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元気side.......
6歳
真っ暗な道をお兄ちゃんから貰った5円玉を握り締め、お兄ちゃんと2人で今日も神社に向かう。
“ゆきのうえ商店街”から歩いてすぐの所にある小さな神社。
お正月くらいにしか来たことはなかったのに、あれからお兄ちゃんと毎日来ている。
俺より少し先を歩くお兄ちゃんの背中を見ながら必死に歩いていた時・・・
「・・・っっっ」
お兄ちゃんからのお下がりのブカブカのズボン、そこに足が引っ掛かり転んでしまった。
手を着いた瞬間に5円玉が地面に転がっていき、コンクリートにお金が落ちた音でお兄ちゃんが俺を振り返ったのは見えた。
お兄ちゃんの足元まで転がった5円玉をお兄ちゃんが拾い、俺の所まですぐに戻ってきた。
無言で俺を立たせてズボンの汚れを払ってくれる。
お兄ちゃんからのお下がりのズボンはきっともっと汚れてしまった。
このズボンはお兄ちゃんも商店街のお兄ちゃんからお下がりで貰ったズボン。
それを今度は俺が履き、そしてまた俺より小さな子がこれを履く。
大好きなお兄ちゃん達から貰えるお下がりの服は大好きだった。
どんなにボロボロの服だったとしても爆笑しながら着ていた。
でも、今は何も笑えなくて。
全然笑えなくて。
今まで俺はどうやって笑っていたか分からないくらい笑えなくて。
手も膝も痛いはずなのに何も痛みを感じなくて。
「お兄ちゃん、もう歩けない・・・。」
痛みは感じないのにこれ以上足が動かなかった。
流れてくる涙も枯れ果て、カラカラに乾いている目でお兄ちゃんの顔を見ながら訴えた。
これ以上歩けそうになかった。
俺はもうこれ以上歩けそうになかった。
そんな俺にお兄ちゃんは無理矢理5円玉を握らせてくる。
お兄ちゃんが商店街の他の店で手伝いをして貰ってきた5円玉を。
そして俺の手を強く強く握り締めた。
「歩くぞ、元気。
俺が手を繋いでてやるから。
俺達はどんな道でも歩ける奴になれるようにみんなから育てられた。
だからどんな道でも歩ける。
例えどこが道かも分からない雪の上でも。」
そう言ってお兄ちゃんが俺の右手を引っ張る。
「真っ黒だとしても歩ける。
“ゆきのうえ商店街”にはいつだって道標の明かりがあるから。」
お兄ちゃんに無理矢理右手を引かれて歩いていく。
真っ暗闇の中で俺の口から真っ白な息が出ていくのが分かる。
だからきっと真っ暗闇ではないのだろうけど、俺にはこの世界が真っ暗闇に見えた。
「願いに行くぞ、元気。
この神社の神様はよく願い事を叶えてくれるらしいから。
“ゆきのうえ商店街”が潰されないように、“ゆきのうえ商店街”が消されないように。
“ゆきのうえ商店街”のみんながこれからも強く強く歩いていけるように。
今の俺達にはこれくらいしか出来ないから。」
お兄ちゃんは5円玉を賽銭箱に投げ入れた。
でも俺はそれがなかなか出来なくて・・・。
お兄ちゃんが稼いできたお金をここに投げ入れることが出来なくて・・・。
神様が叶えてくれるか分からないその願いにこの5円玉を投げ入れることが出来なくて・・・。
「明日も俺が稼いでくるから。」
お兄ちゃんが今日もそう言うから、俺は震える手で5円玉を投げ入れた。
チラッと見えた5円玉は俺の血がついていたのか真っ黒に見えた・・・。
6歳
真っ暗な道をお兄ちゃんから貰った5円玉を握り締め、お兄ちゃんと2人で今日も神社に向かう。
“ゆきのうえ商店街”から歩いてすぐの所にある小さな神社。
お正月くらいにしか来たことはなかったのに、あれからお兄ちゃんと毎日来ている。
俺より少し先を歩くお兄ちゃんの背中を見ながら必死に歩いていた時・・・
「・・・っっっ」
お兄ちゃんからのお下がりのブカブカのズボン、そこに足が引っ掛かり転んでしまった。
手を着いた瞬間に5円玉が地面に転がっていき、コンクリートにお金が落ちた音でお兄ちゃんが俺を振り返ったのは見えた。
お兄ちゃんの足元まで転がった5円玉をお兄ちゃんが拾い、俺の所まですぐに戻ってきた。
無言で俺を立たせてズボンの汚れを払ってくれる。
お兄ちゃんからのお下がりのズボンはきっともっと汚れてしまった。
このズボンはお兄ちゃんも商店街のお兄ちゃんからお下がりで貰ったズボン。
それを今度は俺が履き、そしてまた俺より小さな子がこれを履く。
大好きなお兄ちゃん達から貰えるお下がりの服は大好きだった。
どんなにボロボロの服だったとしても爆笑しながら着ていた。
でも、今は何も笑えなくて。
全然笑えなくて。
今まで俺はどうやって笑っていたか分からないくらい笑えなくて。
手も膝も痛いはずなのに何も痛みを感じなくて。
「お兄ちゃん、もう歩けない・・・。」
痛みは感じないのにこれ以上足が動かなかった。
流れてくる涙も枯れ果て、カラカラに乾いている目でお兄ちゃんの顔を見ながら訴えた。
これ以上歩けそうになかった。
俺はもうこれ以上歩けそうになかった。
そんな俺にお兄ちゃんは無理矢理5円玉を握らせてくる。
お兄ちゃんが商店街の他の店で手伝いをして貰ってきた5円玉を。
そして俺の手を強く強く握り締めた。
「歩くぞ、元気。
俺が手を繋いでてやるから。
俺達はどんな道でも歩ける奴になれるようにみんなから育てられた。
だからどんな道でも歩ける。
例えどこが道かも分からない雪の上でも。」
そう言ってお兄ちゃんが俺の右手を引っ張る。
「真っ黒だとしても歩ける。
“ゆきのうえ商店街”にはいつだって道標の明かりがあるから。」
お兄ちゃんに無理矢理右手を引かれて歩いていく。
真っ暗闇の中で俺の口から真っ白な息が出ていくのが分かる。
だからきっと真っ暗闇ではないのだろうけど、俺にはこの世界が真っ暗闇に見えた。
「願いに行くぞ、元気。
この神社の神様はよく願い事を叶えてくれるらしいから。
“ゆきのうえ商店街”が潰されないように、“ゆきのうえ商店街”が消されないように。
“ゆきのうえ商店街”のみんながこれからも強く強く歩いていけるように。
今の俺達にはこれくらいしか出来ないから。」
お兄ちゃんは5円玉を賽銭箱に投げ入れた。
でも俺はそれがなかなか出来なくて・・・。
お兄ちゃんが稼いできたお金をここに投げ入れることが出来なくて・・・。
神様が叶えてくれるか分からないその願いにこの5円玉を投げ入れることが出来なくて・・・。
「明日も俺が稼いでくるから。」
お兄ちゃんが今日もそう言うから、俺は震える手で5円玉を投げ入れた。
チラッと見えた5円玉は俺の血がついていたのか真っ黒に見えた・・・。
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