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「刺した瞬間の感触は恐ろしかった。
自分の手の平の痛みなんて全く気にならなかったのに、ヒーローのお兄ちゃんを刺した瞬間の感触は恐ろしいくらい心が傷んだ。」
「はい・・・。」
「なのにヒーローのお兄ちゃんは何でもない感じで、私の血まみれの手を窓ガラスから離してくれて言ったの。
“俺が来たからには誰も殺させねーから。
お前のことも、この男のことも”って。」
「はい・・・。」
「そしたら、次はもう1人のヒーローのお姉ちゃんが言ったの。
今は母親の顔も覚えてないけど、ヒーローのお姉ちゃんを見て“似てる”って思ったのは覚えている。
そんなヒーローのお姉ちゃんが裸の私に優しく服を着せてくれた。
そして、言った。
“天野だけじゃない、私も来た。
私達が来たからには誰も殺させない”って。」
「はい・・・。」
「だからあの日、私は誰も殺さないで済んだ。
あの男の命も、自分の命も殺さずに済んだ。」
「はい・・・。」
「だから、今度は必ず殺す。
私はもう子どもではない。
そして、あの藤岡ホールディングスの正社員という事実と、極上に良い男がバックについてくれている。」
「はい・・・。」
「今度は絶対に殺すの。
だから私は、頭のいかれたままでいた。
男なのに女の姿のままを続けた。
生まれた時からあの男に女の姿でいるよう強要されていたから。
7歳の夏にはヒーローが救い出してくれたけれど、それでも頭のいかれたままを続けた。
この姿しか証明出来るものがないから・・・。」
「はい・・・。」
「あの男がしたことで他に証明出来るようなものが何もないから・・・。
だから私は、頭のいかれたままを続けた・・・。」
「はい・・・。」
アヤメさんの手の平の傷痕を見ながら何度も瞬きをし、アヤメさんの言葉を聞いた。
そして、私の瞳のレンズで写真を撮った・・・。
記憶した。
アヤメさんの手の平の傷痕も、アヤメさんの言葉も、記憶した。
「写真を撮りました・・・。
アヤメさんのこの傷痕やその日の出来事を話してくれた今を、写真に撮りました・・・。
アヤメさんが忘れてしまっても私は思い出せます・・・。」
「ありがとう。」
アヤメさんは両手を下ろし、美しい笑顔を私に見せた。
その笑顔も瞬きをして記憶する。
それから、ガチガチに固まる両手をアヤメさんの華奢な肩に少しだけのせ・・・
少しずつ・・・
少しずつ・・・
アヤメさんの美しすぎる顔に近付く・・・。
そして、お互いに目を開けたまま、私はアヤメさんの唇に少しだけ自分の唇を重ねた・・・。
瞬きをする・・・。
何度も何度も、すぐ目の前にあるアヤメさんの美しい顔を見ながら・・・。
こんなに誰かの顔が近くにある写真を撮ったのは生まれて初めてだった・・・。
息を止めていると、煩く鳴る心臓の音がよく聞こえた・・・。
アヤメさんの柔らかい唇の感触も、良い匂いも、熱を込めたアヤメさんの瞳も・・・
記憶した・・・。
私の瞳のレンズで写真を撮り、記憶した・・・。
自分の手の平の痛みなんて全く気にならなかったのに、ヒーローのお兄ちゃんを刺した瞬間の感触は恐ろしいくらい心が傷んだ。」
「はい・・・。」
「なのにヒーローのお兄ちゃんは何でもない感じで、私の血まみれの手を窓ガラスから離してくれて言ったの。
“俺が来たからには誰も殺させねーから。
お前のことも、この男のことも”って。」
「はい・・・。」
「そしたら、次はもう1人のヒーローのお姉ちゃんが言ったの。
今は母親の顔も覚えてないけど、ヒーローのお姉ちゃんを見て“似てる”って思ったのは覚えている。
そんなヒーローのお姉ちゃんが裸の私に優しく服を着せてくれた。
そして、言った。
“天野だけじゃない、私も来た。
私達が来たからには誰も殺させない”って。」
「はい・・・。」
「だからあの日、私は誰も殺さないで済んだ。
あの男の命も、自分の命も殺さずに済んだ。」
「はい・・・。」
「だから、今度は必ず殺す。
私はもう子どもではない。
そして、あの藤岡ホールディングスの正社員という事実と、極上に良い男がバックについてくれている。」
「はい・・・。」
「今度は絶対に殺すの。
だから私は、頭のいかれたままでいた。
男なのに女の姿のままを続けた。
生まれた時からあの男に女の姿でいるよう強要されていたから。
7歳の夏にはヒーローが救い出してくれたけれど、それでも頭のいかれたままを続けた。
この姿しか証明出来るものがないから・・・。」
「はい・・・。」
「あの男がしたことで他に証明出来るようなものが何もないから・・・。
だから私は、頭のいかれたままを続けた・・・。」
「はい・・・。」
アヤメさんの手の平の傷痕を見ながら何度も瞬きをし、アヤメさんの言葉を聞いた。
そして、私の瞳のレンズで写真を撮った・・・。
記憶した。
アヤメさんの手の平の傷痕も、アヤメさんの言葉も、記憶した。
「写真を撮りました・・・。
アヤメさんのこの傷痕やその日の出来事を話してくれた今を、写真に撮りました・・・。
アヤメさんが忘れてしまっても私は思い出せます・・・。」
「ありがとう。」
アヤメさんは両手を下ろし、美しい笑顔を私に見せた。
その笑顔も瞬きをして記憶する。
それから、ガチガチに固まる両手をアヤメさんの華奢な肩に少しだけのせ・・・
少しずつ・・・
少しずつ・・・
アヤメさんの美しすぎる顔に近付く・・・。
そして、お互いに目を開けたまま、私はアヤメさんの唇に少しだけ自分の唇を重ねた・・・。
瞬きをする・・・。
何度も何度も、すぐ目の前にあるアヤメさんの美しい顔を見ながら・・・。
こんなに誰かの顔が近くにある写真を撮ったのは生まれて初めてだった・・・。
息を止めていると、煩く鳴る心臓の音がよく聞こえた・・・。
アヤメさんの柔らかい唇の感触も、良い匂いも、熱を込めたアヤメさんの瞳も・・・
記憶した・・・。
私の瞳のレンズで写真を撮り、記憶した・・・。
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