【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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それから何本目かのエレベーターを見送り、誰も乗っていないエレベーターに大月旦と乗り込んだ。



そしたら・・・



「庄司さんが此処にいたかぁ・・・。
連絡をしてもいつも上手く濁していて、何処にいるか教えてくれなかったんだよねぇ・・・。」



大月旦が先にそう口を開いた。



「だからってそっちに戻そうとしないでよ!!
めっちゃ焦ったからね!!」



「キミが俺のことを追い掛けてこなかったら、俺が大月ホテルの王様になれた時には引き戻せそうな雰囲気じゃなかった?
庄司さん、此処で何か気になることとかあるんじゃないかな。」



「青さんにあとで報告しておく!!」



そう言った勢いで私はまた口を開く。



「私は小関の”家“の長男、一平さんのことを愛してる。」



「うん。」



大月旦の笑い声がエレベーターの中で響く。



「私は加藤望。
小関の”家“の秘書、加藤の”家“に生まれた。
だからそれは当たり前のことで。
この世に生まれる前からそうなるように私は育てられてきた。」



「うん。」



笑うことをやめた大月旦の横顔を見ることなく、エレベーターの扉だけを眺めながら私は続ける。



"好きな人に大好きだと伝えられる日があなたにも来ることを、心から願っています。"



昔野原晴子が一美さんに伝えてくれた言葉、そして今さっき私が大月旦に伝えた言葉を思い出しながら、続ける。



「そんな私が自然と恋をして自然と”愛してる“にまでなったのは、星野青だよ。」



前を向き続ける私のことを大月旦が見下ろしたのが気配で分かる。



でも大月旦のことを見ることなく両手で”一平さんの第2ボタン“をおさえる。



「私の口に貼られたセロハンテープをね、青さんが剥がしてくれたの。」



「うん。」



「私にね、ピーコートを買おうとしてくれたの。」



「うん。」



「私の”ほぼお兄ちゃん“になってくれたの。」



「うん。」



「私の”ほぼ友達“にもなってくれたの。」



「うん。」



「私が拾ったネコを引き取ってくれたの。」



「うん。」



「私の高校の入学式に大雪の中来てくれたの。」



「うん。」



「青さんは私の青空で、私の星なの。」



「うん。」



1階に到着したエレベーターが止まった瞬間に、私はまた口を開く。



「私が自分から好きになって自分から愛した男は青さんだけ。
誰にも言わないでね。
晴子ちゃんにも言ったらダメだよ?」



エレベーターの扉が開いた。



「青さんにも秘密ね?」



「分かった。」



しっかりとした声で大月旦が返事をし、エレベーターからゆっくりと足を踏み出す。



それからエレベーターの中に留まっている私に振り向き、真剣な顔で私のことを見詰めた。



「困ったことがあった時には俺の所においで。」



「ありがとう、皇子。
でもそういうつもりで言ったんじゃないよ。
ただ皇子には伝えたいと思っただけ。」



「うん。
でも、何か困ったことがあれば今度はキミが・・・加藤望さんが俺の所においでね。
その時には今度は必ず俺が加藤望さんのことを助けるから。」



私のことを“加藤望さん”と呼んでくれた大月旦に笑顔を見せ、頷いた。



「ありがとう、旦さん。」



エレベーターの扉が完全に閉まるその時まで、大月旦は優しい顔で微笑みながら私のことを見てくれていた。
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