126 / 168
7
7-6
しおりを挟む
その日の夜
城壁の上で今日も素振りをしていく。
月の明かりが俺の大きな剣を煌めかせる。
俺はこんなに大きな剣も振るえるようになった。
そしてこの大きな剣で長い時間戦っても疲れることはないくらい強い男になった。
15歳だったルルよりも強い男になれた。
素振りをしながらルルのことを思い出そうとする。
今日も思い出そうとする。
いつもだったらすぐに思い出せる。
ルルとのどんな思い出もすぐに思い出せる。
すぐに思い出せるはずなのに・・・
今日は昼間に見たカルティーヌの姿しか思い出せなかった。
あまりにも強烈な光りで・・・。
ルルの光りがカルティーヌの光りで見えなくなってしまう・・・。
カルティーヌと会ってから、今日1日で何度もその現象が起きてしまっていて。
俺は素振りを止めて慌てて“死の森”を眺めた。
でも・・・
夜の黒が“死の森”の白い霧を殺していて・・・
“死の森”は見えなかった・・・。
ルルが見えなかった・・・。
ルル以外見えないはずなのに・・・。
俺はルル以外見えないはずなのに・・・。
苦しくなってくる胸を左手でおさえていると、来た。
急に来た。
それには自然と笑ってしまった。
「お前、今日はどうしたの?」
半獣姿のエリーが突然現れた。
俺の魔獣のはずなのにエリーは相変わらず俺の傍にはいない。
“死の森”でもなく、今はインソルドで過ごしているらしい。
そこに育てた女がいるからだと考えられる。
俺が心の中でエリーを呼べばすぐに現れるけれど、エリーからはいつも突然現れる。
たまに騎士団の訓練中に現れてしまったり、国で起きた事件を対応している時にも現れてしまったり。
今日は俺1人の時に現れたエリーの顔の汚れを、置いていた布で拭いていく。
そしたら、エリーが渡してきた。
チチからの報告書を渡してきた。
インソルドから聖女が来ることを報告してくれることもなかったチチ。
俺が聖女と結婚することを報告したのは5ヶ月以上も前のこと。
カルティーヌが1度インソルドに戻り、約2ヶ月後に改めて王宮に来た時も何の報告もなかった。
聖女とは別件の報告なのかと思い、エリーから受け取った報告書を開いた。
そしたら、書いてあった。
インソルドで教育してくれた内容とは全く違うことが書いてあった。
《好きな女を正室か側室にして子作りをすればいい。
カルティーヌはインソルドの女。
どんな場所でも強く生き抜ける。》
報告書とも言えない手紙のような紙を、俺は右手に持っている剣で細かすぎるくらい細かく空中で切り刻んだ。
切り刻まれた紙は月の明かりで照らされながら、風に乗って“死の森”があるであろう場所へと消えていく。
それを眺めながら、俺は言った。
「聖女なんて現れなければ良かったのに・・・。」
俺の小さな小さな声は、夜の黒に消えていった。
城壁の上で今日も素振りをしていく。
月の明かりが俺の大きな剣を煌めかせる。
俺はこんなに大きな剣も振るえるようになった。
そしてこの大きな剣で長い時間戦っても疲れることはないくらい強い男になった。
15歳だったルルよりも強い男になれた。
素振りをしながらルルのことを思い出そうとする。
今日も思い出そうとする。
いつもだったらすぐに思い出せる。
ルルとのどんな思い出もすぐに思い出せる。
すぐに思い出せるはずなのに・・・
今日は昼間に見たカルティーヌの姿しか思い出せなかった。
あまりにも強烈な光りで・・・。
ルルの光りがカルティーヌの光りで見えなくなってしまう・・・。
カルティーヌと会ってから、今日1日で何度もその現象が起きてしまっていて。
俺は素振りを止めて慌てて“死の森”を眺めた。
でも・・・
夜の黒が“死の森”の白い霧を殺していて・・・
“死の森”は見えなかった・・・。
ルルが見えなかった・・・。
ルル以外見えないはずなのに・・・。
俺はルル以外見えないはずなのに・・・。
苦しくなってくる胸を左手でおさえていると、来た。
急に来た。
それには自然と笑ってしまった。
「お前、今日はどうしたの?」
半獣姿のエリーが突然現れた。
俺の魔獣のはずなのにエリーは相変わらず俺の傍にはいない。
“死の森”でもなく、今はインソルドで過ごしているらしい。
そこに育てた女がいるからだと考えられる。
俺が心の中でエリーを呼べばすぐに現れるけれど、エリーからはいつも突然現れる。
たまに騎士団の訓練中に現れてしまったり、国で起きた事件を対応している時にも現れてしまったり。
今日は俺1人の時に現れたエリーの顔の汚れを、置いていた布で拭いていく。
そしたら、エリーが渡してきた。
チチからの報告書を渡してきた。
インソルドから聖女が来ることを報告してくれることもなかったチチ。
俺が聖女と結婚することを報告したのは5ヶ月以上も前のこと。
カルティーヌが1度インソルドに戻り、約2ヶ月後に改めて王宮に来た時も何の報告もなかった。
聖女とは別件の報告なのかと思い、エリーから受け取った報告書を開いた。
そしたら、書いてあった。
インソルドで教育してくれた内容とは全く違うことが書いてあった。
《好きな女を正室か側室にして子作りをすればいい。
カルティーヌはインソルドの女。
どんな場所でも強く生き抜ける。》
報告書とも言えない手紙のような紙を、俺は右手に持っている剣で細かすぎるくらい細かく空中で切り刻んだ。
切り刻まれた紙は月の明かりで照らされながら、風に乗って“死の森”があるであろう場所へと消えていく。
それを眺めながら、俺は言った。
「聖女なんて現れなければ良かったのに・・・。」
俺の小さな小さな声は、夜の黒に消えていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
109
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる