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オババせんぱいのそんな言葉に、俺は思わずしゃがみこんで泣いた。



オババせんぱいのお母さんはずっと昔に亡くなっている。
竜さんのお父さんは竜さんが産まれる前に亡くなっていたけれど、オババせんぱいのお母さんはオババせんぱいが中学生くらいの時に亡くなったと聞いていた。



身体の弱い人で、亡くなるまでは入退院を繰り返し、退院してもあまり外出は出来ずに商店街の中を歩くくらいだったと知っている。



「別に楽しいことなんてしてねーだろ、普通にそこら辺を探険したりカエルを取っ捕まえて破裂させたり、雀に玉当てて落としたやつを捌いてストーブの上で焼いて食ってみたり。
そんな普通のことしかしてねーだろ。」



何も普通じゃないことを竜さんがサラッと言うので、俺達3人は笑いながら竜さんを見た。
竜さんは不思議そうな顔でオババせんぱいを見ていて、オババせんぱいも美しく化粧をされた顔で笑っている。



その顔はいつもの笑顔とは違って、その目はいつもの目とは違って、キャンバスの中に戻っているのだと分かる。
キャンバスの中に入り、その時代まで泳いで戻ったのだと分かる。



それくらいに“女の子”の顔をしていた。
お酒を呑んだ時の桃子せんぱいのように、この時代の“女の子”の時に戻ったのだと分かった。



「そんな普通の毎日がとても楽しかった。
“竜”といると驚くことばかりで、怖いことばかりで、気持ち悪いことばかりで、不安になることばかりで、なのに家に帰ると楽しかったという気持ちしかなかった。
早く明日になって欲しくて毎日早く寝てたの、だからこんなに背が伸びちゃったのかな。」



「俺は逆に夜更かししてたからな、明日はどんなことをしてお前と遊ぼうか考えてた。
この顔をもっと色んな顔にしてやろうと思ってた。」



竜さんはそんなことを言っていたけれど、竜さんの姿は亡くなっているお父さんにソックリだと商店街中の人達が知っている。
それでも俺は黙っていると・・・



「竜さんって亡くなったお父さんとソックリらしいから、夜更かしは関係ないんじゃない?」



俺の宝剣がバカ舌を回していた。
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