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その言葉には驚きすぎてトレーを落としそうになった。
慌てて両手で持ち直してから隣を歩くステル殿下を見上げる。



「花を・・・花を渡して求婚したんですか?」



「した。」



ステル殿下が即答し、更に怒りに満ち溢れている目で私のことを見下ろしてきた。



「ずっと勘違いをしていたから・・・。
俺のことを愛してくれているとずっと勘違いをしていから・・・。
全然違ったのに・・・。
全然違っていたのに・・・。」



怒りに満ち溢れながらもその目に涙を溜めているステル殿下。
怖いくらい真剣な目で私のことを見詰めてくる。



「次の人生では美しい花を持って求婚しに行く。
黒髪ではなく白に近い髪の色を持って。
カルティーヌと最初から最後まで共にいられる地位を持って。
必ず迎えに行く、必ず、必ず迎えに行くから・・・」



ステル殿下が右手をゆっくりと伸ばしてきて、私の胸の間に置いた。



「俺が迎えに行くまで、他の男の花は受け取らないで。」



そう言われ、私の口からは乾いた笑い声が出て来た。



「他にもいるかもしれませんよ?」



私の言葉にステル殿下は小さく首を傾げた。



「次の人生でステル殿下が迎えに来てくれるのを待っている女が、他にもいるかもしれませ・・・」



「そんな女はいない。」



私の言葉に被せるようにステル殿下が答え、私は小さく笑いながら歩き始めた。



「ステル殿下って悪い男だよね?
王宮にいる貴族の女や侍女でステル殿下に恋をしている女が沢山いたよ?
今思えばナンフリーク殿下の妃候補もいたと思う。
自分こそ女に勘違いさせることをしたり言ってるんじゃないの?」



「そんなことは絶対にしていない。
俺が好きになる可能性が全くないのにそんな勘違いをさせたら可哀想だろ。
だからカルティーヌにも必要最低限しか会わず、目もほとんど合わせなかったくらいで・・・。」



「結局私のことを好きになってるけどね。
私って王宮の男が大好きな姿をしているみたいだから。」



「俺はカルティーヌがどんな姿でも好きだ・・・。」



「うん、ありがとう。」



「信じてないだろ?」



「今の流れで信じる方が無理あるでしょ。」



そんな会話をしながらトレーを置き、ステル殿下の部屋へと向かった。



「後でもう1度性行為をするからな?」



「え、もう無理だよ!」



「インソルドの女は仮眠が出来れば充分だろ?」
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