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それに気付き・・・。
私は宝田の右手を見てみた。
そしたら、宝田は右手で空っぽのお猪口を握り締めていた。



少し震えているその右手を見て、私は笑った。



「お酒で許してくれるかな?」



そう言った私に、宝田がゆっくりと顔を上げた。
綺麗な目で真っ直ぐと私を見詰めてくる。



「神様、このお酒で許してくれないかな?」



そんな言葉とともに、私は右手を動かした。
そしたら宝田が私の右手を離してくれ、私は自由になった右手で宝田の方にお猪口を向ける。



私の動きを見て宝田はゆっくりと右手を動かし、そしてお猪口を私の方に近付けた。



私は自然と笑いながら、宝田のお猪口に・・・私が持っていたお猪口に残っていた“駿と雪”を分ける。



「宝田の願いを叶えてくださいって、私も神様にお願いしてあげるから。」



「・・・俺の願いは、いつだって長峰が幸せになることだよ。
でも・・・あの時は嘘も偽りもあった・・・。
咄嗟に出てくる嘘だけじゃなくて、作為的出た偽りも・・・。」



「そういう反則は二度としないでって言ってたのにね?」



「うん・・・。
後々問題になるから二度としないと俺も決めてたけど・・・。
でも、結婚したくてさ・・・してみたくてさ・・・。
俺なら・・・俺なら、結婚しても長峰は幸せになれるんじゃないかと思っちゃってさ・・・。」



「・・・宝田は悪くないよ。
悪いのは私でしょ。」



「いや、俺でしょ。」



「私でしょ。
今回のことについては絶対に私。」



「俺だから!!
どう考えても俺!!!」



「私!!!」



「俺だって!!!!!」



.
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