【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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約1ヶ月前のクリスマスの朝、青さんの家まで送ってくれたのは一平さんだった。
”ダメ秘書“の私はペーパードライバーだし、私のことでお父さんが車で送ってくれることなんて絶対にないし、当日は1人で電車で青さんの所まで行くのだと思っていた。



そしたら、まさかの一平さんが車を運転し、青さんの所まで送ってくれた。
私のことを助手席に乗せて・・・。



初めて一平さんが運転をする車に乗り、それも助手席に乗り、これから捨てられると思っていたけれど”嬉しい“という気持ちにもなっていた。



泣きそうになりながらも自然と笑っていた。



あの日、一平さんの隣で眺め続けた道を、今は暗い夜の中で眺め続ける。



「”ダメ秘書“なのに、道めっちゃ覚えてるんだけど・・・。」



初めて一平さんの隣で進めた道を私は絶対に忘れたくはなくて、必死にこの頭の中に記憶させていた。



その道を今は1人で進んでいく。



いや、戻っていく・・・。



「青さんの暗示と洗脳、私が解いちゃったか・・・。」



低めのヒールだけど足が痛い。



きっと靴擦れをしている足の指先と踵。



ふくらはぎまで痛い。



足の裏なんて激痛。



「疲れた・・・。」



それでも・・・



加藤の”家“に生まれた私は歩き続けなければいけない。



立ち止まるわけにはいかない。



私はそうやって育てられた。



”ノンノンは普通の女の子になっても良いと思うけどね。“



おばあちゃんはそう言いながらも私に秘書としての勉強もさせた。



お父さんとお母さんとお兄ちゃんは私のことを当たり前かのように秘書にさせるつもりで育てていた。



だから私は歩ける。



青い光りなんて何もないこの夜の道を。



一平さんと一美さんが立ち止まってしまったとしても、2人よりも先を歩けるくらいの心を私は育てて貰えている。



「苦しい・・・。」



どんなに苦しくても。



「悲しい・・・。」



どんなに悲しくても。



「虚しい・・・。」



どんなに虚しくても、私はこの両足を止めることなく歩き続けることが出来る。



泣きながらでも、私は歩ける。



一平さんと貴子さんが新婚生活を送る空間がこの先にあると分かっていても、私は歩ける。



もう青さんが私のことを迎えに来てくれないのだと分かった道でも、私は歩ける。



「やっぱり、私じゃダメだったかぁ・・・。」



夜の黒に包まれているこの空間でも、もう分かっているくらい知っている道になったので俯きながら歩いた。



「やっぱり、私は”ダメ秘書“だなぁ・・・。」



青さんの弱みを握ることが出来なかった私が、あと少しで着く小関の”家“へ向かって真冬の夜の空間を凍えながら歩き続ける。



頭の中でグルグルと思い浮かぶのは、青さんとの騒がしくて楽しい毎日のことだった・・・。




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