【完】雪の上に、犬と猿。たまに男と女。

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フラフラと真琴が寝転がるベッドまで歩き、ベッドの隅に腰を掛ける。



「宝田からじゃないよね・・・？
うちの弟から、聞きましたか・・・？」



「うん、聞いてる聞いてる。
うちらに隠し事とかないし。」



「・・・宝田と私も隠し事とかしてないけど。」



「いや、隠しまくりじゃん！！
お互いに好きとか言っちゃいけないんでしょ！？
雪枝のその拘り何なの！？」



真琴が爆笑しながら私に駄菓子を1つ渡してくれて、私はその駄菓子を食べる。



そして、聞いてみた。



「お酒ないの？呑みたい。」



「お兄ちゃんの部屋に日本酒があるから好きなの持ってきなよ。」



「勝手に宝田のお酒を呑むと宝田怒るからな。」



「日本酒を雪枝が呑む時は、絶対にお兄ちゃんと2人じゃなきゃダメだからね。
雪枝は天使だから。」



「・・・それは、真琴もだよ。
真琴だって天使だよ。」



「うん、それはそうだけどさ。
でも、お兄ちゃんにとっての天使は1人だけ。
この商店街・・・“ゆきのうえ商店街”にいるお兄ちゃんの天使は昔から雪枝だけ。」



真琴がそう言ってから立ち上がり、部屋を出ていった。
そしてすぐに戻ってきて・・・その手には日本酒の一升瓶が・・・。
宝田の部屋から日本酒を持ってきた・・・。



うちの酒屋には置いていない日本酒を。



うちだけではなく、どの酒屋にも置いていない日本酒を。



知っている人だけが知っている日本酒・・・。



でも、1度呑んだら忘れられないような日本酒・・・。



宝田のお父さんだけが売っている日本酒・・・。



お米屋の“宝多”だけが売っている日本酒・・・。



宝田のお父さんが日本全国の酒蔵を回り数々の酒蔵と取引をして作らせている、宝多のプライベートブランドの純米酒・・・。



知っている人だけが知っている、宝多米店の店主の拘りだけが詰まった純米酒・・・。