“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

文字の大きさ
152 / 166
10

10-7

しおりを挟む
砂川さんからのその言葉には何も返せなかった。
文句を言いまくりたい気持ちは沢山あるのに、何も言葉にならなかった。



砂川さんがあまりにも強く私のことを抱き締めるから。
だからこんなにも苦しくなって、私は泣き続けたのだと思う。



号泣する私のことを砂川さんはずっと抱き締めていて。



私の左手も佐伯さんの温かい手と繋がれていて。



こんなにも苦しいのにこんなにも“幸せ”を感じてしまいもっと苦しくなった。



いつかこの2人が私の元からいなくなるのだと思うとこんなにも苦しい。



だから今は、2人の存在を何度も何度も何度も確かめながら眠りについた。



“このまま目覚めなければ良いのに”と思いながら。



“このまま目覚めなければずっと幻想の中にいられるのに”と思いながら。



“このまま明日なんて来なければ良いのに”



強くはなれそうにない私がそう思いながら深く落ちていく。



深く深く、落ちていく。



───────


──────────



──────────────・・・・・・・





そして、次に目を開けた時には世界は随分と明るくなっていて。



更に・・・



「あっっっっつ・・・・。」 



あまりの暑さに嘆き・・・



「せっっっっま・・・・。」



あまりの狭さにも嘆き、でも自然と笑った。



私の右側には砂川さん、左側には佐伯さん。
その2人が私のことを絞め殺すつもりなのかというくらい強く抱き締めているから。






─────────────・・・・






「朝も綺麗だね~!!
朝からお風呂に入れて、しかも露天風呂とか最高~!!」



佐伯さんと2人で露天風呂に入り朝の大自然を眺める。



「佐伯さんも砂川さんも朝から元気だね。」



「純愛ちゃんは朝が結構弱いんだね?」



「そんなことはないはずだから、寝苦しかったんだと思う。」



「2人に挟まれちゃってね~。
私は久しぶりにグッッッスリ眠っちゃった!
やっぱり好きな人と一緒に寝るとよく眠れる!!」



どこか幼い笑顔で笑う佐伯さんが、今日も真っ青な空を見上げた。



「後で3人で写真を撮りたいな。」



「写真か・・・うん、いいね。」



「そういえば、私さっき“おとーさん”から売店でお土産を沢山買って貰ったって言ったでしょ?」



「うん、彼女の私のことを自分の目の前で抱き締めていた罰だよね?」



「朝からめっちゃムカついた。
売店にいた時に見えたけど、この旅館に女装趣味のオジサン軍団が泊まってたみたい。
みんなでロビーでキャッキャと写真を撮って、そのまま大浴場の方に向かっていってた。」



「え・・・、砂川さんって売店の後に大浴場に行ったんだよね?」



「そうだよ♪
でも、趣味が女装なだけで恋愛対象が同性とは限らないしね♪」



「それはそうだね。」



「30人くらいいたけど、たぶん大丈夫だよ♪」



「それ、大丈夫かな・・・!?」



爆笑している佐伯さんの顔を見て、それに釣られるように私も笑った。



今日も晴れ。



今日も楽しい1日になるかもしれない。



朝からこんなに笑えているから。



生理はほぼ終わった。



そのことにも安心し、旅館の前で佐伯さんと砂川さんの真ん中で2人と手を繋ぐ。



「はいっ、チーズ♪」



佐伯さんの掛け声に合わせて私は空を見上げた。



そしたら、真っ青な空には私達3人の白い姿が浮かんだ。



3人で仲良く手を繋いでいる白い影。



「本物の写真じゃなくてごめんね!
私、アレが大嫌いで!!
私の写真はこれなんだ!!」



「全く構わない・・・。
俺もゲッソリとしているだろうし。」



「サウナで身体を触られた?」



「いや、何もされていない。
でも何かされると思うと物凄く怖かったよ。」



「それって偏見だから。」



「実際に被害を受けたことによって警戒をするのは至極当然のことだよ。」



「その言葉、砂川さんにそのまま返す。」



「2人とも~!せっかくの写真なんだから楽しく撮ろうよ~!!」



顔までは見えない空に浮かぶ“写真”。



それをしっかりと目に焼き付けた。



2人が私の元からいなくなってしまった後も覚えていられるように。



私の記憶の中に残っていられるように。



この時をしっかりと刻み込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...