上 下
167 / 206
6

6-29

しおりを挟む
二葉と手を繋ぎながら、スーパーまでの道を歩く。



「二葉、よかったな。
特別にケーキ食べていいって。
でも、俺と半分こだぞ?」



「二葉が全部食べる!」



「・・・それより、本当にこっちだよな?」



「こっち。あのサボテンがある家をあっちに曲がる。」



あの後、おじさんが驚くくらい早く帰って来た。
何度か挨拶はしたことがあるけど、いつも一瞬で。
そのおじさんが何度も俺にお礼を言って、二葉を抱き締めた後におばさんの所に。



おばさんは・・・物凄く安心して、嬉しそうな顔をしていた。



おじさんは心配しつつも、おばさんのことが大好きだという顔をしていて・・・。



そんなおじさんに言った。
今日は俺の家で二葉を預かると。
父ちゃんも珍しくいるし、母ちゃんもそんなに遅くない。
それに“いち”もいる。



そして、俺の母ちゃんに電話を掛けて聞いて欲しいと言った。
おじさんは少し考えた後、すぐに母ちゃんの高校に電話を掛けてくれた。



その間に、俺はおばさんの所へ。



「二葉預かるから、ゆっくり休めよ!」



「・・・仁ちゃん、あの・・・。」



おばさんが、揺れる瞳で俺を見上げる。
その顔で、俺は分かった。
さっきの二葉とのやり取りがおばさんに聞かれていたと。



「おばさん、俺はバカなんだよ。」



「・・・仁ちゃんは、バカじゃない。」



そう言って、おばさんは泣いた・・・。



「この歳になって、俺は電話も掛けられない。
そっちは、“いち”の担当だから。
2人一緒ならいいんだ、でも俺1人だとあんなにバカなんだ。
もう1人の俺でもある“いち”がいないと・・・。」



おばさんは泣きながら、ほっそい手を伸ばした・・・。
その手は、二葉の頭の上に。



「この子も、もう1人の仁ちゃんになれる。
きっと、なれるから・・・。
この子に備わったのは音楽じゃなかった。
お父さんの方みたいだから。」



泣きながら言った後、二葉の胸の間に手を添えた。



「二葉によく聞いて。
この子が仁ちゃんから離れると決めるその時まで、それまでは一緒に葉っぱを育てればいい。
一緒に育てればいいから。」
しおりを挟む

処理中です...