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2月14日 夕方
休日でも開いていた青さんの会社にソ~っと入る。
そしたら何人かの社員が私服で仕事をしていて、その中にはスーツ姿の青さんもいた。
”野々ちゃんとデートじゃないんだ・・・。
いや、これからデートかな・・・。“
そう思うと凄く苦しくて・・・。
でも、めちゃくちゃ勇気を出して大きな声を出した。
「お疲れ様で~す!!」
私の声にみんなが一斉にこっちを見た。
その中には青さんの視線もあり、でも青さんの方は見ないようにしながら笑顔を作り続ける。
「休日出勤お疲れ様です!!
バレンタインのケーキを作ったので差し入れに来ました!!」
数時間前に一美さんと一緒に作ったチョコケーキが入った袋を顔の横に掲げた。
一美さんは安倍さんの為に甘さ控えめのチョコケーキ、私は青さんとの約束通りの甘々なチョコケーキを作った。
私はもう青さんの奥さんではないけれど、”ほぼ家族“として、”ほぼ友達“として、そして青さんの会社の掃除屋として青さんにチョコケーキを持ってきた。
こんな形になってしまったけれど青さんにバレンタインのチョコを渡す。
一平さんの為だけに作っていた甘さ控えめなスイーツの残りではなく、私は青さんのことを想いながら作った。
一美さんには”青さんに渡さない“と嘘をつきながら、このチョコケーキに私の甘々な気持ちを密かに込めながら作った。
あの日から数日、青さんは家に帰ってくることはなくなり、私が青さんの会社に戻ることもなかったけれど、私の”愛“はまだまだ終われそうになくて。
私が一方的に送り続ける日記だけの関係にまた戻ってしまったけれど、私の”愛してる“は何故かもっと増していってしまって。
青さんとしたバレンタインの約束を忘れることなく覚えてしまっていて。
こんな形だけど私は青さんに渡したかった。
もう本気で喜んでくれることはないだろうけど、私からのバレンタインのチョコを受け取って欲しいと思った。
「加藤さん。」
”社長“の青さんが私のことを”加藤さん“と呼び、私は自然と笑顔になりながら青さんのことを見た。
そしたら・・・
「うちの会社はバレンタインが禁止なんだよね。」
どこかピリッとした空気でそう言って・・・
「誰も受け取れないから、持って帰るなり他の人に渡すなりしてね。」
私からパッと顔を背け、普通の顔でまた仕事に戻ってしまった。
喜んでくれなかったどころか、受け取ることもしてくれなかった。
一口も食べてはくれなかった。
私からのチョコなんて”他の人に渡して“と、そう言われてしまった。
「そっか、知らなくてごめんなさい。」
泣くのを必死に我慢して死ぬ気で笑顔を作る。
青さん以外の人達はみんなが残念そうな顔で声を掛けてくれ、「隠れて渡してくれたら良かったのに~」とまで言ってくれていた。
”まだ泣いちゃダメ。“
”まだ我慢。“
”まだ我慢。“
急いでエレベーターを降り、オフィスビルから逃げるように外へと飛び出した。
そしたら・・・
私の腕を掴まれ、これ以上歩くのを阻止された。
「此処でなら受け取れるから。」
青さんの声が聞こえて、それにはすぐに涙が引っ込み笑顔になった。
そして青さんに振り返ったら・・・
そこには、青さんはいなかった。
いたのは青さんではなく守君で。
「バレンタインに差し入れとか、その中身で意外と可愛いこともするんだな。
でも、あの時にもう少し可愛く反論してみろよ。
サッパリしすぎててやっぱり全然可愛くなくて、俺無理だ。」
青さんとは全然違う見た目で。
でも、青さんとよく似た声で・・・
”全然可愛くない“と、”無理だ“と言われて・・・。
それには泣きそうになった、その時・・・
守君がパッと顔を上げた。
そして・・・
「あれ、今日めっちゃお洒落じゃん、バレンタインのデートだから?」
守君の声に釣られるように、振り向いてしまった。
そしたら、いた。
野々ちゃんがいた。
綺麗なロングコートの下には綺麗なワンピースが見えていて、髪型も化粧もバッグも靴もキラッキラしている、野々ちゃんがいた。
休日でも開いていた青さんの会社にソ~っと入る。
そしたら何人かの社員が私服で仕事をしていて、その中にはスーツ姿の青さんもいた。
”野々ちゃんとデートじゃないんだ・・・。
いや、これからデートかな・・・。“
そう思うと凄く苦しくて・・・。
でも、めちゃくちゃ勇気を出して大きな声を出した。
「お疲れ様で~す!!」
私の声にみんなが一斉にこっちを見た。
その中には青さんの視線もあり、でも青さんの方は見ないようにしながら笑顔を作り続ける。
「休日出勤お疲れ様です!!
バレンタインのケーキを作ったので差し入れに来ました!!」
数時間前に一美さんと一緒に作ったチョコケーキが入った袋を顔の横に掲げた。
一美さんは安倍さんの為に甘さ控えめのチョコケーキ、私は青さんとの約束通りの甘々なチョコケーキを作った。
私はもう青さんの奥さんではないけれど、”ほぼ家族“として、”ほぼ友達“として、そして青さんの会社の掃除屋として青さんにチョコケーキを持ってきた。
こんな形になってしまったけれど青さんにバレンタインのチョコを渡す。
一平さんの為だけに作っていた甘さ控えめなスイーツの残りではなく、私は青さんのことを想いながら作った。
一美さんには”青さんに渡さない“と嘘をつきながら、このチョコケーキに私の甘々な気持ちを密かに込めながら作った。
あの日から数日、青さんは家に帰ってくることはなくなり、私が青さんの会社に戻ることもなかったけれど、私の”愛“はまだまだ終われそうになくて。
私が一方的に送り続ける日記だけの関係にまた戻ってしまったけれど、私の”愛してる“は何故かもっと増していってしまって。
青さんとしたバレンタインの約束を忘れることなく覚えてしまっていて。
こんな形だけど私は青さんに渡したかった。
もう本気で喜んでくれることはないだろうけど、私からのバレンタインのチョコを受け取って欲しいと思った。
「加藤さん。」
”社長“の青さんが私のことを”加藤さん“と呼び、私は自然と笑顔になりながら青さんのことを見た。
そしたら・・・
「うちの会社はバレンタインが禁止なんだよね。」
どこかピリッとした空気でそう言って・・・
「誰も受け取れないから、持って帰るなり他の人に渡すなりしてね。」
私からパッと顔を背け、普通の顔でまた仕事に戻ってしまった。
喜んでくれなかったどころか、受け取ることもしてくれなかった。
一口も食べてはくれなかった。
私からのチョコなんて”他の人に渡して“と、そう言われてしまった。
「そっか、知らなくてごめんなさい。」
泣くのを必死に我慢して死ぬ気で笑顔を作る。
青さん以外の人達はみんなが残念そうな顔で声を掛けてくれ、「隠れて渡してくれたら良かったのに~」とまで言ってくれていた。
”まだ泣いちゃダメ。“
”まだ我慢。“
”まだ我慢。“
急いでエレベーターを降り、オフィスビルから逃げるように外へと飛び出した。
そしたら・・・
私の腕を掴まれ、これ以上歩くのを阻止された。
「此処でなら受け取れるから。」
青さんの声が聞こえて、それにはすぐに涙が引っ込み笑顔になった。
そして青さんに振り返ったら・・・
そこには、青さんはいなかった。
いたのは青さんではなく守君で。
「バレンタインに差し入れとか、その中身で意外と可愛いこともするんだな。
でも、あの時にもう少し可愛く反論してみろよ。
サッパリしすぎててやっぱり全然可愛くなくて、俺無理だ。」
青さんとは全然違う見た目で。
でも、青さんとよく似た声で・・・
”全然可愛くない“と、”無理だ“と言われて・・・。
それには泣きそうになった、その時・・・
守君がパッと顔を上げた。
そして・・・
「あれ、今日めっちゃお洒落じゃん、バレンタインのデートだから?」
守君の声に釣られるように、振り向いてしまった。
そしたら、いた。
野々ちゃんがいた。
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