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「聖女・・・!?聖女だと・・・!?
ミランダ、お前・・・聖女なのか・・・!?」
ジルゴバートが真っ赤な目をもっと見開きミランダに叫んだ。
それにチチは大きく笑った。
「こいつのことを抱いてたんだろ?
胸の間の刻印に気付かなかったのか?」
「あの人、いつも侍女の姿のままの私を抱いていたから・・・。
それに・・・部屋が暗くない限りは気付かない・・・こんな花の刻印なんて気付かない・・・。」
ミランダがそう言って、チチの胸に顔を埋め、両手をチチの背中に回して叫んだ。
「その場に咲いていたヒヒンソウの花を抜いて求婚するとか、そんなことある!?
隣国との戦を終えて血塗れで帰って来たからって、今回は危なかったと思ったからって、ヒヒンソウの花とか酷いんだけど!!!」
「でも受け取っただろ。」
「受け取りますよ・・・!!
それは受け取りますけど・・・!!
たまたま切った指から血が出ていた手で、この胸の真ん中で受け取りましたけど!!
なんならその場でキスまでしちゃいましたけど!!」
叫びながら顔をチチの胸から離し、ソソのことを今度は怒り始めた。
「私の娘にもヒヒンソウの花を渡して求婚したっていうこと!?
やっぱり貴方が育てた男!!
信じられない!!!」
「いや・・・でもあの時、ヒヒンソウの花しかなくて・・・。」
ソソが小さな声で言い訳をすると、ミランダはまた何かを言おうと口を開いた。
でも、それよりも先にジルゴバートの叫び声が響く。
「聖女は王族と結婚しないといけないだろ・・・!!
何故俺と結婚しなかった!!!
何故そんな男と結婚した!!!
いつもいつもいつも、王族であるクラストのことも俺のこともバカにしていたそんな男と!!!」
「相変わらず煩い男だな、ルーヤス。」
「その名で俺のことを呼ぶな!!」
「俺くらいしか呼んでやらないんだから感謝しろよ。」
チチが物凄く楽しそうな顔でジルゴバートに笑い掛ける。
訓練をしている時のチチと同じ顔をして。
「それはバカにしたくもなるだろ。
ただの公爵家の人間の俺が、何で王族のお前達より王の器を持ってるんだよ。
もっと頑張れただろ、お前達。」
チチの言葉にはジルゴバートが固まり、マルチネス王妃が吹き続ける笛の音だけが王座の間に響く。
チチの言葉には私も驚いていると、最初に声を出したのはミランダだった。
「私だって王の器を持ってるもん。
何よ、自分が1番持っているからってバカにして。」
「バカにはしてないだろ。
でもお前達の王の器を見ていると、先代の国王が頭を抱えながら悩んでいる姿を思い出して笑えてくる。」
チチがそう言って、ジルゴバートのことを指差した。
「ちゃんと微かな光りはあったはずなのにな。
今はその光りもなくなった。
ロンタス王に憧れていたお前を想い、先代の陛下はお前に王位継承の権利を与えなかった。
ロンタス王も王位継承の権利がない国王だったからな。」
チチがミランダの身体から手を離し、弾き飛ばされていた剣を拾い上げゆっくりとジルゴバートの元に歩き剣を構えた。
「クラストを貶めるくらいの力をお前はちゃんと持てていたのに。
力の使い方を誤ったな、ジルゴバート。
お前のその力のせいで・・・俺達が最善の判断が出来なかったせいで、多くの民が死んでいった。」
「・・・まだまだ民はいる!!
俺の為に税を納める民が沢山いる!!
俺に税を納められない民は死んでいったって構わない!!
この王国の為にならないのであれば死んだ方が良い!!!」
「もっと早く気付くべきだったな、お前の心がそんなにも腐ってきていたことに。
ミランダが俺と結婚したことによって更にお前の心をダメにしたんだろう。
俺が責任を取る・・・。」
そう言って、チチが大きな剣を振り上げた。
その瞬間・・・
私は翔た。
聖女となり身体能力が向上した身体で翔た。
そして、ジルゴバートの前に。
右手に握り締めていたナイフでチチの剣を受けようとしたけれど、それは間に合いそうになかった。
でも、聖女になった私は死なない。
死ぬことはない。
だからこの身体でチチの剣を受けようとした。
受けようとしていた・・・。
なのに・・・
「ソソ・・・っ!!!」
ソソが私の身体を押し・・・
そして・・・
そして・・・
チチの大きな剣を、右手で持つその大きな剣で、受けた。
それを見て・・・
チチの全身全霊の剣を受けても傷1つ付くことはなかったソソを見て・・・
それを確認してから、私は口を開いた。
「「このまま次の人生には行かせない。」」
この口から出てきた言葉はソソの言葉と重なった。
ソソの大きく大きくなった背中を見詰めていたら、気付いた。
これまで特に気にしたことはなかったけど、気付いた。
ソソはこんなにも輝いていた。
月明かりの光りで照らされていたからでもなく、太陽の光りで光っていたわけでもなく、ソソはこんなにも眩しいくらいに光っていた。
思わず目を閉じてしまうくらいに眩しく・・・
天井窓から見える太陽の光りよりも強く・・・
強く、強く、強く、どこまでも強く・・・
光り輝いていた・・・。
漆黒の髪も輝く程に・・・。
「“ヒヒンソウ”・・・。」
血塗れではないその姿でも、私の口からはその名前が出てきた。
どんな場所でも咲く強い花、“ヒヒンソウ”の名前が。
ミランダ、お前・・・聖女なのか・・・!?」
ジルゴバートが真っ赤な目をもっと見開きミランダに叫んだ。
それにチチは大きく笑った。
「こいつのことを抱いてたんだろ?
胸の間の刻印に気付かなかったのか?」
「あの人、いつも侍女の姿のままの私を抱いていたから・・・。
それに・・・部屋が暗くない限りは気付かない・・・こんな花の刻印なんて気付かない・・・。」
ミランダがそう言って、チチの胸に顔を埋め、両手をチチの背中に回して叫んだ。
「その場に咲いていたヒヒンソウの花を抜いて求婚するとか、そんなことある!?
隣国との戦を終えて血塗れで帰って来たからって、今回は危なかったと思ったからって、ヒヒンソウの花とか酷いんだけど!!!」
「でも受け取っただろ。」
「受け取りますよ・・・!!
それは受け取りますけど・・・!!
たまたま切った指から血が出ていた手で、この胸の真ん中で受け取りましたけど!!
なんならその場でキスまでしちゃいましたけど!!」
叫びながら顔をチチの胸から離し、ソソのことを今度は怒り始めた。
「私の娘にもヒヒンソウの花を渡して求婚したっていうこと!?
やっぱり貴方が育てた男!!
信じられない!!!」
「いや・・・でもあの時、ヒヒンソウの花しかなくて・・・。」
ソソが小さな声で言い訳をすると、ミランダはまた何かを言おうと口を開いた。
でも、それよりも先にジルゴバートの叫び声が響く。
「聖女は王族と結婚しないといけないだろ・・・!!
何故俺と結婚しなかった!!!
何故そんな男と結婚した!!!
いつもいつもいつも、王族であるクラストのことも俺のこともバカにしていたそんな男と!!!」
「相変わらず煩い男だな、ルーヤス。」
「その名で俺のことを呼ぶな!!」
「俺くらいしか呼んでやらないんだから感謝しろよ。」
チチが物凄く楽しそうな顔でジルゴバートに笑い掛ける。
訓練をしている時のチチと同じ顔をして。
「それはバカにしたくもなるだろ。
ただの公爵家の人間の俺が、何で王族のお前達より王の器を持ってるんだよ。
もっと頑張れただろ、お前達。」
チチの言葉にはジルゴバートが固まり、マルチネス王妃が吹き続ける笛の音だけが王座の間に響く。
チチの言葉には私も驚いていると、最初に声を出したのはミランダだった。
「私だって王の器を持ってるもん。
何よ、自分が1番持っているからってバカにして。」
「バカにはしてないだろ。
でもお前達の王の器を見ていると、先代の国王が頭を抱えながら悩んでいる姿を思い出して笑えてくる。」
チチがそう言って、ジルゴバートのことを指差した。
「ちゃんと微かな光りはあったはずなのにな。
今はその光りもなくなった。
ロンタス王に憧れていたお前を想い、先代の陛下はお前に王位継承の権利を与えなかった。
ロンタス王も王位継承の権利がない国王だったからな。」
チチがミランダの身体から手を離し、弾き飛ばされていた剣を拾い上げゆっくりとジルゴバートの元に歩き剣を構えた。
「クラストを貶めるくらいの力をお前はちゃんと持てていたのに。
力の使い方を誤ったな、ジルゴバート。
お前のその力のせいで・・・俺達が最善の判断が出来なかったせいで、多くの民が死んでいった。」
「・・・まだまだ民はいる!!
俺の為に税を納める民が沢山いる!!
俺に税を納められない民は死んでいったって構わない!!
この王国の為にならないのであれば死んだ方が良い!!!」
「もっと早く気付くべきだったな、お前の心がそんなにも腐ってきていたことに。
ミランダが俺と結婚したことによって更にお前の心をダメにしたんだろう。
俺が責任を取る・・・。」
そう言って、チチが大きな剣を振り上げた。
その瞬間・・・
私は翔た。
聖女となり身体能力が向上した身体で翔た。
そして、ジルゴバートの前に。
右手に握り締めていたナイフでチチの剣を受けようとしたけれど、それは間に合いそうになかった。
でも、聖女になった私は死なない。
死ぬことはない。
だからこの身体でチチの剣を受けようとした。
受けようとしていた・・・。
なのに・・・
「ソソ・・・っ!!!」
ソソが私の身体を押し・・・
そして・・・
そして・・・
チチの大きな剣を、右手で持つその大きな剣で、受けた。
それを見て・・・
チチの全身全霊の剣を受けても傷1つ付くことはなかったソソを見て・・・
それを確認してから、私は口を開いた。
「「このまま次の人生には行かせない。」」
この口から出てきた言葉はソソの言葉と重なった。
ソソの大きく大きくなった背中を見詰めていたら、気付いた。
これまで特に気にしたことはなかったけど、気付いた。
ソソはこんなにも輝いていた。
月明かりの光りで照らされていたからでもなく、太陽の光りで光っていたわけでもなく、ソソはこんなにも眩しいくらいに光っていた。
思わず目を閉じてしまうくらいに眩しく・・・
天井窓から見える太陽の光りよりも強く・・・
強く、強く、強く、どこまでも強く・・・
光り輝いていた・・・。
漆黒の髪も輝く程に・・・。
「“ヒヒンソウ”・・・。」
血塗れではないその姿でも、私の口からはその名前が出てきた。
どんな場所でも咲く強い花、“ヒヒンソウ”の名前が。
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