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お兄さんが困った顔で笑いながら、首を振る。



「誰も入れない、とは聞いていたからな。」



「当たり前じゃない。
あの部屋には、誰も入れられないわよ。」



泣きながらも、お兄さんを見る。
これは私の涙ではないから。
智の涙だから、智の涙を、お兄さんに見せる。








「全て、1つだけ。」






不思議そうな顔をしているお兄さんに、私は笑った。






「全て1つだけしかないのよ、智の部屋には。
ダイニングテーブルも1人用の小さな物、そこに椅子は1脚しかない。
ソファーも1人掛け用、そこにあるローテーブルも小さな1人用。」




お兄さんを睨み付けるように見る。




「それだけじゃないわ。
ワイングラスもシャンパングラスも、マグカップも・・・。
スプーンもフォークもナイフも、お皿も・・・。
全て1つなの、全て、全て、1つしかないの。」




お兄さんは俯きながら、「そうか・・・」と言っていて・・・。




「それは、今でも変わらないわ。」




私の言葉に、お兄さんが顔を上げた。
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