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「え・・・、ここって?
下着売り場・・・?」




百貨店の中の下着売場で、夏生が固まっている。




「ああ!シューの?」



「違うから。
俺は女の子の服も着るけど、こういうのはしないから!」
 



予想通りの反応に、俺はすぐに反論する。




「え?じゃあ、誰の?」




「夏生のに決まってるだろ!」




夏生に俺が着けると思われたことに悲しくなりながら、下着売り場に先に入っていく。




「シュー!下着、一応部屋にあるし、新しいの別にいらないって!!」




俺を追いながら、慌てた声で夏生が言ってくる。





「夏生!」




夏生を振り返った。





「可愛い女の子に、なるんでしょ?」





可愛い女の子になって、夏生の隣には“彼氏”が並ぶ。
俺は、その応援をするだけ。
男でも女でもないような、こんな俺が出来る唯一のこと。




夏生は少し固まった後、素直に頷いた。
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