【完】死神にウェディングドレスを

Bu-cha

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それから月日は流れ、大学1年、春・・・。



豊から勉強を教えて貰い、俺も豊と同じ国立の大学に進学をした。
豊は理系の学部に、俺は経営学部というのに進学をした。
社長に言われたから・・・。
“光一にいつかきっと必要になる知識だから”と・・・。



妙子の家や社長の会社にフラッと行き、俺はなんとか息が吸える生活をしていた。



平日の朝、今日もベッドの上で“その時”が来るのを待つ・・・。



天井を見詰め、“その時”が来るのを今日もひたすら待つ・・・。



そしたら、来た・・・。



聞こえた・・・。



母ちゃんが廊下を歩く音が・・・。



そして、俺の部屋の前で止まる音が・・・。



そして、数分間・・・何の音も聞こえない・・・。



俺は天井を見詰めながら、“その時”を待ち続ける・・・。



しばらく待ち続けていたら、小さな小さなノックの音が聞こえた。
真理姉よりも豊よりも小さな小さなノックの音が。



「光一、おはよう・・・。」



扉も開けることなく、母ちゃんが今日も小さな声でそう言ってくる。



「お母さん、会社に行ってくるね・・・。」



何も返事をしないのに、母ちゃんが続ける・・・。



「光一も大学・・・今日はバイトもあるのかな・・・。
頑張ってね・・・。」



いつもの言葉を言った後、しばらく無言になる。



そして・・・



「行ってきます・・・。」



そう言ってから、母ちゃんは玄関を出ていった・・・。



社宅の廊下を歩く母ちゃんの足音を聞く。
身体のラインが見えない1サイズ大きなパンツスーツを着て、オバサンに見えるような髪型とメイクをしたダサい格好をした母ちゃんの姿を思い浮かべながら、その足音を聞く。



遠くなっていく足音を、聞く。



その足音が聞こえなくなってから、俺はやっと口を開いた。



口を、開いた・・・。



「早く・・・ヨボヨボのババアになれよ・・・。」



会いたかった・・・。



俺は、“桃子”に会いたかった・・・。



泣き虫でも弱くてもなんだっていいから・・・。



俺は“桃子”に会いたかった・・・。



俺“も”、“桃子”に会いたかった・・・。



死ぬ時に、会える・・・。



“桃子”がヨボヨボのババアになって死ぬ時、その時は俺“も”会える・・・。



やっぱり、1秒でも長く生きなければ・・・。



やっぱり、“桃子”よりも1秒でも長く生きなければ・・・。



そう今日も思いながら、朝だからか何なのか・・・



今日も一生行き場のない自分の下半身に悪態をつく。



「俺が起きる上がる前に起きてるんじゃねーよ・・・。」




.
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