翡翠の環−ご主人様の枕ちゃん

綿入しずる

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Ⅱ‐回青の園

服ⅱ*

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 主人の手が俺の手を上から掴む。胸板に押しつけられる。腕輪を繋いだ鎖がさらと揺れた。
「触れて構わん。誘うのも仕事の内だ。しなだれかかって色目でもなんでも使え」
 ああそうか、性奴隷は我慢するのではなく誘わないといけないのか。色目と言われても困ってしまうが。
 許可にぺたりと胸に触れてみるのは正しく色気がない、とさすがの俺でも思う。しなだれかかって、と言われたとおりに胸に凭れてみて手を添える。見ないようにして過ごしていた夜会の景色を思い出す。
 他の奴隷はたしか、こう。身を預けるようにくっついて客たちに媚びて触れてみせた。主人が俺にするように、まさぐって柔らかく肉の形を辿ってみる。握る手が導くように腹へと撫で下ろす。
 主人の体は温かくて、結構逞しい。いつも俺を軽々抱えてしまうだけはある。
「っふ、」
 触るほうに集中していたら、空いた手がまた脇腹に進んできて身が縮んだ。文句を言いたい気分で見遣ると楽しげな光を宿した金色と目が合う。
「どうした、続けろ。お前も男なら触れてほしい場所は分かるだろう」
「はい……」
 主人の手がより下、布の張ったところに俺の手を連れていく。おずおずと触れるとやはり硬くなっていて、初めて触れる他人の物に緊張する。
 上から擦って、形を確かめるようにしていると主人の手が離れた。不安になって窺うがそのまま促す視線に努めて手を動かす。
「風呂と同じだ。脱がせて世話をするのだと思え」
 囁く声は淡々としているのにやけに響いて――酔いそうだ。ふ、と息を呑んでその指示に従い、股引の紐を解いて緩める。
「失礼致します」
 浴室での作法は覚えた。そう言って服を脱がせたり、水をかけたり洗う為に触れたりする。勿論丁寧さは段違いだけど、動きはまあ自分を洗うときと同じだ。ならこれの触れ方はきっと、自慰と同じ。
 考えながら前を緩めて下着をずらし、勃ち上がった主人の陰茎を取り出す。熱くて、肌の色と同じで自分の物よりも色が濃くて、手の中にあるとやけに大きく、こんな物がいつも体に入っているのだと改めて突きつけられるようだ。入れられたときのことを思い出して股のあたりが疼いた。
 そっと掴んで、ぎこちなく上下に擦る。鎖が揺れてちらちらと光る。
 自分のときと同じだと思ったのに、早速勝手が違う。大きさもそうだし、自分の物よりずっと触っていてどきどきする。自分には触っていないのに、また息が上がってくるように錯覚する。
 ややあって、体を主人の側へと引き寄せられた。姿勢がなっていないと窘められたようだ。背筋を伸ばすいつもとは逆にもう一度凭れて、空いた左手ではさっきのように胸を擦る。触れているのは俺の側なのに、すごく落ち着かなくてつい足を擦り合わせてしまう――と、短い裾が捲れているのに気づいて慌てて直した。主人の手がからかうように腿を撫でて裾の中に入り込む。長い指が腰骨をくすぐっていく。
 耐えて、手を動かし続ける。痛くならないようになるべく柔く手を使って、気持ちいいだろうかと表情を窺うとまた目が合った。ずっと見られているみたいだ。
「ふ、っんん……」
 近づく顔に見惚れる間に接吻されて、開いた口に舌が捻じ込まれる。深い口づけに頭が痺れた。手の中の物が熱く脈打っているのを感じて身震いする。中を浚われて、息を継ぐ唇を噛まれるとそれも気持ちいい
 手が止まっている、と気づいて動きを再開する。なんとなく反応はしているが――はたしてこれで合っているのだろうかと不安になる。なんだか全然気持ちよさそうじゃない。
 自分を慰めるときのように射精するまで扱くのを繰り返せばいいだろうか。それとも、
「あ、の、口でも、しますか」
 夜会の奴隷たちのようにそうしてみるべきなのか。手よりそっちのほうが気持ちいいだろうか。
 繰り返される口づけの中、乱れる息を誤魔化しながら問うと主人が動きを止めた。覗きこんでくる金の瞳が綺麗だ。
 気づけば顔に上がってきた指が、品定めするように口の形を辿った。
「……やってみるか? 床に下りろ」
「はい」
 よろめきながら床に下ろされ主人の足の間に入る。膝に少しざらつく毛織の敷物の感触がする。未だに見下ろされると少し怖いが、今日はそれよりも近づいた陰茎に、これを今度は口にと思うと身が竦んだ。
 ああでも、嫌じゃない。最初のときのような恐怖や嫌悪はなくて、ただの緊張だ。主人が頭を撫でてくるからなおさらに嫌な気分じゃない。
 この人の為なら。そう思う。
 さっきのように陰茎を掴みなおして、顔を寄せる。どういう風にしたらいいんだろう。夜会でやっていたのはよく見ていなかった。見ていられなかった。迷う間に声が降ってくる。
「先だけでいい、舐めろ」
 言いつけに頷いて――手を導かれたように頭を引き寄せられて、主人の股座へと口づける。血の色の透ける柔らかいところを舐めてみる。
 人の肌の味、だろうか。主人の匂いがする。繰り返して舌を動かし、手も再び動かすとじわと滲むものがあって塩辛い感じがする。妙な味だが、やっと主人が気持ちよく感じているのかもしれない手応えを得られて安堵した。このまま。
 舐めながら擦り、擦りながら舐め、ぎこちなさは変わらないが多少ましになってきたんだと思う。懸命に舐めていると先走りと俺の唾液が混ざって水気が増して、滑りがよくなった。
 もっと感じて満足してほしくて息を整えた口に先端を咥える。舌を擦りつけ手と共に頭を動かしていると、頭に載った手が撫でて褒めてくれる。ぼうっとしてくるような、胸がきゅと締まるような、落ち着かない心地がする。揺れそうな腰を押し留めて動き続ける。
 全部はとても入りきらないけれど、もっと、と頑張って口を使った。手も舌も疲れてきたけど我慢して同じ動きを繰り返し、溢れそうな物を飲みこみながら愛撫する。
「こぼすなよ」
「っん……」
 どれだけそれを続けたか、不意の声と共に頭を引き寄せられる。少し深く咥えた物が口の中で跳ねて、擦りつけた舌に精液が吐き出された。また、苦いような独特の味が広がって眉が寄る。
 よかった。できた、多分。
「ああ、いい子だ」
 手を解かれて、主人が陰茎を引き抜いた後。溢すなと命令されていたから意識して口を閉じて――吐き出すわけにもいかないと、ごくん、と喉を鳴らして無理矢理飲みこむ。息を整える間に頭を撫でられて口元に盃が寄せられた。
 匂いは残っているものの中身は酒じゃなくて水になっていた。飲んでもまだ喉に絡む感じがして、吐いた息もなんとなく名残があるけど……今の俺はそれにも疼いた。
 尻を使われることにすっかり慣れてしまった体は、主人の物を咥えて奉仕したことでその快感を連想し興奮したらしい。薄っぺらな短い服の裾が捲れ上がってしまっているのをどうにか隠そうと、さりげなく主人の側に身を傾けるが。
「さて、そのまま酌に戻りたくなければ、足を開いて慈悲をくださいと請え」
 涼しい口振りで言われてしまう。何でも見通されている。
 恥ずかしさを押し殺して、言われるままに身を引き足を開いた。さっきまで触れていた物とは違う粗末な物が紗の下で上向いているのを主人の目に晒す。それだけで反応してしまってぴくりと揺れたのに顔が熱くなる。
「どうか慈悲を……抱いてください、ご主人様」
 言葉にすると洗ってきた尻がひくついたのがもっと恥ずかしい。でも、この人に使ってほしくて堪らない。
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