【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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「桜、もう散っちゃったね!!」



大学生になって数日後の私の誕生日、僅かに残っていた桜の花は完全に散ってしまった。
それに少し虚しさを感じながら隣を歩く武蔵を見る。



「来年もまた咲くからね。」



「来年か。私は二十歳になる。」



「二十歳か、若いね。」



「うん、若いよね。
まだ若いよね、二十歳は。
今の時代、まだ二十歳は若いよね。
大学生だし、まだ若いから・・・。
まだ・・・婚約者が決まらないといいな。」



すっかり葉桜となった桜の木を見上げる。
薄ピンク色の着物、桜色の着物を着て、葉桜になった桜の木の下を歩く。



「一生19歳がいいな。
一生19歳の中で生きていたい。」



「そしたら一生未成年だね。
お酒も飲めないのか、可哀想に。」



「・・・じゃあ、二十歳になったその日の中でずっと生きていたい!!」



私がそう叫ぶように言うと、武蔵が面白そうに笑った。



「俺は今日も会社に行ってくるから。」



「私の誕生日なのにね?
・・・プレゼントは?」


「・・・そうか、プレゼントか。
女の子に何をあげればいいんだろう?」



「武蔵の連絡先教えて・・・?」



「そんなのでいいの?」



「うん、それが欲しい。」



同じ屋敷に住んでいるし、直接話したいことばかりで。
でも・・・好きな人の連絡先は欲しかった。



お互いにスマホを出して交換している男女を、私は羨ましく見ていたから。



そう思いながらスマホを右手に持ったら・・・
武蔵が、口頭で電話番号とメールアドレスを言った。



それに驚きつつ、でも武蔵らしくて面白くて、笑いながら自分のスマホに打ち込んでいく。



「私のも教えてあげようか?」



「俺は誕生日じゃないのにいいの?」



「私が武蔵に教えるっていうプレゼントでもあるの!」



そう答えると武蔵が心底嬉しそうに頷いた。
でも、頷くだけでスマホは出さない・・・。



「スマホ出さないの?」



「小町1人の電話番号とメールアドレスくらい覚えられるよ。」



「加賀の若き天才だもんね・・・。」



そう言ってから、私も口頭で武蔵に連絡先を1回だけ伝えた。
武蔵は心底嬉しそうな顔で頷き、その1回で記憶したのだと分かった。



「今日は隼人さんの所には行くの?」



「今日は誕生日だし、久しぶりに夜グッスリ眠るっていうプレゼントも自分にあげたいから行かない。」



「うん、その方がいいよ。」



「武蔵の夜食も準備出来ないからね?」



「はい・・・。」



そんな会話をして、会社に行く武蔵を見送った。
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