橘言

綿入しずる

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 橘言きつげんという言葉があります。嘘話のやけに美しいの、出来がよいのを言います。
 先の御代にタチバナという官人がいて、声が美しいと言われていたのが上まで聞こえ、金風の宴にて御前で詩を吟じる名誉に浴した。その場で詩のついで面白い話をせよと請われて語ったものが帝のお気に召し、後にも寵愛を賜るに至った。
 しかし実は、そのときの話は作り話、出任せ、その場凌ぎの思いつきでしかなかったのだ、という話。それから、作り話も出来が良ければ人の、帝の感心をも得るものだ……と言うようになったのが、タチバナの言葉ということで、橘言。
 さてそれはどのような話だったか。出来が良い話だったというのも実は後から言われるようになったことです。帝がお褒めになったのだからそうであろうと。
 ほんとうは、大した出来の話ではなかった。
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