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それに酷く動揺していくと、松居会長がデスクに飾られている写真立てを手に取った。
そこには2人の小さな男の子と女の子が映っている。



松居会長はその写真を見ながら、口を開いた。



「桃は・・・黒住桃子は、俺の孫を育ててる。」



その言葉には、動揺していたのも忘れ驚くしかなった。
噂話だけでなく色んな可能性を考えてみるけれど、その理由が何なのか想像もつかなかった。



でも、1つだけ思い付くことはあったので言ってみた。



「桃子せんぱいは、胸にこの子達を持ったんですか?」



「そうだな、あの子が持った。
血も繋がらない、戸籍上も関係はないあの子が。」



「それで、当時高校生だった女の子が2人の子持ちに?」



桃子せんぱいのことを考えると少しムシャクシャもしてきて、松居会長にそう聞いた。



「孫娘がそれを強く望んだ。
そして、桃までそれを強く望んだ。
あの子達の本当のお母さんになると、そう強く強く・・・望んだ。
そうしないと生きられなかったから。
あのとてもとても弱い女の子は、死んでしまうところだったから。」



桃子せんぱいのことを“とても弱い女の子”と言った松居会長。
俺はなんとなく、お酒を呑んだ時の桃子せんぱいの姿を思い浮かべた。



「あの子は本当はとてもとても弱い子だから。
でも、あの子は、俺の娘でもあり息子となった男でもある。
死んだ俺の娘と息子が、あの子とともに生きてるから。
だから誰にも負けない強さもある。」



そう言ってから、写真立てを置いて俺のことを見上げてきた。
懇願するような顔で、見上げてきた。



「俺も岩渕も須崎も板東も先に向こうにいく。
だから助けて欲しい。
あの子は1人で泳げるくらい強い子でもあるけど、でも本当のあの子はとてもとても弱い子だから。
あの子がこの先困った時、どうか手を差し伸ばして欲しい・・・。」



そう言いながら松居会長はヨロヨロと立ち上がり、俺に深く頭を下げてきた・・・。
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