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“今日も楽しい1日になるかもしれない。”
数時間前の私はそんな期待をしていた。
だって、日曜日の今日は砂川さんの家で佐伯さんも一緒にハナカイドウの花見をする予定だったから。
だからこうして早目に新幹線で東京に戻り、砂川さんの家にも戻ってきた。
3人で花見が出来ることが私は“嬉しい”と思っていて。
砂川さんの家に戻りトイレも借りたけれど、縁側には行かずにまたリビングへと戻った。
1人で先にハナカイドウを見るようなことはしたくなかったから。
きっと花が咲き始めているハナカイドウ。
私が大好きな花を佐伯さんと砂川さんと3人で見たいと思いリビングに戻った。
生理の血は完全に止まったことにも安心しながら。
リビングのソファー前のテーブルにはマグカップが3つ。
そのマグカップは3つともお揃いで、信じられないことに黒いネコがもう1つ増えた。
でも1つ増えただけではハートは増えない。
4つなければハートは2つにならない。
「あ、ネコといえば課長・・・」
このマグカップを“可愛い”と言った佐伯さんが何かを言いかけた時、この家のインターフォンが鳴った。
そのインターフォンの音を佐伯さんと砂川さんの間に挟まれながら聞いた。
そしたら、勢い良く立ち上がった砂川さんはこちらを振り返ることなく口にした。
「羽鳥さんだ・・・!!」
大きな声で“羽鳥さん”の名前を出し、走ってリビングを出て行った砂川さん。
そんな砂川さんの後ろ姿を見て私の心臓は嫌な感じで動いた。
「金曜日の夜に課長との電話で最後に羽鳥さんのことも話題に出て。
そしたら課長、すぐに私との電話を切って羽鳥さんに電話を掛けるってなって。」
聞きたくもない、知りたくもないことを佐伯さんが悪気なく私に教えてしまう。
「羽鳥さんのことも花見に誘ったのかな?」
佐伯さんが嬉しそうな声でそう言ってくる。
砂川さんだけではなく佐伯さんまでこんなにも嬉しそうで。
砂川さんも佐伯さんも羽鳥さんのことが大好きなのだと嫌でも分かる。
私は嫌いなのに・・・。
私は羽鳥さんのことが大嫌いなのに・・・。
私は羽鳥さんと花見なんてしたくないのに・・・。
あのハナカイドウは私のだったのに・・・。
砂川さんからの恋心は貰えない私が唯一貰える桜よりもピンク色の花、桜が散ってから咲く花、桜よりも長く咲く花、砂川さんと私だけが花見を出来る花・・・。
“私のハナカイドウ”だったのに・・・。
全部、全部勘違いだったけど・・・。
だから“私のハナカイドウ”なんかじゃなかったけれど・・・。
でもこの前、嘘だとは分かっているけど砂川さんだって言ってくれていた。
私の為にライトアップをしてくれたと。
ただのボランティアだけど私にそう言ってくれた。
何も信じてはいないけれどそう言っていたのに・・・。
「純愛ちゃん、どうしたの?」
佐伯さんの心配そうな声が聞こえる。
私がソファーに座りながらもうずくまってしまったから。
「お腹痛い・・・。」
「お腹・・・?胃?腸?」
「あ・・・・・・」
“ソレ”に気付き、全身から汗がブワッと吹き出てきた。
下腹部を両手で押さえる。
「血、また出たかも・・・。」
「生理の?」
「うん・・・。」
「我慢出来ない痛み?」
「お腹の痛みは我慢出来る。」
「精神的に不安になるよね。」
佐伯さんが私の背中を優しく撫でてくれる。
「純愛ちゃんの病院に私も一緒に行くからね。
生理が終わったら行こう?」
「もう、いいよ・・・。」
「何が?」
「こんな子宮なんてどうなってもいい・・・。
どうせ使わないもん・・・。
この先、使うことなんてないもん・・・。」
「使ってよ、私に純愛ちゃんが産んだ赤ちゃんを抱っこさせてよ。」
うずくまりながら佐伯さんの言葉を聞く。
「この心臓とこの痣のことがあるから私に子どもは望めないから。
この人生では私は自分の赤ちゃんを抱っこ出来ないから。」
泣きながら、聞く。
「だから純愛ちゃんの赤ちゃんを抱っこさせてよ。
楽しみに待ってるから。
それまでこの命を減らしながら、頑張って待ってるから。」
号泣しながら、泣く。
私のことなんて振り向きもしなかったさっきの砂川さんの後ろ姿を思い浮かべながら。
「痛い・・・。」
下腹部だけではなくこの胸の痛みも感じながら。
「桜だけじゃなくてハナカイドウまで花見しないでよ・・・。」
「え?何?」
小さく小さく呟いた声は、小さな小さな音にしかならなかった。
数時間前の私はそんな期待をしていた。
だって、日曜日の今日は砂川さんの家で佐伯さんも一緒にハナカイドウの花見をする予定だったから。
だからこうして早目に新幹線で東京に戻り、砂川さんの家にも戻ってきた。
3人で花見が出来ることが私は“嬉しい”と思っていて。
砂川さんの家に戻りトイレも借りたけれど、縁側には行かずにまたリビングへと戻った。
1人で先にハナカイドウを見るようなことはしたくなかったから。
きっと花が咲き始めているハナカイドウ。
私が大好きな花を佐伯さんと砂川さんと3人で見たいと思いリビングに戻った。
生理の血は完全に止まったことにも安心しながら。
リビングのソファー前のテーブルにはマグカップが3つ。
そのマグカップは3つともお揃いで、信じられないことに黒いネコがもう1つ増えた。
でも1つ増えただけではハートは増えない。
4つなければハートは2つにならない。
「あ、ネコといえば課長・・・」
このマグカップを“可愛い”と言った佐伯さんが何かを言いかけた時、この家のインターフォンが鳴った。
そのインターフォンの音を佐伯さんと砂川さんの間に挟まれながら聞いた。
そしたら、勢い良く立ち上がった砂川さんはこちらを振り返ることなく口にした。
「羽鳥さんだ・・・!!」
大きな声で“羽鳥さん”の名前を出し、走ってリビングを出て行った砂川さん。
そんな砂川さんの後ろ姿を見て私の心臓は嫌な感じで動いた。
「金曜日の夜に課長との電話で最後に羽鳥さんのことも話題に出て。
そしたら課長、すぐに私との電話を切って羽鳥さんに電話を掛けるってなって。」
聞きたくもない、知りたくもないことを佐伯さんが悪気なく私に教えてしまう。
「羽鳥さんのことも花見に誘ったのかな?」
佐伯さんが嬉しそうな声でそう言ってくる。
砂川さんだけではなく佐伯さんまでこんなにも嬉しそうで。
砂川さんも佐伯さんも羽鳥さんのことが大好きなのだと嫌でも分かる。
私は嫌いなのに・・・。
私は羽鳥さんのことが大嫌いなのに・・・。
私は羽鳥さんと花見なんてしたくないのに・・・。
あのハナカイドウは私のだったのに・・・。
砂川さんからの恋心は貰えない私が唯一貰える桜よりもピンク色の花、桜が散ってから咲く花、桜よりも長く咲く花、砂川さんと私だけが花見を出来る花・・・。
“私のハナカイドウ”だったのに・・・。
全部、全部勘違いだったけど・・・。
だから“私のハナカイドウ”なんかじゃなかったけれど・・・。
でもこの前、嘘だとは分かっているけど砂川さんだって言ってくれていた。
私の為にライトアップをしてくれたと。
ただのボランティアだけど私にそう言ってくれた。
何も信じてはいないけれどそう言っていたのに・・・。
「純愛ちゃん、どうしたの?」
佐伯さんの心配そうな声が聞こえる。
私がソファーに座りながらもうずくまってしまったから。
「お腹痛い・・・。」
「お腹・・・?胃?腸?」
「あ・・・・・・」
“ソレ”に気付き、全身から汗がブワッと吹き出てきた。
下腹部を両手で押さえる。
「血、また出たかも・・・。」
「生理の?」
「うん・・・。」
「我慢出来ない痛み?」
「お腹の痛みは我慢出来る。」
「精神的に不安になるよね。」
佐伯さんが私の背中を優しく撫でてくれる。
「純愛ちゃんの病院に私も一緒に行くからね。
生理が終わったら行こう?」
「もう、いいよ・・・。」
「何が?」
「こんな子宮なんてどうなってもいい・・・。
どうせ使わないもん・・・。
この先、使うことなんてないもん・・・。」
「使ってよ、私に純愛ちゃんが産んだ赤ちゃんを抱っこさせてよ。」
うずくまりながら佐伯さんの言葉を聞く。
「この心臓とこの痣のことがあるから私に子どもは望めないから。
この人生では私は自分の赤ちゃんを抱っこ出来ないから。」
泣きながら、聞く。
「だから純愛ちゃんの赤ちゃんを抱っこさせてよ。
楽しみに待ってるから。
それまでこの命を減らしながら、頑張って待ってるから。」
号泣しながら、泣く。
私のことなんて振り向きもしなかったさっきの砂川さんの後ろ姿を思い浮かべながら。
「痛い・・・。」
下腹部だけではなくこの胸の痛みも感じながら。
「桜だけじゃなくてハナカイドウまで花見しないでよ・・・。」
「え?何?」
小さく小さく呟いた声は、小さな小さな音にしかならなかった。
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