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ルルのそんな言葉には首を傾げた。
チチもルルも俺のことを見ることなく、お互いに真剣な目で見詰め合っている。



そして、先に口を開いたのはチチ。



「ソソ。」



俺の名前を呼び、鋭い視線で俺のことを見詰めてくる。
チチはよくこんな目で俺や村の人間達に教育や訓練や指揮を取る。
そんなチチの大きな大きな背中は村の人間達にとって絶対的な存在だった。



でも、俺にとってはそれだけではなくて。



いつか越えるべき存在でもあった。



そんなチチが俺を真っ直ぐと見詰めながら続けた。



「お前に調査を任せたい。」



この流れからそんな話になったのには少し驚きながら、「はい。」と返事をした。



「サンクリア王国の実情と内情を俺に報告してこい。」



「サンクリア王国の実情と内情を?」



てっきり“死の森”やアデルの砦のことかと思っていたら、国自体の話でそれには驚いた。



「王宮へ行き、そこで実情と内情を調査してこい。」



「王宮・・・?」



俺が聞くとチチは鋭い目で深く頷き、続けた。



「王宮で16歳まで生き抜き、その時までルルに求婚したいという想いがあれば、その時はルルを迎えにこい。」



「王宮で・・・16まで・・・。」



「王宮で文字も覚えて定期的に俺に報告書を上げてこい。
報告書はエリーに持たせて俺に届ける手段を取りたい。
俺からも何かがあればアデルの砦の人間にグースで届けさせるが、読んだらすぐに処分をするように。」



「国や王宮のことなどは第1騎士団では把握しないのが昔からの決まりですよね?
知ってしまうことによってサンクリア王国に生きる民を最前線で守ることが出来なくなることもあると。」



「そうだ、第1騎士団ではな。
だが俺は第1騎士団であって第1騎士団の人間ではないような奴だから。」



よく分からない話に首を少しだけ傾げると、チチが鋭く光る目で口を開いた。



「俺は近衛騎士団の団長だった人間。
王宮に戻ると嫁に約束し、陛下とはお前に国王に必要な教育をさせるようにと命令された。」



予想もしていなかったいくつもの言葉が飛び出し固まってしまう。



「そろそろ王宮に戻ってもいい頃だな、ソソ。
ルルの言う通り、10歳であれば良くないモノには見えないギリギリの年齢だろう。
それ以上になってくると男としての認識に変わっていくからな。
まだまだガキだと思われる年齢なはずだ、王宮や王都の人間からしてみると。」



チチの言葉が耳に入っているはずなのに頭には何も入っていかない。
呆然としながらチチを眺めていることしか出来ない。



「ここで俺が教えられる国王としての教育には限界がある。
王宮に戻ってサンクリア王国の実情と内情を調査し、そして最善を尽くしてこい。」



何かを言おうとはするけれど、口が開いたり閉じたりしているだけでこの口からは何も音が出てこない。



チチの声がやけに遠くから聞こえるような気がする。



やけに遠くから聞こえるような気がするのに、こんなにもハッキリと聞こえた。



ハッキリと聞こえてしまった。

























「この世界では王族の人間に黒髪が生まれると国を滅ぼすと、厄災が降りかかると言われている。
だからお前が生まれて数日経った頃、陛下からお前を匿うよう、そして国王に必要な教育をさせるよう命を受けた。
ソソ、お前には国王陛下の血が流れている。
お前はサンクリア王国の第2皇子だ。」
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