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私にそう言い残して剣を抜き王座の間の立派な扉を開けたモルダン近衛騎士団長。
いや、扉を開けようとしたモルダン近衛騎士団長。
その扉を私は全力で押さえた。



そしたら・・・ステル殿下も全く同じ動きをしていた。



物凄く驚いた顔でステル殿下と私のことを見ているモルダン近衛騎士団に私は笑い掛ける。



「「クラスト陛下はまだ生きてる。
クレドがそう言っていた。」」



ステル殿下とまた声が重なった。



「でも・・・そうだとしても・・・あの状態からではとてもではないが、正気な判断は出来ない・・・。
またジルゴバートに良いように操られる・・・。
俺はクレド副団長からの言葉を、クラスト陛下が亡くなった後に亡骸とともに戻ってくると認識していた。
侍女長は生きて戻ると信じていたようだが、俺は違う。
クレド副団長がクラスト陛下の亡骸とともに戻り、カンザル教会の教皇が正式に次の国王を選ぶ、そう認識していた。」



それを聞き、私は優しく笑いながらモルダン騎士団長の微かに振るえている右手に手を添えた。
抜いた剣の柄を持っているその右手に。



「クレドはよくインソルドに顔を出しに来ていた。
そのクレドが話していた話では、“連れ”が質の悪い迷香薬を頻繁に嗅がせられていたと。」



「・・・迷香薬?あれは迷香薬のせいだったのか?」



「私はクラスト陛下と会ったことはないけど、話だけは聞いてる。
確かに頭に麻痺は残っていて今でも惑わされることがあるらしい。
質の悪い迷香薬を頻繁に嗅がされたことにより身体の機能も落ちて自力で生活することも困難だと。」



私の言葉にモルダン近衛騎士団長が鋭い目に涙を溜めた。



「それでも、クレドの“連れ”は生きている。
クレドとお世話係とともに各国を旅しながら生きている。
その“連れ”の“最後にやるべき仕事”の為、各国を回る手伝いをしているとクレドは言っていた。」



そう伝えながら、私はナイフを持っていない左手で胸の間をおさえた。



「この肌荒れみたいな聖女の刻印を見付けてくれてのもクレド。
クレドは言っていた。
私に“待っていろ”と言っていた。」



「待っていろと・・・?」



「“俺が王宮に行くまで待っていろ”と。
“急いで行くから良いモノとともに大人しく待っていろ”と。」



「・・・カルティーヌ、そんなことを言われたのに大人しく待っていなかったのか?」



ステル殿下が苦笑いをしながら指摘してきて、私も釣られるように苦笑いをした。



「大人しく待っている女に育てられてないし、クレドがそんな人間だったなんて知らなかった。」



「そうだな、俺も聞かせれてなかった。
カルティーヌが聖女として来た頃から見掛けなくなったが、よくこの王宮に来てたぞ?
門の管理どうなってるんだ?」



「クレド副団長が・・・?
そんな話は聞いたことがない・・・。」



モルダン近衛騎士団長が目が飛び出るほど驚いていて、それにはステル殿下と笑いながらモルダン近衛騎士団長の肩を2人で叩いた。



「まだ大人しく待つことにするぞ。
その命、俺が預かる。」
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