【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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「だからって俺の部屋に連日来るなよ。
女子高生を部屋に入れてるの見られると面倒だからな?」



透の小学校からの親友、村田隼人の一人暮らしの部屋に今日も押し掛けた。
26歳の隼人は大学4年生頃から透と不仲になり・・・。



姫とも必然的に疎遠になっているらしいけど、私とは今でも仲良くしてくれている。



「隼人って私の元婚約者なんでしょ?
だから大丈夫だって!!」



「いつの話だよ!?
小町が13歳で俺が21歳くらいの時の話だろ。
それも“婚約者”とかそんな話でもなく、“婚約者候補”な!!
そんな話も1年間くらいだったぞ。
ある日小町のお父さんから“もう大丈夫だから”と言われて終わった。」



「そうなんだ?
昔から私は隼人のことが好きだったからな~。」



「俺もお前のことは結構好きだった。
姫とは違って素直なおバカって感じで、子どもらしくておバカだったからな。」



「おバカ2回言ってるけど。」



「良いんだよ、そのくらいが。
あんまり鋭いと近くにいるのが怖くなるからな。」



「そうなの?
うちのお父さんも24歳のあの男も、なんか難しいことを私に言ってくるから私はダメな女なんだろうなと思っちゃう。」



そう言いながら今日もノートとシャーペンを取り出す。



そして、隼人を見た。



「隼人先生、今日もよろしくお願いします。」



「元婚約者様からのお願いだからな!
後で夜飯作れよ!!」



「はい!!!」



夜10時に寝るのを我慢して、最近は夜に隼人の部屋に来て勉強させてもらっている。
世の中の色々なことを。
本当に、色々なことを。



たまに制服から着替えて外にも連れ出してくれる。
隼人には沢山の色々な友達がいて、その多くの人が隼人のことを尊敬していることが分かった。



色々な育ちの人がいて、その人達からも色々な話を聞いた。



そして・・・



「相川薬品、最近どうなの?」



相川薬品に勤めている隼人に今日もそう聞いてみる。



「そんなこと同業他社の社長の娘に言うかよ!!」



隼人が今日も大笑いしながらそう返してくる。



「そっちは?中岡とか元気?」



「元気だよ、お正月に会った。
まだ喧嘩してるの?早く仲直りしてよ。」



「喧嘩じゃないから仲直りとかないからな。
俺のこと何か言ってる?」



「相川薬品で上手くやってるならそれで良って。」
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