【完】死神にウェディングドレスを

Bu-cha

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「本命の桃子ちゃん、1回しか来なかったね~。
私も見たかったな~。」



絹枝ちゃんにはすっかり見えなくなったババアが、荷物を持つ俺の所に来てニヤニヤと笑っている。
病室のオッサン達は俺より少し前に退院していき、新しく入ったオッサン達に手を振られながら俺は病室を出た。



「うるっせーなー。
オッサン達も最後まで“桃子ちゃん桃子ちゃん”言いやがって。」



「本命の桃子ちゃんがちゃんといるのに、他に2人も可愛い子ちゃんをたぶらかしてる悪い男だからね、あんた。」



「だ~か~ら~!!!
姉貴と妹なんだって!!!」



「・・・そういうことにしておいてあげるよ、まったく。
で、桃子ちゃんは何なのさ?」 



「・・・“桃子”は、“桃子”だろ。」



真理姉と理子のことは姉貴と妹と何度も説明した。
でも・・・“桃子”のことは“桃子”と言った。



カーテンを閉めることも忘れ、抱き合う俺と“桃子”を凝視し続けたオッサン達。
“桃子”がそのオッサン達に何やら高級そうな和菓子を渡し、「光一がいつもお世話になっております」と言った。



“母”とも、“息子”とも、“桃子”は言わなかった・・・。



だから、俺も“桃子”とだけ説明をした。



“桃子”が来たのはあの1回だけだった。



会えた・・・。



“桃子”に、会えた・・・。



渡とのデートのついでに1度だけ寄ってくれたのだろうけど、それでも嬉かった・・・。



それでも、俺は嬉しかった・・・。



「死ななくて、よかった・・・。」



抱き合った・・・。



俺は、“桃子”と抱き合えた・・・。



俺“も”、桃子と抱き合えた・・・。 



これ以上はない・・・。



もう、あれ以上は、ない・・・。



でも・・・



それでも・・・



幸せだった・・・。



俺は、きっと、ちゃんと、幸せだった・・・。



「生き延びた人生、大切にしな。」



俺が呟いた言葉に、ババアがそう返してきた。



「もう、大切にした。」



そう言いながら、俺は右手で胸をおさえた。



“母ちゃん”が、くれたんだと思う。



きっと、くれたんだと思う。



だから戦える・・・。



忘れないから・・・。



俺は一生、忘れないから・・・。



あの時、“桃子”と抱き合った瞬間を忘れないから・・・。



そして、最後に・・・



“桃子”がヨボヨボのババアになって死ぬその時に・・・



一緒に酒を呑んで・・・



最後に・・・



最後に・・・



そこまで考えて、小さく笑った・・・。



「・・・あんた、死ぬんじゃないよ?
なんか危うい感じがある男だからね。」



エレベーターの前まで見送りに来てくれたババアが俺にそう言ってきた。



「死んでも何度でも起き上がってやるよ。」



俺はそう言ってから、開いたエレベーターに乗った。



最後に見たババアは・・・確かにアイドルみたいな感じにも見えた。
それくらい、可愛いババアに見えたから。



でも・・・



「じゃあな、ババア!!!」



それでもババアと言った俺に、ババアは大笑いした。



「もう二度と来るんじゃないよ!!!」





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