【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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お父様は剣を構え、またグースと挟むように俺の間に立った。
お父様の身体の陰から男を見ると、男も足が1本失くなっている身体で剣を構えた。



「何処から来た?
何故“死の森”なんかにいる?」



足が1本失くなっている身体でもブレることなく立ち、血が流れ続ける足をそのままに剣を構えている。



「悪いモノには見えないが、こんな場所に子どもと赤子を連れているなんて相当な訳有りだな。
何かから逃げる為にここに来たのだろうが、ここは生き物が長時間過ごせるような場所ではない。」



お父様は男の言葉にゆっくりと剣を下ろし、男に背中を向けた。



「忠告は感謝する。
だが民がいる場所に長居する訳にはいかないのでこの場所を選んだ。」



「民、か・・・。」



男が小さく呟いた時・・・



「・・・っ」



俺は思わず強く第2皇子を抱き締めた。
男の隣に大人しくついていた魔獣がこっちに歩き始めたから。



その気配や俺の反応でお父様はまた振り向き、魔獣に向かって剣を構えた。



「ソレは何だ?
俺が知識として知っている魔獣とも違う。」



「知識しかなくてユンスを4体も殺ったのか!?」



男は驚きながらも大きく笑い、それから剣を下ろしてまた杖のようにした。



「3体だ。1体は俺の子が殺った。」



「その男の子が・・・?何歳だ?」



「5歳。」



「インソルドではくインラドルの方だが、5歳の頃にユンスを倒せた男が1人だったらいる。
今は7歳の年だ。」



「インソルドとインラドル・・・?」



お父様は少しだけ驚いた顔をしながら魔獣に剣を構えながら聞いた。



「お前、インソルドの者なのか?」



「そうだ。インソルドで“チチ”をしている。
1番強い男という意味だ。」



「そうか・・・なるほど。」



お父様は小さく呟いた後、剣を構えた右手ではなく左手を胸の方に持っていったのが後ろからでも分かった。



「俺は近衛騎士団の団長、ダンドリー・ヒールズだ。
・・・もうすぐその地位も消滅するだろうがな。」



「近衛騎士団の団長が何をやらかしてこんな場所に?」



「それよりもコイツは何だ?
やけに大人しいがグースのような魔獣か?」



お父様が構える剣の先でお腹を上にして寝転がっている魔獣に男が視線を移した。



「分からない。
こんな個体は初めて見たし記録されてもいない。
俺達を“死の森”に誘うように歩き始めたから俺が代表して調査に出た。
そんなことをしてきた魔獣は初めてだったから調査の必要があったが、リスクも大きいと覚悟をしていた。
そしたらユンスが6体も現れ、てっきり知能の高いようなコイツに誘導されたのかとも思ったが、ユンス達に威嚇もしていたからそれとも違うらしい。
とにかく、俺もそいつが何なのかは分からない。」



「そうか・・・。」



「それで、国王陛下を1番にお守りするはずのお前が何故こんな所に?」



その質問にお父様は答えないと思っていた。
答えられるはずがないと思っていた。



なのに・・・



「第2皇子を匿い、そして国王として必要な教育をするようにと、乳兄弟であるクラスト陛下から命を受けた。」



あまりにもアッサリと答えた。
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