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第69話 タナゴ、その限りない魅力
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翌日の火曜日も、放課後に文化祭の打ち合わせが行われた。
「うふふふっ。タナゴ釣り紹介の原稿を書いてきましたよっ。読んでください!」
「おおっ、やる気あるじゃない。いいわね」
「読みたい」
「ちゃんと書けているんでしょうね?」
「おれにも見せて」
西湖は真っ先に美沙希に原稿を渡した。
他のメンバーはそれをのぞき込んだ。
『タナゴ、その限りない魅力』
タナゴは素敵なんです。美しくてカワイイです。すべての魚の中で1番キレイです。誰がなんと言っても最高の魚です、絶対。
小さくてカワイイです。平均すると体長は5センチぐらいですね。銀色に輝く鱗がキレイです。同じ大きさの小ブナよりも輝きはかなり上ですね。オーラがちがいます。
春から初夏にかけての繁殖期には、雄のタナゴは婚姻色を帯びて、天国の魚かと思うほど美しくなります。魚体の一部が赤や緑や青に発色します。虹色に見えるタナゴもいます。すごくキレイ! ほんっとうにキレイ!
雌は産卵管を伸ばします。ちょっとエロいです。そこがまた魅力なんです。タナゴ、ぞくぞくするう!
釣りも素敵なんですよ。
タナゴは世界で最小の釣り対象魚なんです。日本独自の文化があるんです。漆塗りのタナゴの和竿とか。この釣りは江戸時代に発祥したと言われています。長い歴史があるんです。
すごく繊細な竿を使い、すごく繊細な仕掛けを結んで、すごく繊細なアタリを見極めて釣ります。親ウキの下に極小のイトウキがいくつかついていて、イトウキの変化を見て釣るんです。その繊細さは世界に類を見ないと思います。楽しいよ!
釣ったタナゴは飼育してみてください。可愛くてキレイなタナゴといっしょに暮らすとしあわせになれます。意外と簡単に飼えるんですよ。
みなさん、タナゴ釣りをして、ハッピーになりましょう! オススメ!
「これはすごい文章。タナゴ愛にあふれてる!」
「ちょっと愛があふれすぎているわね……」
「駄文でしょ、これ。書き直してよ!」
「いや、1周回って名文なんじゃないか?」
美沙希は絶賛し、真央は苦笑し、カズミは批難し、佐藤は複雑な表情で賞賛した。
「書き直す必要を認めませんっ。美沙希ちゃんが褒めてくれました。このまま模造紙に清書してください!」
「まあ、釣り雑誌に載せる文章ではないからね。高校の文化祭だし、西湖のモチベを削ぐのもよくないから、これでもいいか……」
「美沙希の文章、である体だったよね。西湖ちゃんの文章はですます体よ! どう読んでも美沙希の文章の方がまともなんだから、この変なタナゴ文を直すべきよ!」
「あら、国語がだめなカズミが真っ当な意見を言ったわね。でもまあいいじゃない、たかが文化祭なんだから」
「クラス委員長がたかが文化祭って言った! それでいいの?」
「カズミ、西湖ちゃんの文章は素敵」
「琵琶、おれもこれでいいと思うぜ。おれの書くヘラブナの文章が期待されても困るしな」
「ああ~っ、これを四面楚歌と言うのね!」
「カズミがむずかしい四字熟語を使った! 雪が降る……」
カズミは頭を抱えていたが、他のメンバーの了承により、西湖の文章はそのまま採用されることになった。
「うふふふっ。タナゴ釣り紹介の原稿を書いてきましたよっ。読んでください!」
「おおっ、やる気あるじゃない。いいわね」
「読みたい」
「ちゃんと書けているんでしょうね?」
「おれにも見せて」
西湖は真っ先に美沙希に原稿を渡した。
他のメンバーはそれをのぞき込んだ。
『タナゴ、その限りない魅力』
タナゴは素敵なんです。美しくてカワイイです。すべての魚の中で1番キレイです。誰がなんと言っても最高の魚です、絶対。
小さくてカワイイです。平均すると体長は5センチぐらいですね。銀色に輝く鱗がキレイです。同じ大きさの小ブナよりも輝きはかなり上ですね。オーラがちがいます。
春から初夏にかけての繁殖期には、雄のタナゴは婚姻色を帯びて、天国の魚かと思うほど美しくなります。魚体の一部が赤や緑や青に発色します。虹色に見えるタナゴもいます。すごくキレイ! ほんっとうにキレイ!
雌は産卵管を伸ばします。ちょっとエロいです。そこがまた魅力なんです。タナゴ、ぞくぞくするう!
釣りも素敵なんですよ。
タナゴは世界で最小の釣り対象魚なんです。日本独自の文化があるんです。漆塗りのタナゴの和竿とか。この釣りは江戸時代に発祥したと言われています。長い歴史があるんです。
すごく繊細な竿を使い、すごく繊細な仕掛けを結んで、すごく繊細なアタリを見極めて釣ります。親ウキの下に極小のイトウキがいくつかついていて、イトウキの変化を見て釣るんです。その繊細さは世界に類を見ないと思います。楽しいよ!
釣ったタナゴは飼育してみてください。可愛くてキレイなタナゴといっしょに暮らすとしあわせになれます。意外と簡単に飼えるんですよ。
みなさん、タナゴ釣りをして、ハッピーになりましょう! オススメ!
「これはすごい文章。タナゴ愛にあふれてる!」
「ちょっと愛があふれすぎているわね……」
「駄文でしょ、これ。書き直してよ!」
「いや、1周回って名文なんじゃないか?」
美沙希は絶賛し、真央は苦笑し、カズミは批難し、佐藤は複雑な表情で賞賛した。
「書き直す必要を認めませんっ。美沙希ちゃんが褒めてくれました。このまま模造紙に清書してください!」
「まあ、釣り雑誌に載せる文章ではないからね。高校の文化祭だし、西湖のモチベを削ぐのもよくないから、これでもいいか……」
「美沙希の文章、である体だったよね。西湖ちゃんの文章はですます体よ! どう読んでも美沙希の文章の方がまともなんだから、この変なタナゴ文を直すべきよ!」
「あら、国語がだめなカズミが真っ当な意見を言ったわね。でもまあいいじゃない、たかが文化祭なんだから」
「クラス委員長がたかが文化祭って言った! それでいいの?」
「カズミ、西湖ちゃんの文章は素敵」
「琵琶、おれもこれでいいと思うぜ。おれの書くヘラブナの文章が期待されても困るしな」
「ああ~っ、これを四面楚歌と言うのね!」
「カズミがむずかしい四字熟語を使った! 雪が降る……」
カズミは頭を抱えていたが、他のメンバーの了承により、西湖の文章はそのまま採用されることになった。
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