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正仁さんも自分のお猪口にお茶を注いだ。
そして、2人で乾杯をする。



お猪口で飲んだお茶はいつもよりもずっと美味しく感じた。



「大人になって働くとね、学校で言われる優秀や良い子、他の誰かから言われる良い人、そういう人達が必ずしも評価されるわけじゃなくなるんだよね。」



「そうなんだ?」



「うん、例えば竜。
子どもの頃から手のつけられない子で、大学病院の耳鼻科にまで連れていかれたんだよ、耳が悪いんじゃないかって言われて。」



それには吹き出してから大笑いしてしまった。



「あの人、耳まで悪かったんだ?」



「いや、全然。
ちゃんと聞こえてたらしくて大人達がガックリしてたよ。」



「ちゃんと聞こえてたのにガックリしたんだね。」



「それくらいに手のつけられない商店街の異端児だったから。」



そんなことを正仁さんは嬉しそうな顔で言う。
何故か正仁さんと竜さんは凄く仲良しで、竜さんは正仁さんにだけは敬語で話す。



「そんな異端児が、今では大きな会社の企画部の部長にまでなった。
異例の早さでの大出世だと思うよ。」



「オババせんぱいはなんなの?」



「タマゴも頑張ってるらしいけど、入社も少し遅かったしまだ課長だね。
それでも凄いことだけどね、2人ともあの若さで。
見る目がある上司や役員、社長さんのいる会社らしいんだよね、マツイ化粧品。
それはそうだよね、竜は新卒採用で書類選考も面接も何も通っていないのに採用されたくらいだから。」
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