気付くヴィーネ。

「おはようございます、コウガ様、メイラン様」
「おはようヴィーネ、朝食作るのに何か手伝う事はあるか?」
「いえ、もう朝食は作り終わっているので大丈夫です。そうですね……ならば、裏庭に居る3人とミツキ様、カエデ様とソルト様に食事にしましょうと伝えてきて貰えますか?」
「分かった、俺がミツキの所とカエデ達の所に行くから、メイランは3人を頼めるか?」
「分かったわ」

 俺はミツキが居る錬金室に向かった。
 コンコンとノックしてからガチャリとドアを開ける。

「ん……?」

 静かだった、ミツキは居ないのか?と思ったのだが電気はついている、そして作業台の上には素材や作りかけの武器のパーツが結構な数置いてあった、ナイフの柄に刃……胸当てプレートに、篭手の一部か……?
 ドアの死角になっている所に顔を覗かせてみると、ミツキが座ったまま眠っているのが見えた。

「……」

 もしかして、昨日測定してから寝ずに作業していたのか……?

「あぁ、やっぱりですね」

 後ろから声がしたので振り向いて見ると、ヴィーネが薄手の掛け布団を持ってきていた。

「もしかして……寝ずに錬金を?」
「はい、ミツキ様はやると決めたらギリギリまでやるタイプですので、こういう事は今までにも何度も……日常的にあるのですよ」
「そ、そうなのか……」

 ヴィーネはミツキの寝ている所に掛け布団をそっと掛ける。

「さて、食事に致しましょうか、カエデ様とソルト様もお願いしますね」
「……分かった」

 ヴィーネは錬金室を後にし歩いていく。
 ミツキ、俺達の為にこんな全力で取り組んでくれているんだな……
 助けになりたい、現場へは行けないから……と。

「……」

 俺も準備期間で何か出来る事がある筈だ、考えなければな。

 メイランが3人を呼んでくれたので、残りのカエデとソルトを起こして、これから食事だと思ったのだが……

「あれ、ティナとツバキとレインは?」
「3人は素材集めへ、日が昇る前にお出掛けになりました」
「えっ」

 ティナとツバキにレインまで……?
 そうか、だからもう朝食は既に出来ていたのか!

「コウガ様、どうする?」
「……そうだな」

 メイランが、先程話していた素材集めが出来ないと分かったので俺にどうするか聞いてきた。

「?何かお困りで?」
「いや、折角装備作ってもらうのだから、自分達でも素材集めした方がいいよなと考えていた物だからさ」
「なるほど、ミツキ様が言うには素材量も多くないので大丈夫だと話しておられましたが……」
「なるほど、どうするかな」

 この空いた時間をどうすれば良いか悩んでいると……

「なら、私の特訓……みんなで受けてみる?」

 そう切り出したのはクロエだった。
 そうだ、カエデとシェミィにあれだけの戦闘能力を仕込んだのはクロエだ……ならば、クロエの修行で自分を見つめ直して鍛えられるかも知れない。

「良いのか?」
「ん、問題ない」
「……なら頼む、俺達をあの男に負けないくらいになるまで鍛えてくれ」
「任せて、まずはしっかりご飯を食べて体力付けよう」
「だな、食うぞ!」

 俺達はしっかり朝食を取って全員で裏庭へと向かう。
 カエデとシェミィをあそこまで鍛えたクロエの指導……良い機会だ、しっかりと正念入れて鍛えよう。
 俺は、そう誓った。 
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